25:繋ぎ止めれない彼女


「んもー!花子ちゃんはどうして逆巻さん逆巻さん逆巻さん!ああもう!俺が!彼氏です!」


「………それを俺に言われてもな」



悲し過ぎる俺の自己主張に呆れて溜息をつくルキ君。
そう、今俺は一方的にルキ君に花子ちゃん関連の愚痴を言いまくっている。


「大体花子ちゃん頭おかしくない!?逆巻天使シリーズ最高やっぱりこの世の男は受に限る!次の新刊はルキシュウかな?ってさぁ!」


「…そんな頭のおかしな奴に惚れたお前が悪いだろう…って、オイ、今何と言った。」


俺の言葉にグシャリと新聞を握りしめてわなわなと睨んでくるルキ君はすごく怖い。
はぁ、自分が同人誌のネタにされるのとか今更じゃん。ていうかその原稿を手伝ってる俺の方がよっぽど可哀想。

「どうにかして花子ちゃんを俺に繋ぎとめたいよー」


「なら実際に首輪でも付けて監視すればいいだろうそしてその原稿を今すぐ捨てろ」


「…それだ!」


ルキ君の提案に俺は希望の光を見出して
勢いよくその場で立ち上がる。


「花子ちゃんを可愛い首輪で縛り付けてお仕置きと称してレッツ調教!流石参謀系ドSは考えることが違う!」


「おい、コウ…死にたいのなら今すぐかなえてやるが?」


もう俺にはルキ君の恐ろしい言葉なんか入ってなくて
そのまま勢いよく家を飛び出してショップへ直行した。
ふふふ…見てろよ花子ちゃん!これで!君は!俺の!




「いやぁマジあのお方パネェっす。今度アレだ、カールハインツ様総攻本出そう。」


…ちょっとちょっとちょっと!
何物騒な事言いだしてんのこの子!
素早くショップから帰ってきて彼女の帰りを待っていたら帰宅した瞬間この一声だ。

全く…そんなのだしたらあのお方にホントに殺されちゃうんだからね!?
ていうか…アレ?何であのお方の所に行ってたんだろ。


そんな疑問を抱いてじっと彼女を見つめると視線に気付いたのか
花子ちゃんはニッコリ微笑んだ。


「ちょっと進路相談してきたんだよねー。やっぱ人生経験豊富な方は違うわ」


「進路相談?」


あれ、花子ちゃんは俺より年下だからまだ進路とか別に…アレ?
なんだか混乱してしまった俺を見ながら彼女は首を傾げた。


「ていうか私の部屋で待ってるって事は私に何か用があったんじゃないの?」


「…ハッ!そ、そうだった!」


「遂に自分が総受だと言う事を認める勇気が!?よ、よかった…これでお姉さん安心して死ねるよ!」


「ち、ちがうやい!」


訳のわからない誤解をされてしまい、相変わらず大きな声で喚き散らしながら本日のメインを勢いよく彼女の首にかける。
カシャンと冷たい金属音がして俺は悪い顔で笑う。


「コウ君?」


「ふっふっふ…いつもいつも逆巻さんってうるさすぎる花子ちゃんもここまでだよ…俺がじっくりきっちり躾けてあげるからね…」


耳元で囁けば彼女から漏れる長い溜息と…




みぞおちへの強すぎる衝撃。




「いいいいいったぁぁぁ!?か、彼氏のみぞおちを蹴り上げるって何事だよ!」


「彼女に首輪付けちゃう馬鹿よりましだと思うけど?全く、こんなの同人誌の中だけにしてよね!」



ブチッ!と酷い音を立てて可愛らしい首輪は花子ちゃんの手によって引きちぎられてしまい
そしてどうしてか彼女は何処からか新しい首輪と手錠と鎖を取りだした。
もう、もはや嫌な予感しかしないのは通常運転である。


「それに今時彼女が彼氏に調教とか王道だから。どうせやるなら彼氏が彼女に緊縛調教…でしょう?」


「や、あああああのあのあの、き、緊縛…余計じゃないですかね?花子サン…」


無理無理無理ホント無理ですから。
何…花子×コウってか?いやいやいやいやそんなマイナー過ぎるジャンル誰が好きなんだよせめてコウ×花子にしてください神様!



ガタガタと震えながら必死に居ないはずの神様に懇願するけれどやっぱりそれはかなう事はなくて、いつも以上に真っ黒な微笑みの花子ちゃんにもはや涙目だ。


「ああ、折角だから今度のルキシュウの構図のモデルになってもらおうかな…勿論言わずとしれたR-18なんだけれど…だいすきな彼氏のコウ君には…そうだなぁ、もったいないけれど大天使様役でひたすら喘いでもらおう」


「も、勿体無いとか酷くない!?そしてシュウ君役って事は俺受のポーズ!?嘘!嘘だよね!?」


「うるせぇ!私を調教とか1億と2000年位早いわ!あいしてる!」


「ああもう意味わかんない!」


そんな訳の分からない大絶叫の後、俺がどうなってしまったとか…
思いだしたら死にたくなるから絶対…絶対思いださない。



「うっうっうっ…酷い…酷いよ花子ちゃんの馬鹿ー!」


「もうこれに懲りたら訳の分かんない事考えないでよねー」



めそめそ泣きながら先程まで鬼の所業を働いていた彼女をベッドの中で抱き締める。
くそう、あれだけ酷い事されたのに花子ちゃんが腕の中にいるってだけで安心する。
そんな事を考えてれば俺の腕の中でもぞもぞ動き出して、そのまま唇にキスをしてきた。


「花子ちゃん?」


「さいごにおやすみのちゅー。」


ああもう、やっぱり俺はその笑顔が大好きだなぁ。


結局彼女の逆巻家好きを更生させることはあっさりと夢になってしまったけれど
まぁ…もうそれはそれでいいかな。
こんなにも大好きな笑顔を近くで見せてくれるならそれでさ…


俺はそんな力のない彼女の笑顔に苦笑してそのまま目を閉じた。
彼女の言葉の意味を理解しないまま、花子ちゃんの温もりを確認しながら夢の世界へ旅立った。





「ん?…、んー?」


いつもの夜、俺はいつも通り目を醒ました。
そしてふとベッドの違和感を感じる。


「アレ、何であったかいんだろ?」


体温の無いはずの俺のベッドが暖かい。
微かに俺以外の香りもする…んん?



確か俺はいつも通り一人で眠ったはずなのに。



ズキリ



何故か胸の奥が引き裂かれた感覚が、した。



戻る


ALICE+