12:究極のコス衣装


「つ、遂に来てしまった…!」


「いよいよ一世一代のコスプレ衣装を選ぶ時がやって来たねコウ君!!」



「ちがう!!!」



ブルブルとすごく緊張しながらお店の前に花子ちゃんと立っていれば
訳わかんない言葉を紡がれたのでその場で盛大に地団駄を踏んでしまう。
もうもう!確かにある意味コスプレ衣装かもしんないけど!!!しんないけど!!!!



「ちーがーうーでーしょぉぉ!?今日は花子ちゃんの…その、ウエディングドレスを選びに来たんでしょうが!!」



「や、だからコスプレ衣装じゃん。女の子が一番喜ぶ衣装ナンバーワンでしょ?」



「ああもうわかった!!分かりました!!コスプレ衣装でいいよもうもう!!ここで言い合ってても埒あかないし!!いこっ!?」



ぐいぐいと花子ちゃんの手を引っ張って勢い任せにこじゃれた扉を開ける。
するとそこには沢山の綺麗で煌びやかなドレスたちが所狭しと並んでた。
俺も芸能界で色々衣装部屋とか沢山見てるけどやっぱり…うん、こういうブライダル専門店はなんか雰囲気違うや。



店の人の出迎えを素直に受けてそのまま花子ちゃんはドレス達の群れへと進んでいったから
俺も慌てて彼女の後ろへとついて行く。
ううう…緊張しすぎて一歩で遅れてしまった!!



「ねぇねぇコウ君、いろんな色のドレスがあるよ。どれがイイかなぁ…」



「うううん、わか…わかんない…どうしよ。普段のドレスなら俺がパーッと決めちゃえるけれどこういうのは慎重に選びたいよね…」



「因みに逆巻家は代々黒だよ?コウ、花子。」



「うーん、そうですよねぇ…でも俺無神だし…」




………




いやいやいや。




花子ちゃんがじっと沢山のドレスを見つめてる隣で俺も一生懸命彼女にぴったりのドレスを選んでて
そして何でかわかんないけどそんな俺の隣にぴったりくっついちゃってる王様が1人。




「えっと…ど、どうしてカールハインツ様がこちらに?」



「だって花子の結婚式だもの。私だってドレス選びに協力したいよ。」



…くそう。
普通の一般人や吸血鬼だったら「なぁぁぁんでお前がいるんだよ!!!」とか大きな声で叫び散らせるけれど
相手は王様だからこう…ツッコむにツッコめない。悔しい。
ていうかその前に政治とか執務とかその他諸々ほッぽりだしてきちゃったんですかカールハインツ様…



ブルブルとお茶目すぎる王様の行動に体を震わせてれば
カールハインツ様はそんな俺を見て少しばかり無邪気に微笑まれた。



「まぁそれは冗談だよ。二人の結婚式の準備に無粋なマネはしないさ。ただやはり花子は私の友人だから見守る事だけはさせて欲しいな。」



「カールハインツ様…」



ぽんぽんと俺の頭を撫でてお店のオシャレな椅子に腰かけた王様にじわりと胸があったかくなった。
なんだろ…カールハインツ様が花子ちゃんのお父さんみたいに感じる。




「コウ君、コウ君!」



「え…っ、あ、なに?花子ちゃん!」




ニコニコと、とても嬉しそうに微笑んでるカールハインツ様に見惚れてたら
花子ちゃんの声がお店の奥の方でして、俺も慌ててそちらへと向かった。
辿り着けば彼女が見つめているのは二つのドレスだった。



「それ、気にいったの?」



「うーん、でもどっちかって、決められないんだよねぇ…」




いつになく真剣に悩んでる彼女の前には純白のドレスと淡い桜色のドレス。
え、何で悩んでるの?
女の子の憧れとしては純白じゃないの?
そんな疑問を胸にじっと彼女の表情を覗き込めば本当に…ほんっとーに悩んでますと言った表情。
嗚呼、花子ちゃんも俺との結婚式、真面目に考えてくれてるんだなぁ…



「うー…ん、純白は憧れなんだけど…でも、こっち…ホラ、コウ君色に染まったみたいで素敵でしょ?だからちょっと選べなくて…んんん」



「…………待ってまって、ホントまって。俺この場で泣いちゃいそうだからホント待って。」



真剣な表情のままそんな最終兵器並の殺し文句を言われて
俺はその場でへなへなと座り込んでじわっと既に浮かんでる涙を必死で拭う。
や、やめてよそういうの…嬉し過ぎてもうなんか、うん。
言葉に表せないからホントやめて。



「きーめたっ!!こっちだ!!!」



「花子ちゃん…」



暫く一生懸命悩んだ後彼女が出した結論は淡い桜色。
それは身も心も俺色に染まりましたよっていう彼女なりのアピールなのだろうか。
固まってる俺をよそに花子ちゃんは店員さんを呼び出してそそくさと試着を始めてしまう。




「ふむ。やはり花子はあの色を選んだか…」



「カールハインツ様…見てたんですか?」




置いてきぼりを喰らった俺の隣にやって来た王様が満足気に微笑んだ。
そして俺の事が大好きな花子ちゃんなら少しでも俺の色が入ったものを選ぶだろうと思ってたって付け足して…



「カールハインツ様…どうしよう…俺、花子ちゃんがあのドレス着て出てきたら普通でいれる自信ないです…」



「おや、それは花子の言葉を借りるとすれば萌えすぎて爆発しちゃうというモノかな?」



「そうかもしれません…」




クスクスと笑われてそんな台詞。
でもきっと今の俺はそんな感じ。
ドキドキドキドキ。
存在しない心臓がとても煩い。



じっと彼女と俺を隔てているカーテンを見つめていれば
不意に軽い音と共にそれが開かれて、俺は一瞬息をするのを忘れてしまう。



「う…わぁ…」



「どうよ、コウ君の最愛は世界一綺麗でしょ?」



「だ、だからその自意識過剰ドヤ顔やめろっつってんでしょもう…ホント、花子ちゃんてばどこまでも花子ちゃんだよね。」




無言だった彼女はとても可愛くて綺麗だったのに
口を開けた瞬間通常運転過ぎて思わず吹き出してしまった。
くそう…ホント花子ちゃんって相変わらずすぎる。




「ん、似合ってるよ。ちょー綺麗。俺の最愛さんはサイコーだね。」



「ふへへ、ありがとう。コウ君。」




俺の言葉にちょっぴり恥ずかしそうにはにかんだ花子ちゃんはもうホント可愛くて
このままぎゅって抱き締めたかったけれど、そんな事したらドレスぐちゃぐちゃになっちゃうし
何だか彼女のお父さんみたいなカールハインツ様にげんこつされそうだったからグッと我慢した。



「さぁて!今度は俺のタキシードだね!!アイドルらしく花子ちゃんに負けないような格好良い奴選ぼうっと!!」



「…まぁコウ君が何を着ても全裸の逆巻さんには負けると思うけどね。」



「まさかの全裸に負ける俺!!チクショウ!!ぜぇぇったい格好いいの選ぶもん!!!」



彼女の馬鹿にしまくった上から目線にビキリと青筋を立てて
煽り耐性ゼロな俺はそのまま必死に色んなタキシードを選びまくる。
くそう!絶対!!ぜーったい花子ちゃんが「やだコウ君イケメンすぎて眩しい…恋しそう…てかしてたぁ…」とか言っちゃうくらいの選ぶんだ!!!



「取りあえず全裸の野郎に負けない位には着飾りたい!!!」



そんな俺の心からの叫びが何故か店員全員の腹筋を崩壊させてしまい
俺、店員、カールハインツ様総出で一番格好いいというか俺に似合うタキシードを選んだのはまた別の話。




……あれ、
こうやって皆で必死に探すのってどっちかって言うと花嫁の衣装じゃないの?




「だからコウ君はいつまで経っても果てしなく受けなんだよ。」



「煩いよ黙って勝手に俺の心を読まないで花子ちゃんの馬鹿。」



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