5:俺的告白!
「………」
「うぅ…」
「コウが私のメル友を中途半端に取るから今盛大に不機嫌です。」
「うわん!ごめんなさいカールハインツ様!!!」
急にカールハインツ様に呼び出されたと思うとすっごく…すっごく不機嫌な彼が出迎えてくれてそんな台詞である。
お、俺が!俺が一体何したって言うんですかカールハインツ様!でも怖いから取りあえず謝っとく!!
するとカールハインツ様は大きく溜息をつかれてその綺麗な指で俺の額を弾く。
「?カールハインツ様?」
「コウ…君が一番分かっているとは思うけれど、花子の時間は有限だよ?どうして最後の一歩を踏み出さないのかな?」
「う…っ!」
彼の仰っている事は分かってる。
花子ちゃんは普通の女の子だ。だから覚醒は出来ない。
彼女は人間としてその短すぎる人生に幕を閉じる予定だ。
だから…だから俺はいつか彼女を生きている間に名実ともに俺のものにしたいって思ってる。
それをカールハインツ様は見通されていたようで…
や、前プロポーズしようって思ったよ?
思ったんだけど花子ちゃんレイジ君のウエディングドレスの採寸行っちゃったからさ。
…あれ、この理由何か思い出したら泣けてきた。
「コウ、私から友人を奪うなら責任を持ってちゃんと最後まで奪いなさい。…私だって花子を溺愛しているのだから。」
「………はい。」
そうだよね。タイミングを掴めないとか言い訳で
結局俺は心のどこかで彼女にプロポーズすることに怯えているんだ。
花子ちゃんはなんだかんだで俺の為に色々動いてるって言うのに…
俺ってホント、臆病…
「………何へこんでんのコウ君。赤ちゃんできたの?シュウ様との子供なら認知するけど。」
「………俺は男の子だから赤ちゃん出来ませんシュウ君に抱かれた事はありません!!!」
「ないの!?」
「なんでそこで驚くんだよ!!!花子ちゃんは彼氏の俺がシュウ君に抱かれてたらショックでしょ!?あ、大歓喜か!!!くそう!腐女子め!!」
カールハインツ様の所から帰ってきて自分の不甲斐なさから沈んでいたら
通常運転過ぎる花子ちゃんと通常運転過ぎる会話を交わしていれば何でヘコんでいたのか忘れそうになった。
ちがうちがう!忘れちゃダメ!!言わなきゃ…俺の口から、花子ちゃんに。
「あ、あの!!!花子ちゃん!!!」
「ん?なぁに?コウ君。」
「えー…っと、うー…っと…んんー…っと」
じっと彼女に目を見られて思わずゆらゆらと瞳を揺らしながら必死に言葉を紡ごうとするけれど極度の緊張で言葉が出てこない。
ドラマとかの撮影なら余裕で愛の台詞なんてスラスラ言えるのになんでこんな肝心な時に…
俺ってホントに使えない吸血鬼だ。
「う…うぅ…花子ちゃん…」
「はー…もう、仕方ないなぁ…落ち着いてよコウ君。」
柄にもなく…ホントに柄にもなく顔を真っ赤にしてようやく彼女の名前を呼ぶことが出来たら
花子ちゃんは呆れたように笑って俺を抱き締めてポンポンと背中を優しくたたいてくれた。
「私は普通の人間だからね、コウ君が何が言いたいのかは分かんないけど出来る限りは待ってあげるから。」
「だ、だから…そういうイケメン発言ヤメロつってんでしょ…格好良いのは彼氏の俺の役目なの。」
「仕方ないよ、コウ君総受けだし。」
口ではそんな事言うけれど包み込んでくれる花子ちゃんの腕と優しさに甘えてしまっている俺は間違いなく彼女曰く総受けだ。
やだ。こういう時くらい格好良くいたいよ…
「花子ちゃん…あの、あのね…?えっと…」
「うん、落ち着いてコウ君。3恒河沙分位待ってあげるから落ち着いて。」
「ちょっとぉぉぉぉ!どんだけ待つ気だよ!!10の52乗分待つとか気長にも程があるでしょ!!ああもう!俺と結婚してください!!」
以前花子ちゃんにスパルタ教育されているから瞬時に彼女の馬鹿発言に突っ込みつつ
通常運転の勢いに任せて半ばヤケクソで放った俺のプロポーズに彼女はゲラゲラと笑いながら
抱き締めてくれてる腕にぎゅって力を込める。
うう…悔しいけどすっごく心地いいです。
「あはっ…あはははっ!コウ君格好良い!!勿論!合点承知!受けて立つぜ!!」
「もうもう!プロポーズの承諾も格好い!ていうか花子ちゃんの格好良い基準どこにあんのさ!でも受けてくれてありがとうございます!!」
嬉しくて恥ずかしくて幸せで…
俺も彼女をぎゅうぎゅう抱き締めて二人で涙が出るまで声をあげて笑った。
うん、格好つけたロマンティックなプロポーズも素敵なんだろうけれど
俺と花子ちゃんはこっちの方が断然幸せかもしれない。
格好悪すぎる俺のプロポーズを格好いいと受け入れてくれた花子ちゃんを
彼女の人生が終わるまで精一杯幸せにしようって心から思える俺は誰よりも幸せだと思う。
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