7:兄の笑顔


俺の弟が遂に腐女子と言う生き物にプロポーズをしてしまったらしい。
まぁあの二人は本当に一緒に居ているのを見ているとこちらも思わず吹き出す位楽しげだから
それは構わないのだが…



「俺はてっきり花子からプロポーズをするものだと思っていたがな。」



「前一回取り消されたんですよー。俺から言いたいのー!って駄々こねられて。」



コウらしいと言えばコウらしいかもしれない。
ずっと花子に格好良いと言われたがっていたから…
こういう事はキチンと自身の口から言いたかったのだろう。
まぁ、彼女の口から教えてもらったコウのプロポーズはお世辞にも格好良いとはいえるものではないが。



「しかし、花子としてはもっとムードのあるプロポーズが良かったのではないのか?」



「え?コウ君最高に格好良かったですけど?」



「は?」



彼女の言っている意味が分からず首を傾げれば花子はとても嬉しそうに…幸せそうに微笑んだ。
そう言う顔、もっとコウに見せてやればいいのに。



「だってあのアイドルがかっこつけないで自分の言葉って言うか気持ちのみを伝えてくれるって本当に格好いいと思うのです。…私は飾らないコウ君がなによりもだいすき。」



「………そうか。」




飾らないコウ…か。
確かにコウに寄ってくる家畜はほぼ100%と言っていいほどアイドルの…飾っている彼しか見ていない。
だから花子のような女がコウの最愛でよかったと心から思い
その小さな頭を優しく撫でてやる。



「ああ、でもやっぱり私からも言いたいなぁ…コウ君に愛のプロポーズ」



「そう言うものなのか?」



「っあー!ちょちょちょっとルキ君!俺の!!俺の花子ちゃんの頭なでなでとか何羨ましいことしてくれてんのさぁ!!俺も!俺も花子ちゃんをなでなでしたいいい!」



「うるせぇ黙れアイドル!!」




がすっと相変わらず花子のこぶしがコウの顔面に炸裂してしまう。
だ、だから先程の可愛らしい顔をだな…何故最愛であるコウに見せてやらないのだお前は。


すると花子はそのままコウの両腕を壁へと押さえつけて優しくニッコリと微笑んだ。
彼女のそんな顔に耐性のないコウはすぐにその顔をこれでもかと言う位赤くしてしまうのだが
正直本人には申し訳ないのだが花子のそう言う顔、お前意外には結構な確率で見られているぞ。



………もしかしたら花子は恥ずかしがり屋なのかもしれない。



「え、え?花子ちゃん…?」



「コウ君が素敵なプロポーズをしてくれたから私もって思って…コウ君、あのね?」



「う、うんっ!」



ドキドキと言った効果音が似合うコウに苦笑。
全く…もうマヒしてしまっているのかもしれないが愛しの彼女に壁に抑えつけられながらプロポーズ待ちだなんて
花子の言葉を借りるとすれば今お前は間違いなく受けというやつだぞコウ…


すると彼女は小さく息を吸ってコウの耳元で俺顔負けの甘い声を発して
なんともまぁ彼女らしいプロポーズの言葉を紡いだ。



「コウ君なら私…三次元でもいいよ…結婚、しよ?」



「…っ!…っ!花子ちゃ…なんて…なんて最高の殺し文句なんだ!!俺…俺!花子ちゃんの二次元に勝てたんだね…っうれ、嬉しいいいいいい!」



「ぶはっ!」



き、基準!!!基準がおかしいぞコウ!!!目を醒ませ!!!
そして気付け。お前、逆巻には勝ってないんだぞ?
それでも感激の余りボロボロと涙を流しながら花子に抱き付いてしまっている弟を見て
ひたすら笑いを堪えるがもう限界だ。
お前達、本当に…面白い。



「ふは…ふはは、ふはははっ」



「どうしようコウ君セクスィー★ルキさん腹筋崩壊してる。」



「こ、こんな爆笑するルキ君俺も初めてかも。」



ああもう喧しい。
仕方ないだろう…だってお前達を見ていると本当に悩みとか葛藤とかそう言うの、全て下らなく思えてきてしまうんだから。
笑いすぎて涙を流しながらもパチパチと拍手を兄として贈ってやれば二人とも嬉しそうに笑う。



「し、しあ…幸せにな…っに、二次元に浮気されるんじゃないぞ…コウ…ふはっ」




本当に、この二人なら是非とも幸せになってほしいと
心から願ってしまった深夜である。



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