1:可愛いおせっかいから始まる物語
「そう言えばもうすぐ花子ちゃんの誕
生日だね。」
「…そうだっけ。」
ユイちゃんが私の言葉にその可愛い顔でぷんぷん怒り出す。
「もー!どうしてそんなに自分に関心ないかなぁ!」
やだもうそんな仕草いちいち可愛い。
「ごめんねー神様女神様ユイさまぁー。」
「もう花子ちゃんたら!」
ぎゅうっと抱き付くとユイちゃんはくすぐったそうに笑って許してくれる。ああ、いい匂いだなぁ。これが私と同じ人種で同じ性別とか神様はなんて不公平に人間を作ってくれてるんだろ。
「ふふ、アヤト君達、花子ちゃんにどんな誕生日プレゼント送るんだろうね。」
「ん?」
「え?」
「ユイちゃん何言ってんの?私があの人達に誕生日とか教えてるわけないじゃない。」
「え!?嘘!?」
びっくりしたユイちゃんが大きな声をあげるから私もつられてびっくりしてしまった。どうした天使、そんな顔も可愛いぞ。
「え、だって花子ちゃん親衛隊のみんなが誕生日知らないとか…!」
「親衛隊って…私只の餌だからね。」
別に私はユイちゃんみたいな特別な血も持ってないし、特別な存在でもない。
そんな只の餌である私の誕生日を彼らに教えてどうするというのだろうか。
というか親衛隊っていったい何なんだ。
そんな事を心の中で突っ込みつつも、私は呆れたように溜息をついた。
「もー。何回も言ってるけど、特別なのはユイちゃんだけなんだからね。ユイちゃん以外はあの人達にとって人間は只の餌。それ以下でもそれ以上でもないの。」
「花子ちゃん…」
「あ、誤解しないでね。別に妬んでるわけじゃないから。」
ユイちゃんが少し悲しそうな顔をしていたので
宥めるようによしよしと頭を撫でてやる。心地よさそうに瞳を細めていた彼女は意を決したように立ち上がった。
「私、決めた!」
「ユイちゃん?」
「みんなに花子ちゃんの誕生日、知らせて来る!」
「オイコラ小森。」
私がとめるより先に彼女はすごい速さでその場を去ってしまった。
一体何のつもりだ。たまにおせっかいをする彼女も嫌いではないが。
「全く…ユイちゃんってば。」
まぁ彼らが私の誕生日を知ったところで何かが変わるわけではないのでどうでもいいことなのだが。私は走り去った彼女の背中を見届け。一つ溜息をついた。
そんな自分の誕生日数時間前。
戻る