3:キャンディひと粒
「ああんもう花子ちゃん、どこ行ってたのさー!」
「ライト君マジうざいです。殴りますよ?」
無神家から戻ってくるといきなり両手を広げて待ち構えていた変態に思いっきり抱き付かれた。
くっそさっきまでのほんわかトキメキ気分を返してくれ。
けれどいつもならここで「やだもう花子ちゃんこわーい」とか言いながら離れてくれるライト君が一向に抱き付いた腕を離してくれない。
「もー僕花子ちゃんが鬼畜だったなんて知らなかったなぁ。」
「え、な、何。」
「だぁって僕が花子ちゃんの事大好きでたまらないの知ってて誕生日教えてくれないとかさー。
…鬼畜以外の何物でもないでしょ?」
ホント、イケナイ子だよねぇ君。
少し低いトーンでそう呟いた彼の台詞に、今相当ご立腹だと言う事を理解した。
え、これは俗に言うアレですか、そんな悪い子にはお仕置きが必要だよね
とか言いながらめくるめくR-18の世界にご招待ってやつですか。
「あ…あわわわわ、ご、ごめんなさいライト君」
「手…出して。」
「ひぃぃぃぃ。」
なんだ、何するつもりだこの変態野郎。
アレか縛っちゃうぜ的なアレか。それともまさかぶった切るとかそんなスプタッラみたいな!?
ガタガタ震えながら今のこの状況でライト君に逆らえるはずもなく彼の言うとおりに両手を差し出すと…
コロン。
「…キャンディ?」
落ちてきたのは縄でも鉈でもなく、小さくて可愛いキャンディひと粒。
訳が分からなくてどういうことだとライト君を見上げるとそれはそれはもう可愛らしくぷくーっとふくれっ面をして拗ねている変態王子様。
「ビッチちゃんもビッチちゃんだよ!キミの誕生日だって教えてくれたのさっきだったし!
んもー!ホントなら完璧なデートとかしてさぁ!?
そんで最後はベッドであんまーい時間を…とか思ってたのに!」
結局用意できたのはこれだけさ。
しょんぼりしちゃったライト君には失礼だがあの気色悪い変態オーラが消えていてもうなんていうか…うん、可愛い。
「来年!」
「はい!?」
いきなり大きく叫んだライト君にびっくりして
こちらは素っ頓狂な声をあげて体を震わせた。
「来年、絶対リベンジするんだかね!覚悟しててよね!ふーんだ!!」
そんなちっともこわくない捨て台詞を履いて
プンすかしながらリビングから去って行ったライト君を見つめながら
私は呆然と呟いた。
「これが…ギャップ萌え。」
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