4:お祝いのキス
「ほう…?それはライトにしては珍しい行動ですね。」
「ですよねー。もうホントびっくりです…そろそろ足崩していいですか?」
「何故?」
「わぉ笑顔が黒いよおかーさーん。」
とても優雅な微笑みだけれど背後のどす黒さが隠しけれていませんレイジさん
あの、そろそろ足が限界です。
先程から数時間、私はレイジさんの目の前で正座されられている。レイジさん、すごくご機嫌ななめである。そんな彼はずっと私を見下しながら1人紅茶を楽しんでいる。え、何この状況。何プレイ?
「全く、逆巻家に居る女性陣は本当に頭の回転が悪い。ユイさんも、もう少し早く私に伝えていればいいものを…
いくら私の料理の腕が一流シェフ並だとしても材料が無ければ何も作れないではないですか…!貴女も貴女ですよ花子さん。よりにもよって一番に祝われたのはあの無神の方達だそうではないですか
先程ご長男から態々報告がありましたよ本当に嫌味な方々だ…!」
…ガチャン!
いつもなら大切な食器をそんな乱雑に扱いはしないのに相当苛立っているのであろう、彼はもう一度私を一睨みして小さくため息をついた。
「あ、あの…ごめんなさいレイジさ…」
怖くなって顔をあげると、そこにいたのはいつもの放漫な態度のレイジさんではなく
少し困ったような顔で眉を下げている彼だった。
「貴女はもう少し強欲になっても構わないのですよ?」
「や、わたしは只の…」
「黙りなさい。」
「餌ですから」そう、答えようとした唇はこともあろうかレイジさんのそれで塞がれて、微かに紅茶の味が確認できたのでその行為が何なのかすぐに確信が持てた。
「ふむ…」
「な…れ、はぁ!?」
そっと離された唇で、私はパニックになりながら言葉にならない単語を発してしまっていると
彼はニヤリと面白そうなオモチャを見つけた子供の様に意地悪く微笑んだ。
「そう言う愛らしい反応、嫌いではないですよ?」
「ちょー!もう、何…!キスとか!!れれれレイジさん紳士じゃなかったんですか!?」
「おや、ご存じな通り不本意ながら私はあの穀潰しと血が繋がっているのですよ?」
クスクスとおかしそうに、そして上品に微笑んでいる彼に真っ赤になって抗議しているとそっと耳元で囁かれて私の思考回路は大爆発したのだ。
“私だってケダモノに決まっているではありませんか”
「…やだもうこの仮面紳士。」
「ふふ、褒め言葉として頂いておきますよ。
嗚呼、そうそう。ソレ、私からの誕生日プレゼントと言う事で。」
ふにっと彼の長い人差し指が私の唇にあてがわれて
その小奇麗な顔を傾げるものだからもう私は何にも反応することが出来なかったのだ。
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