8:おめでとうの言葉だけ
「…何泣いてんだよ。」
「や、もうシュウさんのイケメン具合に感動いたしまして。」
「そうかよ…チッ…!」
「いたい、いたいですよスバル君」
ぐりぐりぐり。
先程帰ってきたらいきなり不機嫌なスバル君に頭を鷲掴みにされてそのまま彼の部屋まで強制連行されたのだ。
そして未だに感動の余韻に浸ってめそめそ泣いている私を乱暴に撫でているわけである。
「……俺は、」
「はい?」
「お前が何やったら喜ぶとか…そんなのわかんねぇから、何も用意してなくて…」
「悪ぃ…」小さくそう呟いた彼は心底残念そうな顔をしており
そんな優しいスバル君に私はきゅんっと乙女心を鷲掴みにされてしまった。
「や、気にしないでください。餌に気を遣うなんてスバル君らしくないですよ。」
「おま…っ!お前なぁ!いい加減その卑屈精神なおせよな!!」
バンっ!
バサバサ!
「………おや?」
大きくスバル君が地団駄を踏んだ拍子に何かが崩れ落ちる音がしたので何だろうと思い、音がした方向に顔を向けるとそこにはスバル君の部屋に似つかわしくないものが…
「…女性ファッション誌?」
「あ…っ!」
散らばったのは数々の可愛らしい表紙のファッション誌だった。
ん?アレ?スバル君にそう言う趣味があったのだろうか。私が疑問に思って固まっていると彼のばつの悪そうな、今にも消え入りそうな声が部屋に響く。
「お前が誕生日だって聞いて…俺は何がいいかわかんねぇからユイのヤツにソイツ借りて
女って何が喜ぶのか考えようと思ったんだけどよ…色々ありすぎて結局わかんなくなったっつーか…クソッ!」
顔を真っ赤にしてもごもごしゃべる彼を呆然と見つめる私。
え、この図体の大きいイケメンさんがこの可愛らしい雑誌を見て?ああでもないこうでもないってブツブツ言ってたって?
「…スバル君、ごめんなさい。」
「あぁ?んだよ…。」
「私は今、猛烈にスバル君が愛おしくて仕方ありませんトキメキマックスです。」
「な…っ!はぁ!?」
真っ赤だった顔を私の言葉で更に赤くし
慌てるスバル君はとっても可愛らしくて私は思わず声を出して笑ってしまった。
「と、とにかくだ!そう言うわけでプレゼントは用意できてねぇ!」
「はい…ふふっ」
「だからこれだけは言わせてもらう!」
しっかりと彼に握られた手。
驚いて彼を見ると、その紅い瞳はとっても優しくて私は思わず息を呑んだ。
「誕生日、おめでとうな。花子。」
その声はとても甘く脳内に響いて
今度は私の番だと言わんばかりに顔に熱が集まるのが分かった。
「顔、真っ赤じゃねぇか。ばーか。」
「やだもうスバル君格好いいです…」
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