12:輝いた瞳


「遊園地?」



「ええ、あの歳で遊園地すらまともに楽しむ事が出来なかったんですよ」




「………別になにも賑やかな所じゃなくていいんじゃねぇか?性格とかもあるしよ」




あれから数日、花子も弟達とは何とか普通に話す様になってきて少しばかり安堵と驚きの気持を抱いている。
安堵は勿論彼女が人外ではあるが徐々に他人を怖がらなくなってきた事…驚きは……勿論目の前の彼等だ。




「そうですよ…そんな醜い人間の集団に揉まれるよりもしかしたらスイーツ店でゆっくりお茶の方が楽しいのかもしれません」




「人間のビッチちゃんでもオマセさんは居るから遊園地よりホテルの方がいいんじゃないのぉ?んふっ♪」




「おいライト、俺様の子分で厭らしい妄想してんじゃねぇよ子分は子分らしく俺様とバスケしたいに決まってんだろ」




「つーか遊園地とか言って花子がこけて怪我でもしたらどうすんだ人間って脆いからすぐ壊れちまんじゃねぇのかよレイジ」




「……………。」





次々に各々が思う事を自分勝手に言葉にする自身の弟に思わず顔が引きつりそうなのを抑える。
まさか彼らが此処まで花子に友好的に接するだなんて思ってもみなかった…
そもそも父上から殺すなとは言い付けられていたが仲良くしろとは一言も言われていないのにだ。




まぁ、おかげで彼女も弟達とだけは普通に話せるまでになるまで時間はかからなかったが…





「別に私も彼女が本当に騒がしい場所を好まない性格なら無理に遊園地へなんて考えませんよ。私だってあの人間共の群れに入るのは不愉快です。」




わいわいと私が彼女を彼らとコミュニケーションを取らせるようになった理由として一番大きな動機を離せば先程からこのような状態だ。
大きく溜息を付いて自分のモノだけ用意していた紅茶をひとつ、口へ運び小さく溜息…




私だって馬鹿ではない…
花子が人間が怖くてではなく、本当に騒がしい所を好まないのであれば此処までしようとはしない…
だが…





「嬉しそうだったんです」





ぽつりと零れた私の言葉に先程まで騒いでいた弟達が一斉に静まり返った。
こんな事……今まであっただろうかと耳を疑う位その静寂は確かで
貴方達、今まで私がどれだけ話を聞きなさいと叫んでもこうやって静かにならなかったのに
花子が関わるとこうも違うのかと思わず口に出してしまいそうだったがそれはぐっと飲み込んで、
代わりに私が此処まで彼女を他人への免疫を付けさせようとしている理由をぽつり、続けて呟いた。






「私が気紛れに遊園地へ連れて行くと言った時…彼女はとても嬉しそうに目を輝かせた……本だけの知識だった遊園地、本当に楽しみだと…言わんばかりに」





あの彼女の目……とても嬉しそうで、知らない世界に想いを馳せているような…
遊園地なんて誰でも普通に行けるような場所なのに彼女はそれをとても楽しみにしていた。





「花子は奴隷でしたから……きっとそう言う場所に憧れを抱いているのでしょう…」





今までの彼女の世界は同族の人間に「飼われる」だけの日々
彼女自身の幸福なんてなくて当たり前で……それが彼女自身も普通だと思っていた。
知らないがゆえに何も望まない。不満もない。
それが彼女の狭い狭い世界の中で真理だったのだから…





けれど父上に拾われ、私が彼女の神となって
本の知識だけだが少しずつ世界が広がって「遊園地」と言う場所を知ってどれほどの憧れを抱いただろう…
それはあの時の目を見て痛感している…





「だから私は花子に遊園地を楽しんでもらいたい」





その言葉は自身のモノとは到底思えない程のもので
まさか嫌悪してやまない人間の為に此処まで思えるだなんて本当に私はどうかしてしまったのかとさえ思える。
けれど……





けれど、実の親でさえ見向きもしなかった私を「神様」と
心の底から見つめる彼女にこんな気持ちを抱いてやまないのだ





『……………』





「………?どうしたのです、アヤト、カナト、ライト、スバル」




ひとつ、息を吐いていつの間にか下を向いていた顔を仕切り直しと上げれば
目の前の弟達はとんでもなく悪い顔をして笑ってコチラを見ていた。





嗚呼、どうしてだろう…
とんでもなく嫌な予感しかしない……





今度こそ抑えきれずにひくりと表情を引きつらせ
遠くで私達を見つめていた蒼瞳には気付かずに





今度はいつもより長めの溜息を、ひとつ
はいてこめかみをぐっと抑えて嫌な予感よどうか外れてくれと心の底から祈った。




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