13:相応の笑顔
「パンがないならケーキを食べればいいじゃないってどっかのビッチちゃんは言ってたよ?んふっ♪」
「人間が怖ぇなら最初から人間界より魔界で遊べばいいんだっつーの!流石俺様!!!」
「人間界が怖いなら魔界で遊べばいいじゃない…ですね。ねぇ?テディ……?」
「まぁ俺達が付いてれば他のヴァンパイア共も花子に手出ししねぇだろうしよ」
…………まさかそんな発想で来るとは思いませんでした。
空は漆黒、目の前は遊園地の入り口
キラキラと照明が光ってとても賑やかだ。
そしてそんな照明と同じく目を輝かせている私の所有物がひとり
「貴方達……どういう発想をしたら彼女を魔界の遊園地へと言うものになるのです…」
あの弟達の悪い顔から事態が急展開するのにそう時間はかからなかった。
奴隷時代酷い仕打ちを受けていたであろう彼女は遊園地と言う場所に憧れは抱いていてもその人間が沢山いる場所は恐ろしくて足を踏み入れることが出来ない…
そう彼等に吐露すればだったら人間じゃなくてヴァンパイアが居る場所なら大丈夫だろうと単純すぎる提案を受け
断る隙も与えられない位あっという間にこうして魔界の遊園地へと連れてこられてしまったのだ
「そもそも花子は人間、吸血鬼関係なく他人が恐ろしいと…」
「だーいじょうぶだよレイジ、んふっ♪」
まぁ吸血鬼の餌である人間の花子をこうして軽率に魔界へと連れてきてしまう事も咎めなければいけないが
それは先程スバルが言っていたようにこの魔界を統べる王である父上の息子である我々が付いていれば他の吸血鬼達は近付いてこないだろうからそれは、まぁいい…
だがそれよりも問題なのは彼女は別に人間だけを恐れているわけではなく、他人を恐れているのだと言葉にしようとすれば
それは飄々とした口調の五男に遮られてしまう。
「いもーとちゃんは僕ら吸血鬼は怖がらないよ……だって彼女の神様と同じ種族だもん…ホラ」
「…………、」
彼の…ライトの言葉に思わず視線を花子へともう一度移せば
本当に……本当にわくわくとした表情で入り口を眺めていて、以前私と一緒に人間界の遊園地へと赴いたときとは全く正反対の反応をしていたので思わず小さく苦笑を漏らしてしまう
花子………貴女、人間共を餌にする我々吸血鬼を全面的に信用してどうするのですか。
しかしそうやって我々を全面的に信頼している理由が「私」だという事が酷くくすぐったくて悪い気はしない…
「はぁ……此処まで来てしまっては仕方ありませんね。花子……手を」
「!れ、レイジ……?」
「一応此処は魔界ですからね……貴女に何かあって死んでしまわれては父上に咎められてしまう……楽しむのも構いませんが我々から決して離れないように」
仕方ないと言った表情で彼女に手を差し出せば戸惑い気味にも私の指示通り差し出された小さな手を握って言いつけをひとつ
吸血鬼は貴女が思っているような輩ばかりではないのでね…
「大丈夫だっての!子分は親分がメンドー見てやらねぇとな!!」
「ええ……可愛いお洋服が似合う花子を傷付けたりしたらボコボコにしてやりますよ…スバルが」
「はぁ!?な、何で俺なんだよ…!ま、まぁ花子はすぐ壊れちまいそうだからな……そうなったら俺も、なんでもねぇ」
各々好き放題に言葉を紡ぎながらも賑やかに遊園地の門をくぐる…
やれやれ、ヴァンパイア王の息子である我々がこの年になって幼子を連れてぞろぞろと遊園地だなんて考えもしませんでした
けれど……
「レイジ!レイジ!夢の国!!夢の国だ…!すごいね……っ、本で見るよりもっと素敵!!」
初めて遊園地の中に足を踏み入れたこの所有物が此処まで嬉しそうにはしゃぐのなら…まぁ
「花子、折角来たのですから全力で楽しみなさい……私の命令ですよ」
「!うんっ!」
くいっと眼鏡を直しながらそう呟けば
漸く年相応に近い笑顔を見せた彼女に気付かれないように安堵の溜息を付く
彼女が……花子が此処まで喜ぶのなら
普段酷く不仲に定評がある我々兄弟もこうして一緒に遊園地と言うのも悪くないと、思う
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