14:ふたりきり
ええ、ええ、こうなる事くらい予想はついておりました。
ついておりましたとも
「レイジ?」
「いえ、少し自身の弟共の身勝手具合を改めて再確認したところです。」
にぎやかな遊園地の中、不安げな彼女に小さく息を吐いて
クイと眼鏡のブリッジを押し上げ再度溜息。
遊園地へ足を踏み入れたはいいものの、彼ら……弟達は一時間もしないうちにどこかへ消えてしまった。
「まぁこうして一人の人間の為に考えて動いただけでも奇跡なのです私はもうこれ以上彼等に期待などしませんよ」
「奇跡なの?」
「ええ、奇跡ですよ。我々吸血鬼が貴女方餌である人間の為に動くだなんてそもそもおかしいのですから…特に彼等は尚更でしょう」
どうせアヤトはたこ焼きを探しに、カナトは菓子巡り
ライトは女性を漁りに、そしてスバルはそんな兄たちのどれかに引きずられた……という具合だろう。
全く……人間にとって魔界は危険だから彼女の護衛をするといった傍からこれだ
しかし、普段の彼らの自分本位な行動からして一時間にも満たなかったがこうして花子の為に何かをするという事自体が酷く奇跡に違いない
というか少しこうなる事も予想しておりましたし。
「仕方ありません、花子。ここは私と二人で遊園地を満喫しましょう」
「え、え、レイジと二人で?」
「おや、何か不満でも?そもそも本来ならばこうして二人きりの予定でしたでしょう?」
「う!ううん!不満、ないよ!!嬉しいよ!?」
いつまでもこうして賑やかな空間の中、何もせず立ち尽くすというのは本来の目的とはかけ離れていると判断し
当初の予定である「遊園地を楽しむ」というものを実行しようと彼女に声をかければ
どうしてだか戸惑いの声色をあげたので一瞬ピクリと眉を動かし見つめてみるとどうしてか心なしか頬が赤いような気がした。
「花子?熱でもあるのですか?全く、日頃から淑女になる以上体調管理もしっかりしろと言いつけてきたはずですが」
「?、??、私別に何もしんどくないよ?」
二人で顔を合わせて互いに首を傾げる。
頬が赤いので恐らくまた以前のように無理がたたって体調を崩したのかと思い
少しばかり説教をしようと思えば心当たりがないような感じで花子がそれを遮ったので
確認の為に彼女の額に手を当てれば体温はまさしく正常……ではその頬の赤みは何なのか
私も花子もその赤みの正体がわからず互いにじっと見つめあうも
まぁ体調に異変もなく、体温も通常なら何も支障はないと思い
気を取り直し、そっと緩い力で彼女の手を引いた
私も花子もその赤みに心当たりがないのであれば
今はこの目の前に広がる彼女曰く夢の国というものを楽しませてやる方が先決だ。
「さ、花子……魔界というのが聊か予定が狂いましたが………楽しみますよ」
「は、はい!」
もう一度、クイと眼鏡を押し上げ真剣な声色で呟けば
意気込みを示して花子も少し上ずった声で応えるので「宜しい」とひとつ、笑みをこぼした
ええ、私は何かをするのであれば
いつだってきっちりこなしますよ。
たとえ舞台が自身に似つかわしくない遊園地だったとしても、です。
ふいに遠くで
誰かの呆れたような声がした気が……しなくもない。
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