15:メリーゴーランド


なんの前触れもなく花子が頬を染めた理由は私も、ましてや本人さえ分かっていないが
まぁ支障はないと思い手を引いたのはいいけれど……




「さて、困りました……」




ぽつりと呟いた自身の言葉にひとつ、溜息だ…
全力で楽しむと意気込んだものの……




「(まぁ………花子も女の幼児ですから、ね)」




彼女がピタリと立ち止まってじっと食い入るように見つめる一つのアトラクションに
私はビシリと一瞬体を固めてしまった。



可愛らしい音楽と共に回る木馬
そして数台の馬車……




「花子、メリーゴーランドに乗りたいのですか?」




「!え、えっと……」




この夢の国でも一層現実離れしたそれに酷く惹きつけられてしまった彼女に問いかければ
どうやら私の気持ちを察したのか少しばかり戸惑い答えにどもってしまうが
体は正直なようで、言葉では戸惑いを示しているが足は一向にその場から離れようとはしない。



確かにあれは私には似つかわしくない…
可愛らしすぎるというものもあるが、チラリと視界に入る白馬に目を細める
あのようないかにもな物が似合うのはいつだって私ではなくて………





「レイジ?」





思い浮かべたくない男を浮かべてしまい、無意識のうちに繋いでいる手にさえギリリと力を込めてしまい
不安げな花子の声が響いて意識を現実へと引き戻された。
ふいに視線を下へと向ければそこにはあの白馬に似つかわしくない私をまっすぐ見上げている花子の視線とバチリと合ってしまい
思わず先ほどまで支配されそうになっていた卑屈や劣等感から解放される
嗚呼、そうでしたね……貴方にとって、私は




「仕方ありません…今日は貴女の希望を叶える為に来たのですし行きましょう。但し、一度きりですからね」




「!うんっ!!ありがとう、レイジっ!」




気を取り直すようにひとつ、息を吐き
恩着せがましく呟けば本当に素直に感謝の言葉を紡いでしまう花子に苦笑しか出ない。
きっと礼を言うべきは貴女ではなく……




「レイジ!レイジ!!あれ、あれに乗りたい!!」




「は?ちょ、花子…流石にあの一番派手なのは……お、お待ちなさい!!」





ほぼほぼ初めて自身の希望を聞き入れてもらえることができて嬉しかったのか
花子が初めて私の手をぐいぐいと引っ張ってそのきらびやかなアトラクションへと連行していく…
そしてそんな彼女が指をさすのはその中での一番派手で豪華絢爛な木馬で思わず声が裏返ってしまった。





こ、こんな
こんな派手すぎな白馬なんて…!





「レイジ、すっごく格好いい!!」



「………このような子供のアトラクションで格好いいと言われましても……嗚呼、ギャラリーの視線が痛い」




花子はまだ小さいからとその豪華すぎる白馬に
私と二人で乗って珍しくも大はしゃぎな彼女にそう言われて大きなため息が出てしまうが…
まぁ……




「神には相応の乗り物、というわけですか」




ゴウンゴウンと華やかな音楽と共に回転し始める木馬に乗りながらポツリと零した言葉
まぁ……そういう事ならばと、今回だけはこの痛すぎるギャラリーの視線も甘んじて受け入れてやろうと思う。




この私がこの可愛らしいアトラクションに幼い子供と一緒にだなんて
逆巻家が有名すぎるこの魔界では天地がひっくり返るほどありえない光景だが




「こんなの一度きりです」





その言葉は今の状況をさしているのか
先ほどの胸の内に渦巻いていた黒いものが薄れたことをさしているのか
それは私に自身も分からないが…




また遠くで
今度は誰かがクスクスと笑っている気が、した



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