02:ノーヒント


「それにしてもノーヒントとかマジでヴァンパイア王だけどぶっ飛ばしたいよね」



「ええ!?お父様を!?だ、駄目だよ花子さん!」




「うんうん、そうだねシュウさんお父様をぶっ飛ばすのはきっと元に戻ったシュウさんの役目だもんねー」



自室のベッドの上で自分よりすっかり小さくてかわいくなっちゃった最愛をぎゅうと抱き締めながら不機嫌に愚痴を零せば
そんな私の言葉に慌ててシュウさんが宥めてくれるけれど今そんな彼はいつもみたいなクソ怠そうな空気はまとってなくてちょっぴりあどけなくてまるで天使…
きっと恐らく今の彼はエドガー君とお友達になる前……苦しい、つらい出来事が起こる前の彼なのだろう
その証拠にまだその瞳に純粋さを宿している気がする。




あの後すぐにレイジ君が魔界へ行ってカールハインツさんに事の真相を問いただしに行ったけれど
彼が得た情報は、やはり犯人はカールハインツさんその人だと言う事だけだった。
どうしてもシュウさんを小さくした理由も元に戻す方法も何度聞いても全く教えてくれなかったらしい…



カールハインツさんはこうなってしまえば本当に頑固な方なので
もう何を言っても絶対に教えてはくれないだろう…
あれからレイジ君はシュウさんを元に戻す方法を探すと言ってあちこちへ出かけてくれている……
恐らく絶対100%間違いなくシュウさんの為というかこれ以上自分の負担を増やしたくないだけだとは思うけれどこれはありがたい……只の人間の私には全く手に負えない案件なので。






「嗚呼、もう……何なんだろ、なんの気まぐれだよカールハインツさんこれどうやったら戻るんだよーシュウさんもうすぐお誕生日なんだってば」



「んぅ、花子さん……くすぐったい」




気まぐれ王様の悪戯に巻き込まれ、更にはノーヒントと言うこの現状に溜息は止まらないけれど
目の前のぷにぷにほっぺの誘惑に勝てることはなく幼いシュウさんの頬に自身の頬を寄せすりすりとその感触を堪能していれば
クスクスと笑ってくれる彼に思わず胸がほわわと温かくなる
んん……もうこのまま幼いシュウさんを一から私が育て上げて性格ひねてない天使のまま成長させるというのも…





「いやいやいやいや」





一瞬頭を過った邪すぎるその考えに何度も首を横に振り再度可愛い最愛を見つめる
そうだ、私はどんだけ無気力でダル男で怠惰の極みで一向に全く何もしようとしないシュウさんでも
そんな「彼」に惹かれてこうして最愛になったんだ。
どれだけ辛い記憶も思い出も、ひとつでも欠けてしまえばそれは私の愛した彼ではなくなってしまう。




「花子さん?」




「ん、大丈夫だよシュウさん……絶対お誕生日までに元に戻してあげるからね」




きっとこれから身を引き裂かれるよりつらい体験をするであろう
まだ何も知らない純粋な彼に微笑みかけて何度も頭を撫でる。
この幼いシュウさんにとってはこのまま私にお世話されて幸せだけを感じて過ごす方が幸せなのかもしれないけれど




「それにしてもどうやったら元に戻るんだろう……やっぱり王道で真実の愛?え、私もう既にシュウさんの事愛しまくってるし…キス、は初日に可愛すぎて奪っちゃったけど変化なしだし…うーん」



「………………」





わしゃわしゃと何度も何度も飽きもせずに彼の頭を撫でくり回しながら現状の解決策を練るけれど
一向にいい案は思い浮かばない……ホント、これからどうしろと言うのだ。




「ああー早く元に戻ってシュウさーん」




途方に暮れ、小さな彼をぎゅうぎゅうと強く抱き締めながら大きな声でぼやく
この時、私はそんな私の言葉を聞いて彼が少し複雑そうな顔をしたのに気づくことが出来なかった。




10月12日…シュウさんのお誕生日まであと6日。
未だ全く解決策も進展もないまま只無常に時計の針が時間を刻むばかりである。



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