04:たのしいおばけやしき
「きっと小さな子だったらこういう場所とか好きだろうなぁとか安易に思ってたけどシュウさんだっていう根本を忘れてた!!」
「?」
昨日シュウさんとデートの約束をして善は急げとやってきたのはいいけれど…
目の前には今の彼と同じく小さな子供が沢山。
彼らはお母さんたちと手を繋いで次はどれに乗るとかお話ししてとても楽しそう。
音楽だって可愛いものばかりで現実世界を忘れそうになるものばかり……そう、普通の子供ならこういうの絶対喜ぶはず。
現在私とシュウさんは周りの親子たちと同じように手を繋いで
このにぎやかな場所、遊園地へきている……来ているのだが。
「ああ、絶対場所のチョイス間違えた。だってシュウさん煩いの死ぬほど嫌いだもんねいつもイヤホンつけて私の話さえ聞いてくれないのになんでこんなにぎやかなとこ連れてきちゃったんだろ私の思考回路ホント単純すぎて笑える」
そう、普通の元気いっぱいな子供なら間違いなく喜んでくれる場所なんだろうけれど
今はこうして幼いけれどシュウさんはシュウさんだ
普段だって何かというと煩い眠いしんどいしか言わない彼だ……
静寂と言うか落ち着いた場所を何よりも好んで…というか外の音を煩わしく感じていつだってクラシック聴いてるような人をどうしてこんなにぎやかな場所に連れてきちゃったんだろ
シュウさんと言う大前提の前に子供って言うのばかり見てしまってた…
「馬鹿……私のバカ。子供でもシュウさんなんだから…お貴族無気力系ヴァンパイアなんだから大人しくクラシックコンサートとか連れてけばよかったんだ………って、あれ?」
「……………」
心底自分の浅はかさ加減に嫌気がさして頭を抱えていたけれど
隣のシュウさんが「こんな場所嫌だ」とか「帰りたい」とか一言も言わないのでどうしたんだろう…もしかして幻滅し過ぎて言葉も出ず
幼いながらに私を虫けらのよな目で見ているのだろうかとチラリ、視線を彼の方へと向ければシュウさんはじっと目の前に広がるアトラクションと親子連れの子供たちを見つめていた。
「此処が遊園地………貴族じゃない……普通のヴァンパイアの子供達が楽しいって言ってたの、こっそり聞いた気がする」
「シュウさ、」
「羨ましいな………僕は城で勉強ばかりだけれど……彼らはこんな楽しそう場所で遊んだりしているんだね」
嗚呼、そうか
この幼いシュウさんは色々なつらい想いをする前のシュウさんだから
素直にお母さまから課せられる勉強や色んな作法、その他を只ひたすらにお城で叩きこまれているんだった。
勿論外の世界なんか自分が望んだところで見れる筈もなく、偶に入ってくるそういった僅かな情報を頼りに外の世界に憧れを持っていたのだろうなぁ
じっと楽しそうな子供たちを見つめる彼の瞳は羨望の色は確かにあるけれど
逆巻家次期当主候補である自身の運命にこういった場所には縁がないのだという諦めの色の方が強い
そうだ……シュウさんはいつだってこうして色々な事をあきらめてきたのかもしれない。
「シュウさん、今日はデート此処にしましょう!!」
「え、でもさっきまで花子さん、何か色々言ってなかった?」
「あ、あれはそのあのえっと……なかったことに!!」
彼が元に戻ってしまった時、この日の記憶が残るのかはわからない
分からないけれどそういうの、頭では理解しているけれど今こうして手を繋いでいる彼に何か当時味わうことの出来なかった普通の子供と同じような思い出を作ってあげたいなと心の底から思ってしまう
ぎゅっと繋いでる手の力を強めてニッコリと戸惑いの表情を浮かべる彼に微笑みかける。
うん、きっと大丈夫。
今の彼は時期当主様として自覚なんて持たなくていい、無駄なプレッシャーも
周りの期待も背負う必要はない……だって正直今の時代の貴方は無気力ダル男ニート穀潰しなんだもん
こういった場所で遊んだところで誰も責める人もいないよ。
「さぁさぁ、シュウさん何乗りたいです?やっぱりメリーゴーランド?それともコーヒーカップ?」
「!ええとええと……あれ!何だか魔界みたいだからちょっと行ってみたい」
「え」
きっとこんな事、いずれ戻るのだから無意味だと分かっていても自己満足と言われようとも
彼を楽しませてあげたいと初めての遊園地でどのアトラクションに乗りたいかと希望を問えば
彼は少しそわそわしながらあるアトラクションを指さしちゃうものだから私の顔面は蒼白、シュウさんはわくわく
おいおいおい嘘だろ……嘘だと言ってくれ。
彼が差したのは普段馴染みのある魔界に近いと言うそれ…
煌びやかな遊園地には似つかわしくないおどろおどろしい外観にちょーっと…ちょーっと怖いBGM
似つかわしくないけれど絶対にこの場所に必要なスポットのひとつ
というか魔界前に一度シュウさんに連れてってもらったことあったけどこんな怖い場所じゃないかったよもっと普通だったよこれのどこが魔界っぽいのシュウさん
「い、いやだ!お化け屋敷とか死んでも行きたくない!!他!!!他のアトラクション乗りましょうよ!!!」
「え、でも花子さんはどれに乗りたい?って僕に聞いたんだよ?なのに自分の嫌な場所だからってそんな前言撤回って……大人なら自分の発した言葉に責任を持たないといけないって何処かの本に、」
「う、うおおおお!誰だ!!!誰だこんな幼い子に無駄に英才教育した馬鹿は!!!くっそ!!!そんな事言われたらもうなんか後には引けな……ってまってまってまってシュウさんマジで?マジで行くの!?」
そう、彼が行きたいと言うのはよりにもよってお化け屋敷…
いや、シュウさんもシュウさんの同族も吸血鬼で大まかに言ったらお化けみたいなもんだと言われればそうなんだけど
彼らはイケメンだし昼間でもこうして余裕でお出かけできちゃうからそういう意識はあまり持ってないというかぶっちゃけ怖い場所でグロイ仮装をしたスタッフさんにしこたま驚かされるのが死ぬほど怖い!!
どうにかしてお化け屋敷を回避しようと足に力を入れてその場にとどまろうとするけれど
そこはいくら幼いと言えど吸血鬼と人間……力の差は歴然で
私はずるずると可愛い小さな幼子シュウさんに無理やり引きずられ、抵抗虚しくお化け屋敷へと連行される羽目となった。
「あー!!!しゅ、シュウさんお化け!!!お化け怖いちょっとマジ手離さないでホントお願いですマジでなんでも言う事聞くんでああああああ」
「花子さんにとって僕もお化けみたいなものじゃないの?たべちゃうぞー」
「わあああもういっそ食べてください怖い怖い怖い怖い!!!!この場から逃れることが出来るのならシュウさん!貴方の胃に収まってしまいたい!!!」
10月14日、彼の誕生日まであと4日……
彼にせめて仮初でも楽しい思い出をと思っていたけれど
私のトラウマを作ってしまった遊園地での出来事
まさか私のリアクションを面白がって10回以上お化け屋敷を周回させられるとは思わなかった
逆巻シュウ……幼くてもドSな所は変わらないようだ。今日はシュウさんと一緒に眠る許可をもらおう怖かった。
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