05:しあわせ御裾分け


「そう、私はよく普段のシュウさんにも考えが安直すぎるあんたは猿かとよく言われてます花子ちゃんです」




「ええと」





「昨日のシュウさんが楽しそうだったらもっと楽しい思い出をって思ったけどそもそも甘いの嫌いでしたね私のバカ!!!」




だんっと目の前のテーブルを叩けば周りのお客さんが驚いて此方を見てしまうけれど
今はその視線に恥ずかしがる余裕なんてない。
どうして私はこうやって考えが安直で一直線で馬鹿なのだろうか
これはいつもシュウさんに呆れられて溜息つかれても仕方ないレベルである。




昨日の遊園地でのシュウさんの楽しそうな表情をもっと見たいと
そう思って今度はおいしいものでも食べたらきっと幸せな気分になるんじゃないかなぁって思って連れてきちゃったのは
「私が」食べたら幸せな気持ちになれる可愛い可愛いケーキが沢山あるカフェだ
いや、だからシュウさん甘いの嫌いじゃないかなのにどうして安直にこうやって自分基準で行動しちゃうかなぁ自分…




「今のシュウさん見たらなんかスイーツ似合うだろうなぁって思ってついつい……」




「え、え、今の僕って甘いの似合うの?」




「うん、似合う…めっちゃ似合うよシュウさんその可愛い天使のお顔に可愛いスイーツ似合い過ぎだけどシュウさんの味の好みを舞い上がりすぎて忘れてた」




大きなため息を吐いて正直に今のシュウさんの外見と自分の好みばかり見て
肝心の本人の好みをすっぽりと忘れてたと白状すれば目の前の彼は苦笑を漏らしてしまうけれど
いつもみたいに冷たい目線は刺してこない流石幼少シュウさん、今現在の彼とは大違いである。




「本当にごめんなさいシュウさん……シュウさんに昨日と同じく楽しんでもらおうと思ったんだけど私の思考回路が猿なばかりに…」




「確かに僕は甘いの苦手だけど……まぁヴァンパイアにとって食ってあまり重要じゃないし」




「フォローになってない、フォローになってないよシュウさんマジ辛い」




テーブルに突っ伏しっぱなしで彼なりのフォローを聞かされるけど
それは食事ではあんまり楽しい思い出作れないと言われているようなもので思い切り更に落ち込んでしまうけれど
カフェの店員さんにはそういった微妙な空気は関係なくシュウさんが甘いの嫌いだったって事を思い出す前に呑気に頼んでしまった甘い甘いイチゴパフェが運ばれてきてしまう。
あ、すっごいおいしそう。




「まぁ来ちゃったのは仕方ないです……というかシュウさん甘いの苦手って結構損してますよねー甘いものは幸せになれる成分が含まれてるとかなんとか」




「だって仕方ないじゃないか……苦手なものは苦手なんだもん」




さっきまでずーんっと落ち込んでいたのにも関わらず目の前にパフェが来たとたんご機嫌へと変わってしまう私を見つめて
微笑ましそうに此方を見つめるシュウさんにどっちが今子供かはわからないけれど今そんなことはどうでもいい
私はそんな甘い甘いパフェを頬張りながら甘いの大嫌いなシュウさんをじっと見つめる
彼は此処に来た時に頼んでいたトマトジュースをゆっくりと飲みながら私の言葉に少しむっとしながらも応えるけれど…
まぁ、甘いの苦手だからスイーツは頼まないにしても色が血に近いトマトジュースをチョイスしちゃうなんて幼くても流石吸血鬼である。





「確かに苦手なのは仕方ないですけど…………あ、」




「?花子さん?」





パクパクとパフェを口に運ぶごとにどんどんと幸せな気分になってご機嫌に表情を緩ませながらも
先程自分が紡いだ言葉を思い返す。
確かに甘未を食べると幸せ中枢が刺激されてハッピーな気持ちになると言うのは何処かで聞いた事があるけれど
それと一緒に聞いた事があるのは甘いものが苦手な人の一例




「……………」




「わ、わ、花子さん……なに」




それを思い出して徐にシュウさんの頭を何度も何度も撫でる
甘いものが苦手な人は甘味がもたらす幸せ成分に慣れていない人もいる……即ち普段から幸せを感じたことがない人が甘いものを苦手とするという例があるらしい
あくまでも……あくまでも一例だし、シュウさんがそれに必ず当てはまるとは言いきれないけれど
でも……





「花子さん?んんぅ」




「えへへ、少しくらいなら食べれるでしょ?おすそ分けです」




私の突然の行動に戸惑っている彼の口に少しだけ……ほんの少しだけクリームをスプーンに掬ってそのまま放り込んだ。
やっぱりその可愛い顔は突然の甘味に少し顰められてしまうけれど、本当に少しだけだからどうか許してほしい。




「シュウさんが、甘いの好きだったらよかったなぁ」



ぽつりと零した言葉……
一例とは言え、もし本当に彼が幸せをあまり感じて来ずにこうして幸せ成分に慣れない体になってしまったのならそんな悲しい事はない。
別にこれはやっすい道場とかじゃなくてもっと単純な……愛しい人が今まで幸せじゃなかったという事実が悲しいだけ。





「よし、シュウさんにはこれから甘いの食べれるようになってもらお」




「え、え、何花子さん嫌がらせ?僕がなかなか元に戻らないから?」




今はこれ以上の甘味は只不快なだけだろうと残りのパフェは私が全部平らげる
もし……もしこれからずーっと私がシュウさんを幸せにできたらいつか……いつか好きとまではいかなくても
普通に甘いものを一緒に食べれることが出来るのかなぁ…なんて





10月15日、彼の誕生日まであと3日
そんな途方もないことを考えながら目の前のパフェを今は一人でこうして食べ進める




ねぇシュウさん
いつか……いつか、このパフェも私と一緒にはんぶんこできる日が来るように
改めて貴方を幸せいっぱいにしてあげたいなぁって……思いました。



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