06:すねちゃまと決意


今はこうして幼いシュウさんだけどこの姿でもシュウさんはシュウさんだから
少しでも幸せな気分になって貰おうって思って今日こそ……今日こそ彼の大好きな事をしてあげようって
意を決して私はそんな彼の部屋の扉を叩いた。







「シュウさんと言えば無気力ダル男ごくつぶニート!!!ほらほらシュウさん、シュウさんの大好きなお昼寝ですよ嬉しいですよね〜。」





「眠くない」





「しまった!!!今のシュウさんは幼少だから無気力になる前だったもう私の気遣い空回りしかしてない泣きたい!!!」




今日こそは彼の好きなことをしてあげて幸せいっぱいな思い出を作ってあげようと思って
彼の部屋に入るや否やぎゅうとその小さな体を抱き締めて一緒にベッドへダイブしたのはいいけれど
そういえば今の幼いシュウさんは別に無気力でもダル男でもニートでもなんでもなかった
只の純粋な箱入り貴族の天使だった……私の腕の中でどうして眠くないのに寝ないといけないのだろうを疑問を持った目で見つめてくるシュウさんに思わず貴重すぎてゴクリと息をのんだ。




だってあのシュウさんが眠くないと…どうして眠らなければいけなのかと疑問に思ってる…いつもなら隙あらばと言うか隙が無くても寝ようとしちゃうのにこれはいくら幼少だからと言っても貴重すぎると思うのだ。




そしてやっぱり思うのは今此処にいる幼い彼は彼であって彼でないと言う事実




「シュウさーん、もういっそこのまま私がシュウさん育てちゃおうかなぁ。可愛いし、天使だし、ちゃんと私の話聞いてくれるし寝ないしこのまま…」




「………………花子さん、拗ねないで」




ぎゅうぎゅうとベッドの上で一向に戻る気配のない幼い彼を強く抱き締めて
もう戻らないなら戻らないでいいやと言わんばかりに言葉を零せばそんな私の頭を小さな手が何度も何度も撫でてくれる
拗ねてる……うん、拗ねてるのかもしれない。




「だって私、こんなにもシュウさんがだいすきなのに」





「うん」




「あ、勿論今のシュウさんも大好き…だってシュウさんだもん」




「ふふっ、そうだね……ありがとう、花子さん」




最初は本当に寂しさだけだった…
私の愛した姿のシュウさんは今此処にはいなくて、寂しくて…寂しくて、
けれど今はそれ以上にこんなにも寂しい想いをしているのに一向に戻る気配のない彼に対して拗ねている感情もある。
別に目の前の幼いシュウさんには何も罪はない……彼は本当に可愛い天使でいいこ。だいすき。
だいすきだけど………





「大人の僕は本当に花子さんに愛されてるんだね」




「うん………愛してる、愛してるのに戻ってくれない」




「それは僕に言われても困るけれど………ん、少し自分に嫉妬しちゃうな」




「んぇ?」





幼い彼も大好きだけどそろそろ流石にいい加減にしろと言う思いが爆発してしまいそうで
むすっと彼を抱き締めたまま頬を膨らませていれば腕の中の彼が困ったように笑って優しく頬を撫でてくる
その感触が酷く心地よくていつもならシュウさんが真っ先に眠ってしまうのに今日はどうしてか私がうつらうつらと微睡はじめてしまってとてもねむい




「だって大きな僕はこうして花子さんに溢れるほど愛してもらってる……こうして出会うはずのなかった幼い僕まで丸ごと」




「んー……?」




「花子さん、花子さん……遊園地、カフェ……とても楽しかった。このお昼寝も……僕、こんなに楽しくてしあわせなの…初めてだ」




「ん…………しゅ、」




「ね……………花子さん」




うとうと
もう既に夢の世界に片足どころか肩の部分までどっぷりと浸かってしまって
寝落ちまであと数秒状態の私にシュウさんが何かを言っているのはわかっているのだけれど…眠くて眠くて意識もぼんやりしていてよく聞き取れない。
そんな私を見て何だかとても幸せそうに笑ってるのはわかるんだけどなぁ…







遂に耐えきれずに彼を抱き締めたまま遂に眠った私は
最後の最後、彼の言葉を聞くことをできずにその意識を夢の中へと落としてしまった。
私の腕の中では彼がきっと普通に私と出会ってなければ作る事のなかったであろう心底幸せそうな顔をして笑っていた事にさえ気付かずに





「花子さん………僕はこのまま何があっても頑張って生きていればいつか……何百年か先、花子さんに出会えてこんなに愛してもらえるんだね…だったら、僕……何があっても生きていたいな」




それは何かの決意表明のような言葉。
きっと元に戻ってしまえばもしかしたら全て消えてしまう思い出だったり感情なのかもしれないけれど…
私が眠っている時、彼は穏やかにそう呟いてそっとそのまま目を閉じた。





10月16日、彼の誕生日まであと2日
一向に戻る気配のない彼に少しばかり拗ねながら眠った昼下がり
幼い彼のそんな言葉を私は聞くことが出来ないでいた。



そしてシュウさんのその言葉を使い魔越しに聞いていた王様が
ニコリと口角をあげたのは、私は勿論…誰にも知られることはなく
只々、時計の針が無常に時を刻んでいくだけ…



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