やきもち〜カナト君の場合〜


「か…カナト君なら分かってくれると信じてたのに…!」


「しりませんよ」



「ドS吸血鬼はどいつもこいつもやることが酷過ぎる!」



もはや何も残っていない私の部屋のど真ん中で嘆いてもカナト君はそんな私を見てさらに不機嫌顔だ。

私は昔から可愛いモノが大好き。
だからぬいぐるみやお人形などたくさん集めてたのに、部屋に戻れば全部ぜんぶ無くなっていた。


そしてポツンと代わりにいたのは一人の可愛い吸血鬼だけ。


「な、なんで…なんで全部燃やしちゃうかな…私の大事な子達を…うぅ…」


「花子さんがいけないんです…」


「え?」


カナト君も可愛いもの大好きだから、きっと私のこの趣味を分かってくれると思ってたのに
この鬼の所業にもはや私は涙を流していいはずなのに、どうしてか泣いてしまったのはカナト君で…。


びっくりして思わず顔を上げればテディをいつも以上にぎゅっと抱き締めて
私への不満が大爆発。


「いつもいつも僕以外のモノを目に写してかわいいかわいいって幸せそうに…僕がどんな気持ちだとか全然知りもしない…花子さんは最低だ!」


「え、あの…えっと、」


ボロボロ涙を零してご立腹なカナト君には非常に申し訳ないけれど今の私の顔面はまっかである。


ちょっと待ってよそんな可愛いやきもち妬いてたのカナト君。


私全然知らなかったよ。もう大事なもの全部燃やされたと言うのに今や貴方への愛しさで全身震えてしまってるんだけど。


そんな考えを抱いていればずいっと私の顔を覗き込む可愛らし過ぎる泣き虫吸血鬼。
未だに涙が枯れることはない。


「ねぇ花子さん、僕…可愛くない?僕だけじゃヤなの…?」


もうその台詞、計算でもそうじゃなくても私には効果抜群で
本能の赴くままぎゅうぎゅうと抱き付けばようやく止まってくれた彼の涙。
その事実にほっとしながらも、抱き付く腕の力を緩めることはしない。


「ううん、カナト君だけでいい。カナト君じゃなきゃヤダ。」


「ふふ…うれしい」



嬉しそうに笑ってくれたカナト君に嫉妬させてごめんなさいのキス。
すると彼もお返しに私にちゅっと可愛らしくキスしてくれてお互いに微笑み合った。


何もなくなってしまった私の部屋に二人きりだなんて、何だか隔離された二人だけの世界みたいですごくロマンチックだ。


「ごめんねカナト君。もうカナト君以外かわいいって言わないよ。」


「ほんとう?」


「うん!約束!」


だってこんなにも沢山私の事だいすきでいてくれて
こんなにもかわいい嫉妬してくれるひとなんてこの世のどこ探してもいないもの!
世界でいちばんかわいい私の彼氏は私の何よりもの宝物だ。



(「あ!あのヌイグルミかわいい!ああ!こっちのおにんぎょうもキュート!」)


(「………花子さんの馬鹿!」)


(「ハッ!しまった!ごめんなさいカナト君!泣かないで!」)



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