やきもち〜ルキ君の場合〜


「うふふ、こうしてルキ君といちゃいちゃできるのは久しぶりだね」


「黙れ現実を見ろ社畜」


「無理無理そんなの見たら死んじゃうから」


「死んでも構わないがこの書類の山を何とかしてから死んでくれよ?」



ひ、酷過ぎる!
私は現在この書類の山に埋もれながらお仕事を片付けている。
そしてルキ君は私が泣きながら縋り付いてようやく隣で本を読んでいてもらっている状態だ。
本当は一人で読みたかったらしいんだけど、こんな仕事量一人きりでとか淋しくて死んじゃうもの。


「はぁ、でも終わらせないとホント、ルキ君といちゃいちゃできないから頑張ろう…」


「精々足掻け社畜」


「社畜違う!家畜!あ、ちがった。ルキ君の彼女!」



盛大にツッコミを入れればようやくスイッチを切り替えて目の前の書類たちに意識を集中させる。
チラリとルキ君の視線がこちらに向いた気が仕立てれど今はそれどころではない。
一刻も早くこれを片付けて彼と甘い時間を過ごしたい。




「おわったー!」


「一応お疲れ様と言っておくか」


ようやくすべての書類を片付けて
大きく喚きながらルキ君の腰に抱き付けば優しく頭を撫でてくれる。
ああこのご褒美の為に私は頑張ったのだ!


「それにしても、仕方のない事とはいえ…気に食わないな。」


「え、何が?ん、…んぅ、」


パタリと分厚い本を閉じてそんな事を呟く彼を疑問に思って顔を上げて表情を確認しようとすればその前にふさがれる唇。
何度も何度も角度を変えて侵される口内はもうすっかり彼の味を覚えてしまっている。


「る、ルキ君…どうしたの、いきなり」


「嗚呼、ようやく俺を見たな…花子」


愛おしげに頬を撫でられればもう私の世界は彼一色で
思わず自らもすりすりと彼の手に頬を寄せる。


「花子、お前は俺のものだ。」


そんな滅多に言ってくれない台詞に私のテンションはうなぎのぼりで
抱き付いていた腕にぎゅうぎゅうと力を込める。
けれど彼はそれでも尚私のテンションを限りなく上げにかかる。


「仕事の類にお前の意識を持っていかれて嫉妬なんて…もはや俺が花子の家畜になってしまったようだ」


「こ、こんな格好良すぎる家畜君是非とも可愛がらせていただきますー!」


もう我慢の限界とばかりに起き上がって彼に全体重をかけてそのまま押し倒そうとしたけれど
それはかなわず、再び深く唇を塞がれそのまま逆にその場へと押し倒されてしまった。


視線は見慣れた天井。そして普段とは違う妖艶に嗤うルキ君。


「調子に乗るなよ花子。貴様如きに俺が飼いならせると?…可愛がるのはこの俺だ」


「ぜ、ぜ、全力で可愛がってください…!」



ああもう最高だ。
こんな可愛い嫉妬と格好良い笑みを浮かべる二面性を併せ持つ愛おしい吸血鬼が私を愛してくれるだなんて
何という最上級のご褒美だろうか。



取りあえず本日のご褒美を頂く為に社畜で家畜の私は
愛しい私限定の主人であり家畜の彼に自ら唇を捧げた。



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