やきもち〜アズサ君の場合〜


「花子さん、俺をおもいっきりぶって…」


「ど、どうしたの…アズサ君」



しゅんっとしながらそんな事を言いだしたものだから驚いて固まってしまった。
どうしたんだろう…最近はそんな事言わなかったのになぁ

殴る代わりによしよしと頭を撫でてやると嬉しそうに目を細めちゃうアズサ君は間違いなく私の天使だ。
そんな彼にどうしてそんな事言いだしたのかと無言で目で訴えれば彼の表情は再び曇る。



「この子…」


「ん?猫ちゃん?」


おずおずと彼が指さしたのは今日一日限定で友人から預かっている猫ちゃん。
今は私の膝の上で眠っている。
この子がどうしたんだろう…
首を傾げていればアズサ君はそのまま言葉を続ける。


「ただのペット…わかってる、のに…花子さんを、とられたみたい、で…かなしくて…この子がいなければなぁ…って酷い事、かんがえて…だから…」


「うん、アズサ君徹夜の準備は出来てるかな?」



なんだよその可愛すぎる嫉妬は。
しかもやきもち妬いちゃってそんな自分が許せないから殴ってくれって?
やだやめてもう…どうしていちいち考えが可愛いのかな。


そんな事を考えていればようやく起きたのか、私の膝の上で小さく鳴いた猫ちゃんに視線を向ける。
するとそれに答える様に足にすりすりと頬ずりしてくる。
うん、可愛い。


「…だめ、」


「え?あず、アズサ君…?」


いきなりどうしたのか、とても悲しそうに呟いた彼はその場にぴったりと体を地面に密着させて猫ちゃんと視線を合わせた。
そしてこれから始まる末っ子対愛玩動物の大戦争。



「そこ…俺の、場所…どいて…」


「にゃー」


「ダメ…花子さんは、俺のだもの…キミには…わたさない」


「にゃぅ!」


「うぅ…花子さん、この子が苛める…」


アズサ君猫と会話できるの?
いや、その前に会話内容可愛すぎるし、最終的に猫ちゃんに負けて涙目になりながら私を見上げて助けを求めるのをやめてはもらえないだろうか
今ここで襲ってしまいそうだ。


そんな彼をみて小さく息を吐いて何度か優しく頭を撫でて和平交渉案を提案。



「仕方ないから猫ちゃんはこのままで、アズサ君は後ろから私を抱き締めるって言うのはどうかな?」


「………うん、そうだね…それなら…いい、かも」


暫く考えていたけれど納得してくれたようで
アズサ君は早速いそいそと私の後ろに回ってその細い腕で一生懸命私を抱き締めてくる。



「あのね?花子さん…明日はその場所、俺のだから…ね?」


「ふふふ、わかってるよー」



不安げにそんな事を言っちゃうアズサ君が可愛くて
抱き締められた体制のまま悪戯に体重を後ろにかけると嬉しそうな微笑みが響いた。



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