盛大ないきおくれ
「おい、どうしてお雛様にバリケードがはってあるんだ。」
「俺の愛らしい乙女心を察してやってもいいんじゃないか?」
「ルキ君は男の子だし愛らしくないし寧ろ鬼畜だし取りあえず私のお雛様解放してください!」
私がその場でじたじたと足踏みしてもこの完璧なまでのおひなさまガード、と言う名の本の壁は全然崩れない。
犯人であるルキ君はと言うとしれっとその一部の本を取りあげて何事も無いように読み始めている始末だ。
全く、何がどうなって私の可愛いお雛様が本の要塞の向こう側で隔離されなきゃいけなんだ。
「折角の雛祭りなんだからごちそうの一つや二つ作ってくれたっていいのにさぁ。」
「…花子は食に関して煩いからな。そう言うと思って用意はしている。」
くいっと顎でテーブルの方へと促されればそこのあったのはとっても可愛らしい料理の数々。
その光景に思わず目を輝かせて勢いよく着席していたただきますと盛大に叫んで彼の愛情籠った料理達を頬張っていく。
そんな私を見ながらもルキ君はチラリと時計を見ている。
…なんだろ、何か用事でもあるのかな?
ルキ君のそんな態度が気になってチラリと自身の時計を見やれば丁度深夜0時を過ぎたところ。
あ、ひなまつり終わっちゃった…
少しだけ淋しいなぁ…なんて思いながらも
そう言えば昔から語り継がれている迷信を思い出してチラリと飾られているお雛様を見た。
…そしてようやく私はその時このクソドS参謀の策略を見抜くことが出来た。
「るるるるるるるルキ君の…ルキくんの鬼ー!!!!!!!!!」
「フッ…ようやく気付いたか。この愚鈍が。」
私の叫びに勝ち誇ったかのように笑うルキ君に先程までナイフとフォークを握っていた手を彼の胸倉へと移動させる。
そして最大限の力を振り絞って彼の身体をガクガクと揺らす。
「ちょっとぉぉぉ!早く…早くこの本の山何とかしてよ!!お雛様片付けられないじゃない!!」
「花子には申し訳ないがこの要塞は1か月はこのままにしておくつもりだ。精々いきおくれるがいい。」
「ぎぃぃぃぃ!や、やっぱりあの話知ってたのね!!バカルキ君!!」
そう、それは雛祭りの後お雛様をずっと飾りっぱなしにしているとお嫁に行きおくれてしまうと言う昔から語り継がれているお話。
まぁ迷信は迷信なのだけれど、やはりオトシゴロの女の子としては少しは気になるもので…
そしてその話を知っていて敢えて私が近付けないようにとこんなのもを作った無神ルキ、マジ鬼畜の類。
「わたっ、私がお嫁に行けなくなったらどうするつもりなのよ!!」
「どうもこうも貴様を嫁に行かせるつもりなどない。」
「な ん だ と !?」
何を今更と言ったような表情でとんでもない事を言いだした彼に対してもはや私の顔は般若のようだ。
ちょっと、私のラッキーハッピーお嫁さんライフを水泡に帰すっていうのか貴様!!
けれど予想以上にマジギレしてしまっている私の動きを停止させたのは何とも意外なものだった。
ちゅっ
「…………は?何いきなりキス?は?」
不意に事の黒幕であるルキ君に唇を奪われてしまったのだ。
突然の事すぎて何が起こったのか分からず固まってしまえばニヤリとドヤ顔で彼は笑う。
「花子にはこれから先、永遠に俺と共に堕ちてもらわないと困るからな。…人間風情に貴様を渡す気などないさ。」
「……………おい待て、愛の告白の前にプロポーズってどういう了見なの?」
悔し紛れにそんな悪態を付いても彼には全然効果がなくて
そんなものよりも真っ赤に顔を染めてしまっている態度の方がお気に召したのか気が付けばすっぽりルキ君の腕の中だ。
「雛人形は1か月あのままだ。異論は認めない。」
「…参謀系ドSが永遠に私を大事にしてくれるなら異論ありませんよ。」
私の言葉に満足気に笑ったルキ君は悔しいけれど非常に格好いい。
嗚呼、もう私は人間世界では永遠にお嫁には行けないみたいだ。
この嫌味な吸血鬼に生涯愛されてしまう運命らしい。
異論は認めてくれないようなので、きっとこれは決定事項。
戻る