夢うつつ
頭がふわふわする。
まともな考えが出来ない。
嗚呼、そうか…疲労というものは泥酔の最高のスパイスになるのか。
「ん、んぅ…」
「花子、かわいい…」
現在私はシュウ君の膝にすりすりと頬を寄せて顔を綻ばせている。
こんな事したことがない。
だって私なんかがシュウ君にこんな事許されるはずがないもの。
けれど今盛大に酔ってしまっているのでそんな遠慮の感情は全てシャットダウンされてしまっていて
自身の好きなような行動を取っている。
彼の大きな手が優しく私の頭を撫でる。
とても気持ちよくて目を細めれば嬉しそうな笑い声が聞こえる。
「お前…いつも甘えて来ないから、新鮮。」
「ん、しゅ、く…もっと、」
「はいはい」
もっともっと撫でてもらいたくて彼の手を両手で取って
自分から頭を擦りつければ呆れたようにシュウ君も撫でてくれるけれど
不意に視界に入った彼の視線の先に私の不満は爆発する。
「シュウ君…」
「は?何…、」
のそのそと起き上がり彼の肩に顔を乗せてじっと見つめれば怪訝な顔をするシュウ君。
何で…なんでさっきから紅茶ばっかり見てるの?
私はずっとシュウ君の事見てるのになんだか…ずるい。
そんな現実に酷く腹が立って全体重をかけて思いっきり彼をベッドへと押し倒した。
片手に持っていた紅茶は盛大に地面にぶちまけられてしまい、部屋中に紅茶の香りが広がる。
「花子、」
「やだ、私だけ見てよ…」
じっと彼の顔を覗き込んでそう言えば
どうしてかシュウ君は長い溜息を吐いて、その気だるげな瞳で私を射抜く。
「お前がそれを言うの?」
「え、」
私に押し倒されたままそんな台詞を吐いて、意味が分からずじっと彼を見つめていれば不意に逸らされる視線。
シュウ君はそのまま私から顔を逸らしたまま言葉を続ける。
「お前は…花子は、俺だけを見ていないくせに、俺にはお前だけを見ろって言うの?」
「シュウ君?」
どういう事だろう…意味が分からず首を傾げていると
彼は少しばかり悲しそうな顔をしてじっと私の目を見つめ直す。
「俺の一番は花子なのに、花子の一番は俺じゃない」
「……………はっ、ははっ」
彼のそんな台詞に私は思わず声をあげて笑った。
シュウ君はそんな私を見てその綺麗な眉を歪めてしまう。
だって仕方ない。おかし過ぎるだろう。
「シュウ君…私の事が好きなの?」
「…………っ、」
この何でもできるイケメンが私の事が好き?
何の冗談だ。
そんなに私の心を弄びたいのか、悪趣味すぎる。
「私がシュウ君のイチバン?…………うそつき」
「花子…、」
こんな欠点しかない人間がシュウ君のイチバンな訳ないだろう。
地位も金も美貌も全部持ってるクセにそんな事言う彼に腹が立つ。
このまま嫌いになれたらいいのにそれが出来ない私の気持ちなんて全然知らないくせに…
私の言葉に酷く顔をゆがませた彼の指が静かに私の背中を撫でる。
瞬間、今まで感じた事のない感覚が私の身体を駆け抜ける。
「あ…っ!?あ、あ…っ!?」
「花子は自分の事、何もわかってない」
急に言う事の効かなくなった自分の身体にパニックを起こす。
ゆっくり、弄る様に服のうえから何度も何度もその綺麗な指で撫でられて
その度にビクビクと体が揺れる。
「あ、まって…、んぅ…なんか、ヘン…っ」
「ここ、イイんだろ…?」
彼の上に跨ったまま体をのけぞらせて何度も痙攣したように跳ねてしまう。
シュウ君はそんな私を下からじっと見つめながら背中の指を止めてはくれない。
「ぅあ!あむ…っ、ぅむ、」
「ははっ…気持ち良すぎて耐えられないか?」
遂に体の力が抜けてしまってそのまま彼に覆いかぶさる形で倒れこめば耳元で嗤われてしまう。
悔しくてこれ以上声を出さないように、ベッドのシーツに口を押さえつけて必死に耐えるけれど彼の手は手加減を知らない。
「ほら…ここを、こう…して、」
「んぅー!ん、ん、んんっ、むぁ…っ、あ、も、…やめ!」
一定の場所をなぞられればもう限界で、シーツから口を離して
彼にやめるように懇願すれば彼の冷たい瞳が私を捉える。
「やめて欲しいなら謝れ」
「は?なに、を…、やぅ…!あっ、ん」
彼の言葉が理解できずに首を傾げれば再び快感が私の身体を支配する。
彼の指が再び動き始めたのだ。
舞い戻って来た快感に耐えるようにぎゅっと彼に縋り付いて何度も首を横に振る。
「俺の愛を信じなかったこと、俺の好きな花子の価値を知ろうとしない事」
「んゃ、ごめ、ごめんなさい…!ごめんなさい!だから、も、あんん…っ!」
彼の言うとおりに謝罪の言葉を口にしたのにもかかわらず
その手は無遠慮に服の中へと侵入して来てしまう。
酷く驚いてしまい大きな声をあげれば、彼は耳元で低く、甘く囁く。
「ねぇ、ホントにやめてほしいの?…さっきから嬉しそうな声しか出してないけど、」
「…っ、…っ、」
何度も何度も首を縦に降っているのにシュウ君の手は背中を直接まさぐって
遂にその手は前にまで侵入し始める。
「ひぅ…っ、やぁ!あ、あ…んやっ、ソコ、だめっ」
気持ちイイ所しか触れて来ない彼の指に、掌に、もはや私はなすすべなくはしたな過ぎる声をあげるしかない。
「ホラ、この後は…どうして欲しい?」
「ぅ…ふっ、うぅ…」
「この口…何の為についてんの?…言え、花子」
低く唸るようにそう言われてしまって、その言葉が酷く怖くて
ガタガタと震えてしまえばシュウ君が小さく息を吐いてそのまま私と彼の体勢を反転させる。
今は私が彼に押し倒されてしまってい状態だ。
「酒飲んでもまだ素直になれないんだな…可哀想な花子、」
「ふぇ…?しゅうく…あ…!?…っ!?」
「ん…ん、ん…」
困ったように微笑んで徐に乱れていた私の胸元に顔を埋めたかと思えば
ぞわりとした感触に大袈裟に体が跳ねる。
「あっ!?やぁ…!え!?…うそ、やだ!そ、な…とこ!」
「ん、ん、んんっ」
ちゅっちゅっちゅっ、と
何度も何度も私の胸にキスをするシュウ君の顔が嫌でもよく見えてしまい羞恥と混乱で顔を赤くしてしまう。
綺麗な瞳を瞑って私の胸に唇を落とすことに集中してしまっている彼を引き離そうとするけれど気持ち良すぎて力が入らない。
「やめ、やめてよ…しゅうくん、やめてよ…ひぅ、」
遂に泣きだしてしまった私の涙をそっと唇で掬ったと思えば絡め取られる指先。
思いもよらない彼の行動に固まればシュウ君は困ったように笑う。
「花子、もっと甘えて?花子のしたい事俺に教えて?」
「ぅ…ふ、しゅうくん…」
その言葉にどう返すのが正解なのか分からずに戸惑っていれば
シュウ君はそのまま私の唇を奪った。
「花子が好き。お前は自分の魅力に気付こうとしてないけど…どれだけ俺が夢中か、今から分からせてやる」
「ん、ふ…ぁ、」
ゆっくりと首の下から顎にかけてなぞられれば
また気持ちヨくてうっとりと瞳を潤ませてしまう。
するとシュウ君の顔も嬉しそうに笑顔になる。
「嗚呼、花子のその顔…たまんない」
そう言って深く熱く唇を塞がれてはもう声も出ない。
何だろう…彼の言う私の魅力って。
よく分からない彼の言葉。
シュウ君が私に夢中だなんて、そんな夢物語ある訳ないのに…
きっと今の私は夢を見ているんだ。そうに違いない。
だったら…だったら、いっそ
覆いかぶさっている彼の首に自ら腕を回して
この気持ち良すぎる夢に全てを委ねようじゃないか。
「しゅうくん…もっと、気持ちよくシて?」
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