ツンデレキャンセラー
いつもならみんなが幸せそうなのを只羨ましいなぁって思いながら見てきたバレンタインだけれど…
今年はだいすきなスバル君の為に頑張ってみようと思います!
「手作りとか初めてだけど…喜んでくれたらいいなぁ」
今からスバル君の喜ぶ顔が楽しみで私の顔の方が先に自然と綻んでしまう。
料理は初心者だからあまりこったものは作れない。
けれどその分彼へのだいすきって気持ちをたくさん詰めたいな。
「い、いらねぇ。」
「え、」
バレンタイン当日、真夜中にスバル君を呼び出して昨日頑張って色々手とか怪我しながらも作ったチョコを差し出せば目を逸らされてそんな台詞。
理由とか全然わかんない。
だって私とスバル君は恋人同士で、バレンタインって言うのはその恋人同士が愛を確かめ合う日で…それにスバル君、別に甘いの嫌いだった訳じゃないし…
じわり
「!?」
受け取ってもらえない事実が凄く悲しくて思わず涙が浮かんだ。
もしかしなくても、これって私、嫌われちゃったって事だよね…
何で今まで気付かなかったんだろ。
バレンタインデーに失恋するくらいならもっと早くスバル君が私に愛想つかしてるのに気付けばよかったなぁ。
「お、おい花子、何泣いてんだ?どうした?どっか痛いのか?」
「ぐす…スバル君、」
ボロボロと涙が頬を伝えば、大慌てでスバル君がその涙を掬ってくれる。
ああ、私の事嫌いになっても優しいんだなぁ…
「何処も痛くないよ…スバル君に嫌われて、かなしいだけ…」
「はぁ!?お、俺がいつ花子を嫌いになったんだよ!」
「だって…チョコ、」
私の言葉にどうしてかすごく怒ってしまったスバル君はそのままギリギリとすごい力で私の肩を掴む。
痛くてぎゅっと目を瞑れば慌てて離してくれたけど、チョコを受け取ってくれないから嫌われたと話せば大きな溜息が聞こえた。
うぅ…更に嫌われちゃったかも。
「っだぁぁぁ!もう、ちっげぇよ!」
「スバ…っわ!」
すごく大きな声で叫ぶと同時に、私の手の中からチョコをひったくって真っ赤な顔のスバル君がこちらを睨みつけた。
「花子がどうしてもって言うなら…もらってやる。」
「そ、そんな無理にだなんていいよ…私の事嫌いなのに手作りチョコとか気持ち悪いでしょ?」
「てっ、てづくり!?」
素っ頓狂な声をあげて更に顔を赤くしたスバル君。何度もチョコと私を交互に見る。
ど、どうしたんだろ…
彼の挙動不審過ぎる態度に首を傾げていれば観念したかのようにまた溜息をついてそのまま唇にキスをされてしまった。
「スバル君…?」
「照れ隠しくらいさせろっつーの、馬鹿。」
不機嫌だけど未だに真っ赤なスバル君の顔は何だかとてもかわいいけれど
言ってる意味がよく分からなくて固まってしまえば乱暴に頭を撫でられてしまう。
「い、いたいよ。」
「ほんとはな!?」
意を決したようにじっと私の目を見つめたまま途切れ途切れに言葉を紡ぐその姿はまるで初々しい新人俳優さんのようだ。
「ホントは…すげぇ、嬉し、かった。でも…なんつーか、恥ずかしくて…ぶっちゃけ今すげぇ舞い上がってるし、やべぇ位嬉しい…てづくり…、その、うん」
「じゃ、じゃぁ…私の事嫌いじゃないの?」
「花子の事嫌う訳ねぇだろ!?馬鹿じゃねぇの!?…あ、」
「す、すばるくん…っ!」
もう嬉しくて嬉しくて私は感激のあまり彼に勢いよく飛びついてしまった
するとスバル君は「チョコが潰れる!」と大慌てだったけれど今の私にそんなの関係ない。
だってだってスバル君滅多にそんな事言ってくれないもの!
「つか、その手…」
「うん、チョコ作るときに手切っちゃって。」
「…馬鹿、」
ちゅっと切り傷のある指を吸われて、ピリッとした痛みが走ったけれど
その後ペロリと舐められてくすぐったさが勝ってしまう。
そして私の顔はいつの間に泣き顔から昨日のような幸せな笑顔へと変わっていた。
「えへへ、スバル君。私の血、おいしい?」
「ん、うまい。けど…今はこっちをくいてぇ。」
そう言いながら私の作ったチョコを箱から取りだしてひょいっと口の中へ放り込んだ。
ど、どうかな…おいしいかな。
ドキドキしながら見つめていればニッコリ優しい笑顔。
「お前は照れ隠しとかしてっと訳分かんねぇ誤解するから正直に言う。…マジうまい。ありがとな。」
「!うんっ!スバル君だいすき!」
その褒め言葉が最高に嬉しくて、私はもっとたくさんぎゅって彼に抱き付いた。
今年は誰かを羨ましがる事のない最高のバレンタインだ!
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