不要な日
「花子なんか嫌い」
「よし死のう」
「…ちょっとは俺を楽しませろよ。あ、ほら飛び降りるな…好き。好き。愛してる。だから飛び降りるな。」
シュウ君からそんな言葉聞いておいて生きれる自信ないよ!!
嘘ってわかりきってても無理だし!!!
今日は噂のエイプリルフールだ。
だからたまにはこういう行事に乗っかりたいって珍しくシュウ君が言うからどんな嘘つくのかなぁって思ってそわそわしながら待機していればそんな発言だ。
もう言われた瞬間すぐに窓に足かけるよね。
シュウ君がめんどくさそうに、でも私がもう飛び降りないようにきつめに抱き締めてくれてるとちょっとは嬉しいけれど
やっぱりさっきの言葉のナイフどころじゃない、言葉の殺人兵器に私の心は木端微塵状態だ。
「酷い!楽しみたいからって私の事嫌いとか酷い!!シュウ君のばかー!!大好き!!」
「あのな…怒るなら最後まで怒れ。なんで語尾が俺への愛なんだよ好きすぎるだろ俺の事。」
シュウ君の腕の中で大暴れしながら叫んでも彼は大きくため息をついて嬉しそうに笑うだけだ。
仕方ない、仕方ないよね!!
私はいくらエイプリルフールだからってシュウ君に嫌いとかそんな事言えないし!!
けれどそんな事を考えてしまえば一気に不安は押し寄せてきてしまう。
散々暴れていた体をピタリと止めて
私を捕えてくれている腕にぎゅっと縋り付く。
シュウ君はそんな私の行動に首を傾けるばかりだ。
「花子…?」
「シュウ君は……やっぱり私の事そんなに好きじゃないのかな?」
紡いだ言葉が震えてしまう。
だってそうじゃないか。
私は嘘でも彼の事嫌いだなんて言えないけれど…
現実問題、シュウ君はさらりと私の事を嫌いって言った。
勿論嘘だって分かってる…分かってるけど…
それってつまりは私とシュウ君との愛情にすごく差があるって訳で…
なんだか悲しくなってじわりと涙を浮かべてしまえば
突然頬に触れた柔らかくて冷たい感触に思わず目を見開いてしまう。
びっくりして犯人であるシュウ君を見上げれば何だか怒られてしまった仔犬のような表情。
「シュウ君…?」
「いつも花子は猪突猛進に俺の事が好きって言いまくってるクセになんでこういう時不安がるの…、俺の言葉はそんなに足りない?」
彼の言葉の意味が分からず固まってしまえば
捕えられてる腕の力がますます強くなる。
離さないように消えないようにって必死にシュウ君が私を抱き締める。
いつだって必死なのは私だけだと思ってたのに。
「花子…好き、すき、愛してる。お前が思ってる以上に俺はお前を愛してる。」
「え、えぇ?そ、それどっち?嘘?ホント?あ、でも今日エイプリルフールだしえっと…」
「馬鹿…………ん、」
シュウ君の溢れんばかりの愛の告白に素直に感激したいのに
この日って言う理由だけで疑ってしまえば混乱して訳のわからない言葉を並べてしまう唇は深く深く塞がれてしまった。
いつもより熱くて激しいソレに私はもう立っていられない。
アレ、シュウ君ってこんなに必死になるひとだったっけ…?
「しゅ、しゅう…く」
「全部本当。もうエイプリルフールいらない。花子がそんな不安がるならもう俺も手加減とかしない。」
「え、な…なに?え?」
ちゅっちゅと可愛らしい音が部屋に響き渡る。
ちょっとどうしたの?沢山の可愛くて優しいキスにもう私の涙腺は既に崩壊済みだ。
ていうか手加減ってどういう事?意味が分からないよシュウ君…
じっとシュウ君を見つめれば私の考えを読み取ってくれたのか少し困ったように彼は微笑んだ。
「花子が俺の愛で潰れるのが怖かったから遠慮してたけど…もう知らない。」
「え、え、え…そ、それこそ嘘だよ…ね?」
手始めに早速私の乙女心を握り潰した彼の台詞に盛大に赤面すれば
いつもの意地悪な微笑みに嗚呼、これは嘘ではないんだと確信する。
「ねぇ、シュウ君…私だけが好きな訳じゃ…ないんだね?」
相変わらず彼に縋るように問うと答えの言葉の代わりにまた深く唇を塞がれた。
ああもう、多分これから私達の間ではエイプリルフールって日は存在しないのだろう。
いつだって、どんな日だって私もシュウ君もお互いに心から愛してるしか言えないのだから。
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