ヴォイス
うるさい
ウルサイ
煩い
頼む、静かにしてくれ
いつだって賛美の言葉を並べて俺に群がる生き物の裏側の声が聞こえてしまう。
ひっきりなしなその声はいつだって欲望まみれで気分が悪い。
読めてしまう俺も悪いのだろうけれどそんなの知った事じゃない。
もう何も聞きたくなくて、ひたすらに耳に直接流れてくる音楽の音量をひたすら上げていた。
嗚呼もう…
こんな耳いらないのに
そう思って何年も過ごしていたけれど
今は何事を察することが出来る自分に感謝している。
じっと、俺の部屋の隅で静かに泣いている最愛を見つめる。
先程まで自身の部屋で泣いていたのを無理矢理に連れて来たけれど
どうやらこんな自分の姿を俺に見せたくないのか必死に体を縮めて壁の方を向いて
揺れる体を見せまいとぎゅっと自身を抱き締めている。
「花子、」
「ひ…っ、ひ…っ、ひぅ…」
大きな声を出して泣き喚く事の出来ない彼女の名を読んでもこちらを向こうとはしない。
普通の奴なら拒絶されてるって思うのだろうけれど
生憎俺は昔から耳がいいんだ。
「花子…だいじょぶ…花子、」
「う…っ、ぅえ…ふぅ…っ、」
ゆっくり包み込む様に抱き締めれば怯えて揺れる小さな体。
いつだってコイツは俺に遠慮して独りで泣いていたようで…
それが分からなかっただけでも以前に比べたら俺の勘は落ちたのだろうか…?
だから、今日たまたま花子の部屋に行ったときは無い心臓が止まるかと思った。
だるいって言って放っておけばいいのにどうしてもそれが出来なくて
せめて俺がいる前で泣いて欲しいと、こうして部屋に引きずり込んだ。
花子が目の前にいる今なら鈍った俺の耳にも全部聞こえてくる。
「花子、だいじょうぶ…愛してる、独りじゃない。」
普段肝心な事を口にしない花子だから、こういった事も全部俺が汲み取ってやらなきゃいけない。
声をあげることが出来ないお前の心ってやつに耳を傾けることが出来るのは俺だけだ。
こわい
さみしい
あいしてほしい
ホラ、全部聞こえる。
俺の腕で小さく震えるその体で一生懸命聞こえない声をあげている。
嗚呼、やっぱり俺は耳が良くてよかった。
「聴こえてるよ…花子、」
初めて聞こえる心地よい、裏側の欲望に
俺は小さく笑ってソレを全て叶えてやろうと彼女の唇に優しくキスをした。
叫べなくていい
喚けなくていい
全部全部、俺がお前の心を聴いてやるから―
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