至高のイチゴシェイク


「こ、ここが噂のファーストフード…!」



「すっごい目が輝いてますね大丈夫ですか?」




キラキラと、本当に嬉しそうにでかでかと貼られているメニューを見ながらはしゃぐ王様にまた苦笑。


あれから色々大変だった。


ICカードのあるデパートをお気に召した彼はもはやそのデパート自体が欲しくなっちゃって
株を買い占めそうになったり、庶民的カラオケボックスへと連れていってあげれば
その部屋の狭さから「いくら心が広い私でも流石に豚箱に閉じ込められるのはちょっと」とか言い出したり


電車移動の時に切符じゃなくて6か月定期を買ってしまったりと…もう本当に私の心臓はそろそろ過労で倒れるレベルだ。



そしてこの庶民的デートの締めくくりはまさしく庶民の王道ファーストフード店である。



「いらっしゃいませ、こちらでお召し上がりですか?お持ち帰りですか?」



「キミを?」



「おおおおおおお黙りなさい!このお馬鹿王様!!!」


ゴチンっ!



「あいた。」



真顔で店員さんにそんな事を聞いちゃったカールハインツ様に遂に私は渾身のげんこつをお見舞いしてしまった。
ヴァンパイアの王様になんて事をと怒られるかもしれないが
庶民としては一生懸命働いてるバイトのお姉さんになんてことを言いやがるんだお馬鹿!である。


ほら、もう…バイトのお姉さん顔真っ赤じゃないですか!
仕方ない、こんなイケメンダンディーにそんな事言われたらひとたまりもないよね!!



もう今日一日で100回は超えてるんじゃないかって言う溜息をついて
定番であるハンバーガーのセットと、シェイクを注文して店内で食事。


そこでも普段の高級なレストランとは大違いな、ポップで親しみやすい店内の雰囲気に彼の視線は落ち着かない。
傍から見たらド田舎からやって来たすてきなおじさまだけど、実際はブルジョワ界の頂点に君臨する王様なのだ。



「花子、それは?」



じっと私の飲んでいるいちごシェイクを見つめて尋ねられたので
思わずいつもの友人と来ているノリで飲みかけのシェイクを差し出せば
彼は少しばかり驚いた顔をしていたけれど、すぐに嬉しそうに微笑んでそのままシェイクを口にした。




…あ、も、もしかしなくともこれは間接キスというやつでは…!




そんな事を考えて赤面していたけれど
彼はそんな事日常茶飯事なようでそれよりもその庶民派的過ぎるいちごシェイクの味がお気に召したようで
嬉しそうに両手で持ちながらチューチュー飲んじゃってる姿はどうしてか微笑ましい。




けれど5分後、カールハインツ様は何かに気付いたようにハッ!と一瞬目を見開いて
次はとても申し訳なさそうに目を伏せてふるふるとそのシェイクを私に返却する。



「すまない花子…あまりにも美味しくて全部飲んでしまったよ」



「ふふ…っ、じゃ、じゃぁお詫びにもう一個買ってきてください。ついでに罰ゲームとしてスマイルもらってきてください」



余りにもしょんぼりしてしまっている彼が可愛くて
思わず吹き出してそんな事を言えばスマイルの正体が気になったのか少しばかり早足で駆けていく彼の背中を見送ってまた小さく息を吐く。



なんだかこれで終わりってちょっと寂しいかも。
彼にとっても夢のような一日だったけれど私もなんだかんだで楽しかった。



けれどこんな事は今日限りだ。
日付が変われば彼はいつもの王様に、私も何ら変わりない一般人だ。
まぁ仕方のないことだけれど…
だからあと数分、最後のこの時間を楽しもうと心に決めた。




そしてその数分後、全店員を並べさせてスマイルを頂戴してしまったカールハインツ様が
こっそりこの街で伝説になってしまったのはまた別の話。



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