声と感触
やめて
お願い
助けて
そんな言葉一つ一つが愛おしくて可愛らしくて
もっともっとって思ってしまう俺は強欲なのだろうか…
「ふふ…花子、かわいい…もっと言って?」
「やだ…やだ、やめて…やめてよアズサ君」
怯えて震える体をぎゅって抱き締めたらビクリと大きく揺れてしまう花子が愛おしい。
かわいい、かわいい、かわいい
もっと泣いて怯えて震えて…?
ぐっと抱き締める腕に力を込めて優しく、労わるように再び突き刺す刃に響き渡る悲鳴に歓喜する。
嗚呼、その声が酷く愛おしくて何度も、何度もゆっくりゆっくり確かめる様に君の肉を切り裂いていく。
凶器越しに伝わる君の感触に酷く胸を昂らされてしまう。
嗚呼、愛しい…愛しい花子。
「花子…すき、すき…大好きだよ…」
「すき、…なら、どうしてっ…こ、な…事…っ」
俺の告白に化け物を見るような目で訴える君に首を傾げてしまう。
どうして…どうして君も俺をそんなふうに見るんだろう。
俺はこんなにも花子を愛しているのになんて酷い人なんだろう。
愛しい人の声を聴きたいもの
愛しい人の感触を味わいたいのも
酷く当然の事なのにどうして…
どうして花子はそんなに怯えているの?
「ねぇ花子…俺、これはいらないかもしれない。」
「や…、や…っ!」
グッと瞳の下に指を這わせて力を入れれば
何をされるか悟ったのか何度も何度も首を横に振る花子はきらい。
いらないよ。
俺をそんな風に見つめる瞳なんていらない。
「ナイフで抉られるか…俺の指で抉られるか…どっちがいいかな?」
「や…だれ、か…たすけて…」
ガタガタと震えるのはとても可愛らしいけれど…
俺以外を求めるのはやっぱり嬉しくない。
ああ、その口も縫い付けようか…
でもそうしたら俺の大好きな花子の声が聴こえない…
困ったなぁ…
ああ、そうか…誰かを求める暇なんか与えなければいいんだね。
そう結論付けてしまえば後は簡単だ。
何度も何度も何度も先程とは比べ物にならない位スピードで君を傷付ければ
ひっきりなしに聞こえてくる可愛い声。
そしてようやく誰かを求める事やめてくれた。
代わりに俺に必死に縋りついて「やめて、おねがい、おねがいします」って懇願してくれる。
嗚呼、花子もようやく俺だけを求めてくれた…
「花子、ありがとう…うれしい」
幸せで嬉しくて…俺はキミを何度も抉りながら感謝の言葉を述べる。
辺りは花子の血液まみれで俺の顔にも服にも至る所にこびりついて離れない。
嗚呼、愛しいキミの一部が俺にまた何度も降り注ぐ。
次第に叫びすぎてカラカラになってしまった声もやっぱり綺麗で愛おしくて
嗚呼、花子って本当にどこまでも素敵な人だって思った。
「ねぇ花子…君が動かなくなって壊れてしまったその時は…この子に【花子】って名前を付けるね…?」
愛おしげに君の血と肉で真っ赤になったこの子を撫でてそう言えば一気に血の気が引いた顔にキスをした。
ほら、サイゴの最期まで俺に君の声を聴かせて…?愛おしいひと。
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