雨降り
ざぁざぁと煩いくらい強く雨が降る。
けれどこの部屋の窓はわざと開けっぱなしにしている。
「ねぇシュウ…雨降ってるね。」
「ああ…そうだな。」
互いに近い訳じゃない距離でそんな会話。
雨が降れば何も用がないくせに私の部屋に来てしまうシュウの行動はもう慣れた。
私も、貴方もこんな日でなきゃ何もできない。
「何だか世界が泣いているみたいだね」
「花子が泣かないから代わりに泣いてるんだろ…?」
「シュウが泣かないから泣いてるのよ」
「意地っ張り」
「シュウだって」
一言一言、ぽつりぽつりと会話をしながら
徐々にひとつひとつ互いの距離を縮める。
ねぇ私も貴方もいつからこんな風にしか触れ合う事が出来なくなったの?
ようやく距離がゼロになって、ぎゅっと顔を隠すように抱き締めあえば
濡れてしまう私とシュウの肩。
ああ、ホラ…今日もまた雨が私達の間に降り注ぐ。
「なぁ花子…こっち向いて泣けばいいだろ。」
「ねぇシュウ…こっちを向いて泣けばいいじゃない。」
二人とも声さえ震えない。
けれど確実に…確実に私達の肩はじわり、じわりと濡れていく。
嗚呼、素直に泣くことが出来ないのがこんなにも辛い事だなんて…
愛する人に頼られたい。
けれど愛する人の負担になりたくない。
だから私達は互いに互いを隠して涙する。
こうして外で雨が降り注ぐ日だけ
この雨音に全てを隠して、静かに、ひそやかに嘆くのだ。
ざぁざぁ
しくしく
雨音が酷くうるさい。
それは外の音なのか、私達の心の音なのか
そんなのは分からない…分からないけれど…
酷く悲しい事に変わりはない。
「シュウ、雨が見たい。」
「俺も見たいよ、花子。」
未だに互いに顔を隠したままそんな台詞。
ねぇいつか…いつかでいい。
互いの瞳から零れ落ちる雨を見ることが出来るのだろうか…
それまではただ、こうして内緒の雨を流し続けようか
互いに互いを支えることが出来るようになったその日は
ふたりで…雨を流そう。
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