きみのとなり


「花子ちゃん、花子ちゃん、大好きだよ!」




「………っ!」




俺のそんな言葉にキミはいつだってぼふんと顔を赤くする。
そんなキミの表情が本当に大好き。



「ねぇねぇ、花子ちゃんは?…花子ちゃんは俺の事、すき?」



「こ、コウ君は考えが読めるんでしょ!?じゃぁ言わなくても分かるじゃない!!」



ぶんぶんと照れ隠しに両手を振りながら慌ててそんな台詞。
花子ちゃんは意地悪だなぁ…
考えが読めたって、俺はちゃんとキミの口から聞きたいんだ。



知ってるよ、キミの心はいつだって俺でいっぱいだ




でも俺はとっても我儘で強欲だから
君のその可愛い唇で、声で…
俺の事をすきって、そんな短い台詞が聞きたくて仕方ない。



「お願いだよー!花子ちゃんっ!アイドルの一生のお願いっ!!」



「コウ君の一生のお願い500回は聞いてるよ!?」




ぎゅうって抱き締めて懇願しても未だに彼女は言ってくれる気配を見せない。
全く…恥ずかしがり屋さんの彼女を持つって大変なんだなぁ。


徐に彼女の手を取ってそこにキスをする。
すると花子ちゃんの顔はますます赤くなる。
ああ、もう。口にしたって訳じゃないのに本当に可愛い反応してくれちゃって。



「掌のキスはお願いって意味があるんだよ?…ね?花子ちゃん、ホラ…」



「う、うー…うぅ〜!」



もう一度愛の言葉を促せば何かと葛藤し始めた花子ちゃん。
うん、頑張って!恥ずかしい気持ちなんて捨てちゃって俺にだいすきって言ってよ。



そわそわと彼女からの言葉を期待していると
遂に覚悟を決めた花子ちゃんは真っ赤な顔をそのままに予想外の言葉を俺に投げつけた。




「コウ君、あいしてる」



「!」




そんなそんな…そんなそんな!
俺は只キミの口から「だいすき」って聞きたかっただけなのに
どうしてそうやって俺の予想以上の言葉をくれるんだろう。
嬉しくて、嬉しくて、愛しくて
考えるより先に俺の唇はそんな最上級の言葉を発した君の口を塞いでしまっていた。




「こ、こここここコウ君!?」



「あはっ!恥ずかしかった?ごめんね、花子ちゃんがあんまりにも可愛い事言うから我慢できなかった!」



ゆっくり触れ合った唇を離せばもうホント、これ以上は無理じゃないの?って位真っ赤な花子ちゃんが信じらんないって目で俺を見る。


だって仕方ない。俺の心を満足させるだけじゃ飽き足らず、感激させてしまったキミが悪いんだもの。



「ねぇ花子ちゃん、俺もキミの事、世界でいっちばんだいすき!あいしてる!」



だからさ、悪いけど…絶対この君の隣という特等席は誰にも譲るつもりはないんだよ。
君はいつもアイドルの俺と釣り合ってるかとか不安がってるけどさ、ホントに不安なのは俺の方。
こうやってキミに好きって言葉で表して貰えないと心が読めるくせに不安でいつだってこころはぐらぐらだ。




だってキミはキミが思っている以上に魅力的




「コウ君…私、またちゃんと愛してるって、言うね?」



「………まぁ次は俺の理性ちゃんは絶対持たないからその場で押し倒しちゃうけどねー。」



「も、もう!コウ君の馬鹿!!」



ホラ、こうやっていつも俺の欲しい言葉ばっかりをくれる。
いつだってキミは俺を夢中にさせる。
沢山の人間を魅了するアイドルの俺が1人にメロメロだなんて…もう、悔しい!



くやしいけど…でも、ヤな気分じゃない。



「仕方ないよ、だって俺は花子馬鹿だもの!」




こうして隣でキミの手を取って二人で笑って一緒の歩幅で歩きだす。
何ともないような事だけれど、この事実が俺の胸を酷く満たして悲しみじゃない涙が溢れそうになる。




ああ、きっとこれが幸せって奴なんだ。



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