単純な答え
顔とか体とか
勿論テクニックとかそんなんじゃなくて
僕は初めて純粋に誰かに恋をした。
そう
花子ちゃんに恋をしたんだ。
「花子ちゃん花子ちゃんもう誰もいないし手繋ごうよ、んふっ♪」
「う…うんっ!」
僕の言葉にぼぼぼと顔を真っ赤にしてしまったけれど
それでも嬉しそうに花子ちゃんはおずおずと小さな手を差し出してくれるから
僕より一回り位小さいそれを壊れないようにそっと包み込んだ。
「ライト君はいつでも私に触る時、そっとだね。」
「当たり前だよね!だって花子ちゃんは人間だもん!!」
ホントに不思議そうに尋ねてきちゃう花子ちゃんにちょっと意気込んで答えてみる。
そう、僕の恋したひとは同族ではなくて弱くて脆くて愚かしい人間。
ちゅっと触れるだけのキスをしてあげると花子ちゃんの顔はますます赤くなっちゃう。
でもよく考えて欲しい。
この僕が大好きな人を目の前にお子様のキスだけで我慢しているという事実を。
いつだって好き放題やりたい放題してきた僕が恥ずかしがり屋さんの花子ちゃんの気持ちを優先してまだキス以上をしていない。
それほどまでに僕は君を大事に大事にしてるんだよ?
これ以上は無理そうな位顔を赤くして
恥ずかしかったのかその綺麗な瞳にはじわりと涙を浮かべちゃうから少しばかり君に苦笑。
「ほーら、花子ちゃんは弱いじゃない。だから僕がそーっと触れて、優しく守ってあげなきゃ!!んふっ」
「うー…ライト君のいじわ…うわぁ!?」
「!?花子ちゃん!」
僕の方を向きながら歩いてたから彼女は何もない所で躓いてしまって
僕は咄嗟に彼女を庇うように抱き締めて地面と後頭部が激突してしまった。
うん、やっぱり僕ってば花子ちゃんの事大事にしてるなぁ。
こんなの、他のビッチちゃんなら顔面から突っ込む様を見て見下しながら「無様だね」って笑ってたもん。
「いたたたたた。うぅ…花子ちゃん平気?怪我ない?」
「う、うん…ありがと、ライトく………らいとくん。」
どうやらキチンと花子ちゃんを守り切れたみたいで傷一つない彼女を見てほっと安堵の溜息をついて
次に彼女が無事な事実が嬉しくて笑顔になったけれど、彼女は…花子ちゃんは僕とは反対に、僕の顔を見た瞬間目を見開いてポロポロと涙を零しだす。
「え?え?花子ちゃんどうしたの!?ど、どこか痛むの!?こけたときにどこか打った!?」
「うぇ…ライトく…らいとくん…うえぇぇん!」
綺麗な涙を流し続ける彼女に先程までの笑顔が消えて顔面蒼白で涙の訳を聞いても
花子ちゃんはひたすら泣き喚きながらついには僕にぎゅうぎゅうと抱き付いてしまう。
あの恥ずかしがりやな花子ちゃんが自分から僕に抱き付くなんてよっぽどだ。
どうしよう…僕はもしかしてキミを守り切れなかったの?
「花子ちゃん、花子ちゃんごめん…ごめんね。次は…次はもっとちゃんと頑張るね。」
「ふぇ…ライト君、ライト君…」
いつも以上に気を付けてそっと抱き締め返してあげても彼女は全然泣き止まない。
寧ろそれどころか泣き声も涙ももっと大きくなってしまう。
ああどうしよう。僕は弱くて脆い花子ちゃんを自分で傷付けてしまった。
「花子ちゃん、泣かないで…なかないでよ…う、うぅ…」
彼女の涙につられたのと
彼女を守り切れなかった不甲斐なさと
彼女を傷付けてしまったという事実
沢山の辛いことが一気にやってきて僕の涙腺も一緒に崩壊して二人で泣き喚いてしまう。
ねぇなんで?何で花子ちゃんは泣いてるの?
さっきから沢山体を見てるけれど傷なんてひとつもないのに。
どうして?どうして君は僕の顔を見て大粒の涙を零してしまうの?
ああ、つらい。
大好きな人が何かにいたがってるのはとても胸が痛いよ。
「「うわあああん!!」」
互いに大きな声で泣き叫ぶ。
僕はこの時知らない。
彼女が涙した訳を。
僕の頭から流れている一筋の赤い血を。
僕はまだ知らない。
最愛が傷付いて悲しむのは僕だけじゃないという単純すぎる答えを。
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