女王の躾
しとしと
最近毎日の様に雨が降り続けていて
どうやら今日も例外ではないらしい。
誰もいない教室でぽつり、ひとりきりのまま
ぼんやりと降り注ぐ雨を窓越しに覗いていれば
不意に背後から扉の開く音。
「なんだ花子か。……なんでこんな時にあんたいんの?目障り。」
「しゅ、シュウさん…っ!」
以前彼の事が好きと本人にばれてしまってからというもの
私は彼の都合の良すぎる玩具と化してしまっているけれど
それでも…ううん、玩具として扱われているという事実がとても嬉しい。
けれど今日のシュウさんは何だかとても不機嫌でじとりとこちらを睨みつけているけれど
私は構わず彼の元に駆け寄って自身のハンカチを差し出した。
「あ、あの…よかったら、これ。」
「………はぁ。花子は馬鹿。」
教室にやって来た彼は全身ずぶ濡れで
その姿から察するにきっとこの雨の中外で眠っていたのだろう。
風邪を引いてしまえば大変だと思い差し出したソレをシュウさんは溜息と共に取り上げて遠くへ放り投げてしまった。
「あ…」
「なぁ、こんなに濡れてんのにあんな小さな布きれで何が出来るの?ちょっとは頭使いなよ。」
「んぐっ」
ぽかんとして半開きになった口に突然指をツッコまれてしまい、思わず苦しげな声が出る。
けれどシュウさんはそんなのお構いなしに口内にある私の舌を掴んでぐいと表へと引っ張りだした。
…彼の玩具である私はご主人が何を望んでいるのか容易に想像できてしまう。
「馬鹿で愚かな花子が出来る事はあんな小さな布を俺に差し出すことじゃない。…そうだろう?」
「…あ、」
ぴちゃ
ぴちゃ
学び舎のはずの場所にふさわしくない水音が響き渡る。
けれどそんなの構ってられない。
だって一秒でも早く彼の体の雨水を掬い上げなければならないんだ。
「ん、ん…っんぅ」
「はぁ…ノロマ。そんなんじゃ朝になっちまう。」
椅子に腰かけたシュウさんの首筋から胸元かけて滴り落ちる雨水を舐めあげる。
こんな恥ずかしい行為に舌先は震え、恐る恐るだから舐めあげる速度も緩やかだ。
そんなもたもたしてる私にイラついたのかシュウさんは小さく舌打ちをして自由な長い足で私の腹を蹴り上げた。
「…っ!?」
「もういい。花子はホント役立たず。」
思わずそのまま床に転がれば不機嫌な彼が以前の様にぐっと私の頭に足を置いて体重を乗せてしまうから
痛くて声をあげてしまう。
すると彼は「声は俺好みなんだけど…」と小さな声でぼやいて足に更に体重を掛ける。
「あ…っい…!」
「ホラホラ、花子の大好きな俺の足だぞ?嬉しいなぁ…?ん?」
ぐりぐりと足を動かされてメリメリと地面に顔がめり込んでしまいそう。
痛くていたくてこのままじゃ頭潰されるんじゃないかって思って怖くて思わず涙を流す。
「あーあ。泣いちゃった…そんなに嬉しいの?」
「ふ…ふぇ、シュウさ…ごめ、なさ…うぅ」
「言い訳とかいらない。うざいだけだから…って汚い顔晒さないで気分悪い。ホラ。」
ゆっくりと足が離されてゆるゆると起き上がり謝罪の言葉を口にすれば
彼の顔はまた不機嫌に歪む。
けれど私の泣き顔が気に入らなかったのかぐいぐいとセーターの濡れてない部分で乱暴に涙を拭ってくれる。
「あ…シュウさ、わたし…あの、」
「んー?まだ俺の事舐めたいの?花子ってホント俺の事大好きだな。…いいよ、もう一回だけ。」
おずおずと彼のご機嫌を伺えば見下したまま嗤って
もう一度椅子に座り直してくれたシュウさんの肌にまたそっと舌を這わせる。
「ん、そう…イイコ。ちゃぁんと全部舐めとれよ?花子。そしたらまたあんたの好物、くれてやるから。」
「んぅ」
先程とは違ってご機嫌に笑う彼の笑顔が嬉しくて
私は舌を這わせたまま小さく頷いた。
再び響き渡る水音。
けれど先程のような途切れ途切れではなくて
それはホントに相手を求めてる発情した猫の様に必死なものだった。
「ははっ、なぁ花子…ほんと、花子って俺が好きだな。」
濡れた体の彼の渇いた笑いが
教室に静かに響き渡って
私はそんな彼の言葉と声に心も体も外の雨に打たれた様に濡れてしまった。
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