やわらかなキミ


逆巻邸に遊びに来たらとんでもない光景で、私は思わずビシリと固まってしまった。




「シュ、シュウ君。何この惨劇。」



「あ、花子だ。」




広い広いリビングにはシュウ君以外の弟達の屍が5体。
みんな頭におおきなたんこぶ作ってる…
そしてシュウ君はと言うと仲が悪いはずのレイジ君のお膝に頭を乗せてうつらうつらとしている。
……う、うん。みんなシュウ君を怒らせちゃったんだな。



睡眠を誰よりも愛してるシュウ君が昨日お父様の言いつけでお仕事のお手伝いをさせられるから今日は徹夜って不機嫌にぼやいてたのを思い出して引き攣り笑い。


きっと疲れ切って眠ってたシュウ君の周りでいつもの様に三つ子ちゃんが大暴れしてレイジ君がそれを大声で怒鳴りつけてスバル君が煩いって大きな音を立てて壁を殴っちゃったんだ。
そして傍ですやすや眠ってたシュウ君がマジギレしちゃったと…そういうわけか。



や、だからって完全にのびきってるレイジ君のお膝で寝ようとするのはどうかな?シュウ君。




小さく息をついて彼と向かい側のソファに腰かければ
シュウ君の表情は次第に不満気なものになってしまう。




「レイジが硬い。これだから野郎は…」



「わわわ、シュウ君?」




ながーい溜息をついちゃったシュウ君はのそのそと弟君の膝から起き上がって
そのままゆっくりと私に近付いてぽふんと膝に頭を乗せてしまった。
そして暫くじっとしていたかと思うと顔を俯せにしちゃったからくすぐったくて仕方がない。




「ちょ、シュウく…っ」



「んーやっぱり花子がいい。むにむに。脂肪がいっぱいでキモチイイ。」



「ぐぬぅ!!!」




表情は私の太腿に顔を埋めてるから伺う事は出来ないけれど
その声色はとてもご機嫌で、彼の大きな両手がむにむにと私の足を揉みだしてそんな事を言うから女子にあるまじき声が出てしまった。
た、確かに私は女だから男のレイジ君より脂肪はあるかもしれないけれどその言い方は酷いよシュウ君!!!




私の足の弾力がお気に召したのか
暫くずーっとむにむにと手を動かしていたシュウ君がもぞもぞと顔を動かし、チラリとこちらを流し目で見つめて嫌味に笑う。



「花子のでーぶ。」



「シュウ君なんてもう一生不眠症でいればいい。」



遂に彼の口から出てしまった禁断の単語に私の顔面は般若になり青筋をビキリと立てるが
シュウ君はそんな私を見てクスクスと楽しそうに笑う。



「でもさ。俺はこんな柔らかで暖かな花子がだいすきだよ。」



「………反則技を使わないでよ全部許す。」



そんな事を言われちゃ、馬鹿で単純な私はすぐに顔を赤くしちゃう。
ぎゅっと私の腰に抱き付いておなかの辺りにスリスリと擦り寄ってくるシュウ君はホントに気持ちよさそう。



「んぅ……やっぱり膝枕は花子がいい。ねむ…」



「はぁ…シュウ君、お疲れさま。」



「ん」



再びうとうとし始めたシュウ君の頭を優しく撫でれば嬉しそうに目を細めて
そのまま彼は夢の中に旅立った。
全く…むにむにと太腿弄ぶだけ弄んででぶとか言いたい放題言っちゃってさぁ…
でも、うん。
こんなに嬉しそうにされて、こんなに気持ちよさそうにされるならまぁ…そんなのも全部許しちゃえる。




けれどひとつだけ問題点が。




「どうすんのコレ。」



周りにはシュウ君の鉄拳によって伸びきってる五人の弟。
そして犯人のシュウ君は私の膝ですやすやご満悦。




「え、何この地獄絵図。」





収集が全くつかないこの惨状に私は大きな溜息を吐いたけどもはやそれまでだ。
きっとどうしようもなかったら彼らのお父さんが何とかしてくれるだろうって思って
今は足の上の最愛をひたすら愛でる事に専念した。




どうやら私はシュウ君にひたすら甘いらしい。



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