私のヒーロー
「シュウ君、私はシュウ君はやれば出来る子って信じてるよ?」
「…花子、知ってるか?現実というモノはそんな甘いものじゃない。そして俺も甘いのは苦手。」
「や、別に今シュウ君の味覚の話をしてるわけじゃないよ。」
私の最愛は真っ白な貴婦人に包まれながらもこちらをドヤ顔で見つめてそんな事を言うから
彼の代わりにいそいそと部屋を動き回りながら大きな溜息をつく。
毎度毎度の光景だけれどもうちょっと動いてくれてもいいんじゃないかなぁ?
「シュウ君が無責任ににゃんこを連れてきちゃうからレイジ君が怒っちゃったんじゃない!!もー!ベッドで寝てないでちょっとはこの子達のお世話してよ!!」
「別に連れてきたわけじゃない。勝手についてきただけだろ。…それに俺はこのシーツに抱き締められるのに忙しい。」
ぎゅっと白い貴婦人ことベッドのシーツさんを抱きこんで「絶対起きないからな」って目でこちらを見ちゃうシュウ君に二度目の溜息をついて、先程から足元に擦り寄ってきちゃってる沢山の猫ちゃん達を抱え上げて床に座る。
何とか爪とぎで傷付いた壁とか柱とかの修復もひと段落ついたし、ちょっと休憩してもいいかなぁ。
「全く…ホント無責任なんだからシュウ君は。ねぇ?そう思うよねー?」
「にゃー」
「…だから別に連れてきたわけじゃな、」
沢山の猫ちゃんのうちの白い子を抱え上げて目の前のシュウ君に対する愚痴を吐けば
可愛く返事をしてくれるこの子に顔が綻んでしまうけれど
どうしてだか次の瞬間周りにいた猫ちゃん達が一斉に私の前から逃げるように離れてしまって
抱え上げた猫ちゃんも全身の毛を逆立てて私の腕から一目散に逃げてしまった。
そしてこんな事になった原因をジトリと睨みつけて本日三度目の溜息。
「…ねぇシュウ君。私はシュウ君はやればできる子って言ったけど、猫ちゃんを威嚇しろとは言ってないよね。」
「…だってさっきからアイツ等花子に図々しいだろ。ったく、花子は気を抜くとすぐに襲われるから俺が守ってやらないとな。」
「何そのどっかのヒーローみたいな台詞格好良いね。」
やってることはとんでもなく大人げないけど、とは言えないけれど。
もぞもぞとベッドの中で動いたかと思ったらそのままゆっくりとこちらに向かってきて私の前までやって来たシュウ君は
そっと手を取って何度も優しく撫でてくれる。
「傷、ついてる。アイツ等の爪だな。…あんたに傷付けていいのは俺だけだろ。」
「ううん、でも別に痛くないし。これくらい消毒したらすぐ治ると思うよ?」
私のそんな言葉を聞いた彼は何を思ったのかそのまま徐に傷がついている指を口に含んで
傷口を舐めあげたかと思うとちゅっと音を立てて解放したけれどじっと未だに傷のある指を見て不機嫌顔。
「花子、消毒したけど傷治ってないぞ。花子の体ってポンコツなの?」
「……ねぇねぇちょっとその認識理不尽すぎる。」
不満を彼に漏らしてれば先程まで私に擦り寄ってきてた猫ちゃん達の毛を払われて
彼らの為に作業した為乱れてしまった髪も優しく手櫛で直されて近くに寄ってきている彼の綺麗な顔に思わずドキリとする。
そしてそのまま私をぎゅっと腕に抱き、シュウ君の威嚇に怯えている猫ちゃん達に宣戦布告。
「お前ら花子に手出すんなら容赦しないからな。キチンと俺の言う事が聞ける奴だけ残ればいい。…あとは、言わなくても分かるよな。」
「やだシュウ君ホントに私のヒーローみたいだね。」
くすくすと彼と猫ちゃん達とのやり取りがおかしくて笑えば
一瞬キョトンとしてたシュウ君だけれどニヤリと意地悪に笑ってそのまま私の頬にキスをした。
「知らなかったの?俺はいつだってあんたのヒーローでいるつもり。」
「ふふ、一年留年万年穀潰しダル男のヒーローとか聞いた事無いよ。」
いつも彼の弟君達が言ってる皮肉を並べれば何ともヒーローとは程遠いものばかりでまたクスクスと笑ってしまった。
けれどシュウ君は怒るどころかそのまま受け入れるみたいに悪戯に笑うばかりだ。
「一年留年のダル男マンは花子だけのヒーローだからいいんだよ。」
ちゅっと今度は唇を奪われてしまって今度は恥ずかしくなってもう何度目か数えるのも億劫になった溜息をひとつ。
ぎゅっと顔を見られまいと彼の胸板に埋めて小さな考えを巡らせる。
一年留年して穀潰してダル男な上に
最愛に手出すの早すぎなヒーローってどうなの?
チラリと彼の腕の間から見えた猫ちゃん達がこちらを羨ましそうに見つめていたので
再び恥ずかしくなって体温をあげれば、上からおかしそうに笑う私のヒーローの声がした。
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