言葉の裏側


「はぁ…また貴女はそのような格好をして…恥を知りなさい花子さん。」



「ご、ごめんなさい…」



小さな溜息の後二つ程開いていた洋服のボタンをカッチリと一番上まで絞められて少しばかりしょんぼりしながら謝罪すると
私を捉えていた真紅の瞳がゆっくりと細められてしまった。



「おや、何かご不満そうですね。」



「い、いいえ!!何でもないです、ホントに…」



「全く…いつも言っていますが少しは淑女らしくなさってください。仮にも私の恋人なのですからこれ以上品位を落とさないように。」



「………はい。」




これ以上彼のご機嫌を損ねたくなくて小さな嘘をつけば少しばかりの小言を突き刺されてそのまま何処かへ行ってしまった。
うう、これ…レイジさんに色っぽいですねって言って欲しかったから開けていたんだけどなぁ。



いつもきっちりした格好を好むレイジさんだけれど、私だってちょっとは彼に色っぽいって思われたくて少しだけ勇気をだして開けた二つのボタン。
コウ君やライト君は「鎖骨が見えてセクシーだね」って言ってくれたのに肝心のレイジさんは冒頭の様に呆れてお説教しちゃうだけだった。



もしかしなくてもこんなんじゃ全然色気を感じてくれないのかなぁ…



彼は…レイジさんはとても素敵で大人っぽくて、いつだって私はそんな彼の隣にいるだけでドキドキしちゃうんだけど
お相手のレイジさんはと言うとそんなそぶり一つ見た試しがなくて私ばっかりドキドキするのは不公平だっておもってこうやって時々さりげないお色気作戦を実行してみたりするんだけど
いつだって素早く元のカッチリしたものへと直されてそして小言を頂いて終了のパターンなのだ。



「あーあ。レイジさん…私じゃドキドキしてくれないのかなぁ。」




しょんぼりして溜息交じりに弱音を吐けばチラリと視界に入った少しばかり長めの自身のスカート。
………これでだめならもう私は色々女として諦めよう。



ぐっと唇を噛んでいそいそと針と縫い糸を手に持ってひとつ、深呼吸をした。






「…………」



「ええと、きょ、今日は暑いですね…えへへ」



「………はぁ」



数日後、早速彼の前に現れてわざとらしい会話をすれば眉間に皺を寄せた彼がとんでもなく長い溜息をついた。
そんなリアクションを見て私の顔はひくひくと引き攣るばかり。
胸元は三つほどボタンを開けてスカートは…
思い切って長さをつめて膝上15cm。



こ、こんなに頑張ったって言うのに溜息つかれてしまった!!!
花子ちゃん、女として終了のお知らせ!!!




もはやこうなってしまって彼氏に色気がない幼稚な女認定されたも同然なので
じわりと涙を浮かべてしまうが決してレイジさんが悪い訳ではない。
色気の欠片のないおこちゃまな私が悪いのだ。





「花子さん、こちらへ」



「え、レイジさ…うわっ!」




悲しくて恥ずかしくて情けなくて…
ついに下を向いてしまっていると大きなレイジさんの手が少しばかり強めに私の腕を掴んでぐいぐいと何処かへ連れていこうと
すごい力と速度で引っ張るからとても驚いてしまった。



だっていつも紳士的な彼は私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれるのに、今は完全にレイジさんの歩幅とスピードなんだもの。




「ここまでくれば安心ですね。」



「?レイジさん?一体何が…安心なんですか?」



連れて来られたのは彼の部屋で、素早くドアのカギをかけて安心したように溜息をついた彼に首を傾げる。
すると彼は何を思ったのかその綺麗な指をそっと右手のモノは大胆にあけた胸の中へ、左手は頑張ってすそ上げした短めのスカートの中へと入り込ませてきてしまった。



「れ、れいじさ…っ、な、なに…っ」



「私の大切な花子さんの肌は誰にも見せたくないのですよ。…なのに貴女はいつだってこんな…なので一度思い知らせた方が宜しいかと。」




突然の行動に驚いて上ずった声で彼の名を呼べばとんでもない爆弾発言をされてしまったので
全身がぼふんと熱を孕んでしまう。
そしてしなやかな指で優しくなぞられる度に跳ね上がる自信の体にもはや思考回路はついて行かない。




「この柔らかできめ細やかな肌は私だけのモノなのにどうして貴女はこうやって他の男にも晒そうとするのです?嗚呼、それともこうして私を煽っておいででしたか?」



「?…っ!?れ、れいじさん…そんな事一度も…っ!しゅくじょらしくないからなおせって…っ!!ひ、品位落とすなって!!!」




彼の意外過ぎる心のうちを聞かされて頭はパニックだけれど
それでも今までそんな事は聞いてないと必死に反論すればようやくピタリと指は止まってきょとんとした表情のレイジさんをじとりと睨みつける。
けれどそのお顔はすぐに綺麗すぎる笑顔へと変わってしまう。



勿論背後にどす黒いオーラは隠さないままで




「花子さん?私の照れ隠しの言葉をそのままに受け取らないで頂きたい。いつだって際どすぎる格好をする貴女を犯したい衝動と戦っていたのですから」



「お、おか…おか…っっ!!」



「申し訳ないですが私は貴女が思っているほど紳士でないのですよ。」




レイジさんの口からとんでもなさすぎる爆弾発言を耳にしてビシリと体を固めてしまう。
すると彼はそんな私の体をひょいっと抱え上げてとある場所へ迷いなく姿勢正しいままスタスタと進んでいってしまう。



あのあのあの私、レイジさんにドキドキしてほしいとは思ったけどここまでとは誰も思ってないです!!!



「れれれれれレイジさんあのあのあのこ、これはもしかしなくともええとええと…冗談ですよね?」



今から起こりうることがたやすく想像で来てしまい、彼の腕の中で顔面蒼白しながらも
一握の希望を抱き表情を伺い見るとやはりレイジさんはとんでもない笑顔だった。



「私は貴女限定で優しい吸血鬼ですので、お仕置きはベッドでして差し上げようと言うのです。感謝なさい。」



もはや私を抱く気満々なこの吸血鬼様の腕の中でじたじたと暴れてみても全然離してはくれなくて
そのままぽーいと彼の香りのするベッドに放り投げられてしまった。
そして間髪入れずに覆いかぶさってきてしまった最愛によって全ての退路は断たれてしまう。



…嗚呼もう、私今日彼にはじめてを捧げてしまうようです。




「花子さん…私を欲情させた罪とその愛おしい肌を他のモノに晒した罪…キッチリ償ってくださいね?」



「う…うう〜…せ、せめて優しく…あの」



全然効いてないと思っていた私のちいさなお色気攻撃は実は効果抜群だったようで
もう我慢が出来ないと言った様子で唇を深く塞がれてしまい、自身からも彼の背中におずおずと手を回すと
クスリと嬉しそうな声が漏れたので少し顔を赤らめてしまった。



そして熱を持った低い声が私の耳元で響き渡る。




「ええ、私は優しい吸血鬼ですから優しく…シて差し上げます。」




そっと絡み取られた指はこれから起こるお仕置きから逃がさまいと
しっかりがっちりと繋がれて、まるで鎖のようだなぁ…なんて



優しく沢山唇を落とされている中、ぼんやりと考えてしまった。



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