かわいいめすぶた


私は普通の女の子より背が高い
私は普通の女の子より声が低い



だからいつだって自分の彼氏に少しばかり罪悪感…




「やっぱり花子ちゃんって格好良いよね!!」



「あ、ありがとう…」



私より小さくてかわいい声の女の子が教室内にてキラキラした瞳でそんな台詞。
引き攣る顔を懸命に抑えて笑顔を作って感謝の言葉を述べればきゃぁきゃぁとまた可愛い声が響き渡る。
…私だってホントは皆みたいに可愛くなりたかったよ。



でも仕方ない。
この少し高い背を小さくするために足をちょん切る訳にもいかないし
少しばかり低めの声を矯正する術だって私は知らない。



…こんな可愛さの欠片もない私なんて、いつか大好きな彼に捨てられちゃうかな?



そんな少しばかり思考回路だけは唯一乙女チックな事を考えていれば不意に出来上がる影。
背の高い私を覆うくらいの影なんて周りにはひとりしかいなくて
振り向いてもいないのに心臓は静かに、けれど確実にドキリと跳ね上がる。



「はぁ?格好いいだぁ?こんなの所詮は雌豚だろ。めーすーぶーた!」



「ユーマ君。」



随分とご不満と言った感じの口調にようやく振り向けばやはりそこにいたのは不機嫌顔の最愛、ユーマ君で
私より高身長の彼を少しだけ見上げればその大きな手がぐっと私の頭を抑えつける。



「ほれ、こーんなにチビだし声だって俺の方が男前だし。所詮花子は女って訳だ。分かったかミニマム共。」


「ミニマムとか…ゆ、ゆーまく…それは失礼…」


「るせぇ!おら、行くぞ!!」



目の前の女の子に酷い事を言ってしまった彼を咎めようとしたけれど
それは遮られてぐいっと強く腕を引かれてそのまま教室から退場となってしまった。
…後で彼女達にきちんと謝っておこう。






「ったく、アイツ等全然分かってねぇよなー。花子が格好良いとか…俺の方が格好いいっつーの!」


「ご、ごめんね。」


「………、」



腕を引っ張られらまま未だに不機嫌な彼に思わず謝罪の言葉が出てしまった。
するとユーマ君はそれから暫く何も言ってくれない。
やっぱり…やっぱり可愛くないこんな私が彼女とか嫌かな?腹立つかな?



連れて来られたのは裏庭で、こんな所に連れてきてどうしたんだろうと疑問に思えば突然圧迫される自身の体に思わず目を見開いた。
…こうしてユーマ君にぎゅっとされるのはキライじゃないけど、突然すぎて心臓が持つ自信がない。



「ユーマ君…?」



「ほら、花子は俺よりチビじゃねぇか。」



「ゆー、んぅ…ん、ぁ…ユーマく…んんっ」



「声だってこんなクソ可愛い。…なんでわかんねーかなぁ。」



包み込む様に抱き締められたまま普段より柔らかい声色で、表情でそんな事を言われて顔を熱くしていれば
そのまま深く、深く唇を奪われて思わず漏れた声に満足気に微笑んだユーマ君は優しく甘い声を発した唇に指を這わせる。



「ま、こんな可愛い花子、誰にも見せたくねーけど。…複雑な気分だわ。」



「ユーマ君…ゆーまくん、」



「んー?何だよ…めすぶたー。」




その言葉で自分がユーマ君の目にどう映ってるかはっきり分かって
嬉しくて嬉しくてぎゅうぎゅうと自分から縋りつけばわざとらしく雌豚って呼んでくれる彼にじわりと涙が浮かぶ。
うん、私…雌豚だ。
ユーマ君だけの雌豚だ。




私より大きくて声だって男らしいユーマ君にとって私はちゃんと雌豚というか…女の子なんだね。



「ユーマ君ユーマ君…ありがとう。だいすき。」



「んだよ。雌豚って言われて喜んでんじゃねぇ。このドMが。」



私がどうしてありがとうって…だいすきって言ってるかなんてわかってるクセにそう言っちゃうユーマ君は本当に意地悪だ。
でも…そんな意地悪な彼も大好き。
ちゅっと背伸びして自分からキスをしてじっとその目を射抜いたまま少しばかり反撃の言葉。



「ユーマ君は、ユーマ君の事が大好きなドMの雌豚はキライなの?」



「…いーや、大好物。」



困った…ちょっとは赤くなってくれるかなって思ったのに
私の言葉に少しきょとんとした後にその意地悪な笑みはますます深くなってしまってそのまま首筋に牙を宛がわれてしまった。



「精々いい声で啼けよ?」


「あ、んぅ…んっ」


「っは…これのどこが格好いいんだか…やっぱ雌豚共の考えはわかんねーわ。」



ぷつりと皮膚を破かれ、入り込んできたそれに
控えめな声を出せば喉で笑われてそんな事を口にしてしまったユーマ君に全身が熱くなる。
それが恥ずかしくてぐっと彼の頭を抱え込めば「欲しがってんじゃねぇよ淫乱」なんて言われてますます熱い。



「ユーマ君の馬鹿。すき。」



「知ってるっつーの。ばーか。」




小さな悪態さえも意地悪な彼に飲み込まれてそのまま身を委ねてしまう。
嗚呼、何だか彼と…ユーマ君と一緒に居る時の自分は他の女の子達と同じように可愛い気がして
実は案外嫌いじゃないかも…なんて思ってしまっている。



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