裏まで愛して
花子さんはいつも穏やかで笑顔が絶えないね。
ホント、羨ましい。
悩みなんてないんじゃないの?
「あはは、温和だけが取り柄ですから〜」
…んな訳あるか。
私だって腹が立つこと位腐る程あるってば。
営業用の笑顔の下、小さく舌打ちをして再び仕事再開。
嗚呼、今夜も私の愚痴祭りは過激になりそうだ。
「ってなことがあってね!?ああもう、本当に腹立つ!!殴りたい!!」
「ふーん…ていうか花子ってホント…くくっ」
「何よシュウ。猫かぶりの私がそんなに滑稽?ん?」
片手に酒を持ってうまく回らない思考回路でも先程の発言がイラッと来たので
そのまま最愛の胸にぐりぐりと頭を擦り付けて不満を漏らせば「ごめんごめん」と軽い謝罪がかえって来た。
それさえもムカついたのでその肌蹴た胸板にがぶっと噛み付くと「酒飲んで発情したのか」と言われてもういいやって思いそのまま彼から離れて再び酒を口にする。
私はいつだって会社やプライベートでは温和で優しい花子ちゃんだ。
でもたまに、こうして普段の不満が爆発する日だってある訳で…
そういうときはいつだって酒とつまみに最愛の気の抜けた相槌片手に愚痴祭りを開催してしまう。
「んんんもおおおお!!!腹立つ!!!マジ腹立つ!!!」
「ふーん…くくっ…そっか…うん、くくくっ」
「…シュウさっきから嬉しそうね。何、どうしたの。」
よく分からないけれどさっきから私の愚痴を聞いているシュウはとても嬉しそうに微笑んでいるのでその真意を問う。
普通ならこんな愚痴聞かされたらうざそうな顔をするのが常だと思うのだけれど
今のシュウはそんな表情とは正反対だ。
本当に…本当に嬉しそう。
「だって花子がこんな愚痴るのって俺の前だけだって思うと何か…くくっ。独占欲っての?そういうの満たされてさ…嬉しい」
「………なにそれ可愛いなキスさせろ。」
思いもよらないシュウの可愛い発言に酒で酔いまくってる私は座った目のままがしっとその綺麗な顔を両手で挟んでそのままちゅーっと彼の同意もなくキスをしてしまった。
するとそのままそっと後頭部を押さえられてしまってそのキスは次第に深くて濃厚なものへと変わっていく。
「んぅ…しゅ、んん…っ」
「ん…はぁ…酒くさ。」
ゆっくりと離れた互いの唇から厭らしい糸が引かれていてとても扇情的だったけれど
しかめっ面なシュウの口からムードぶち壊しな言葉が聞こえたので大きな声で笑ってそのまま彼の腕の中へと収まる。
「あーもーむかつく腹立つぶっとばしたーい」
「それは誰?上司?同僚?それともオトモダチ?」
たれ流れる私の悪態にもうどうしようもないなと言う感じの苦笑が降ってきてゆるりと頭を撫でられるとふわりと安堵感が体全体を包み込む。
そうだよ。私がこんな愚痴や悪態をつくのはシュウだけ…
どんな私でも愛してるよって言ってくれたシュウの言葉を信じたからこうして自身の醜い部分もためらいなく曝け出せるの。
「2000年以上生きてるクセにこんな腐ったお世辞大国日本を野放しにしたヴァンパイア王を殴りたい。」
「まさかの親父に八つ当たり。」
私の発言がツボに入ったのはクツクツと笑いをこらえているようで堪え切れてないシュウの声が部屋に響く。
そして瞼に落された唇はもうおやすみの合図。
「んんん…まだお風呂入ってない。」
「寝てる間に俺が入れてやるよ。」
「……無気力ダル男のシュウが私のお世話とか。…終わった、私人間として終わった死のう。」
「はいはい、死ぬなら俺の上で死んでくれ。…おやすみ。」
さらりとセクハラ発言をされて反論しようとしたけれど
その言葉は優しいキスで飲みこまれてしまいそのままふわりと意識を夢の中へと手放してしまった。
酒によって火照った体が冷たいシュウの体に包まれてとても心地よい。
嗚呼、きっと次に意識が戻る時、私は体も綺麗に洗われて可愛いシュウの好みのパジャマを着せられていて
この大好きな腕の中で目を開けるのだろう…
何だかんだで彼の言葉全てを信じてしまってる自分が酷く恐ろしい。
もし…もしシュウに「全部嘘だった」なんて言われてしまえばその時点で私は発狂するんだろうなぁ…なんて
そんな酷く恐ろしい仮定を頭の中で組み立てて、本格的に意識を闇へと落とす。
ねぇシュウ。
お願いだから嘘だなって言わないでね?
どんな私でも愛してるって貴方の言葉、ずーっと信じてるからね?
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