愛してた?


「ライト君はどうして私だけを見てくれないの…?」



「花子ちゃん?」



突然のそんな言葉に目を見開いて驚いてしまった。
瞳には沢山涙をためてしまってるし声だって震えている。
おかしいなぁ…僕は溺れてしまうくらい君を大事にしてきたつもりなんだけど。



「どうしてそんな事を言うの?」



「だってライト君…他の子にも好きって…」



「なんだそんな事。」




彼女のくだらなさ過ぎる理由に思わず呆れて溜息と共に言葉が零れると
同時に彼女の瞳からもポタリと涙が零れた。
だって仕方ないよ。
皆“だいすき”なんだもの。



「ねぇ花子ちゃん。花子ちゃんにだってオトモダチとか沢山いるじゃない。どうして僕だけを縛ろうとするの?酷くない?」



「違う…違うじゃない。私の友達とライト君の彼女達は違うじゃない。」



何度も首を横に振ってしまう彼女に少しばかりの苛つき。
何が違うって言うんだ。
彼女の言ってる意味が分からなくてもう一度深い溜息をつけばビクリと揺れてしまうその体に笑っちゃう。
うん、そんなに言うならもうここで終わりかな。



「じゃぁもういいよ。今までアリガト。ばいばい。」



「ライトく…っ」



「ごめんね花子ちゃん。僕には花子ちゃんの、というか人間の愛が分からなかったみたいだ。んふっ♪」




もうこれ以上その彼女の言っている僕との違いを考えるのが一番上の兄じゃないけど面倒になって早々に二人の関係を断ち切って普段の語尾を付け足してその場を後にする。


大体そうだよね。


僕の事だいすきって言ってくれる割にはこうして三か月もたたない間にみんな同じことを言って泣いちゃうんだ。




その度にさよならって言葉を紡ぐ僕ってとても優しくて可哀想。




僕の価値観を分からないならもうそれでいい。
無理矢理押し付けようとはしない。
でも代わりの僕だって花子ちゃん達の考えを受け入れる気にもならい。




「僕の事を縛りたいなら自分も全て捨てればいいのにね。」




その言葉は誰にも聞かれる事はなく闇に消えたけれど正論だって、思ってる。
皆自分だけを見て、私だけでしょうって煩いけどさ…
でもそんなキミたちの周りには沢山の友達や無条件に愛してくれる親だっているじゃないか。
けれど僕は何も持ち合わせていないのに…それで自分だけを見ろだなんて酷過ぎる。



僕だって君達みたいにたくさんの誰かに“あいされたい”んだ。




「僕は間違ってないよ」




小さなその言葉は自身を肯定して慰める。
そう、僕が悪い訳じゃない。
僕が間違ってるわけじゃない。



沢山の愛を持っているクセに相手に一筋を求める彼女達がきっとおかしいんだよ。




「あーあ。誰か僕を受け入れてくれないかなぁ…」



その言葉がどうしてだか震えて
頬に冷たいモノが流れた理由は自分でも分からない。




分からないけれど、何だか…
彼女の…花子ちゃんの最後の表情が頭から離れることは暫くなさそうだ。




「“愛してたのに”みたいな顔しちゃってさ…」



愛したら必ず同等の愛をもらえるだなんてそんなの絵空事だ。
ましてや想いが通じ合った所でそんなのありえない。
どちらかの愛が重いのは必然だ。同等の愛なんてこの世に存在しない。



けれど今、花子ちゃんの想いに応えることが出来なかった事実に胸が痛いのはどうしてだろう。




「ごめんね、こんな僕で」



こんな事、思った事一度もないのにどうしてだか言葉にしてしまって自分が分からなくなる。
嗚呼、本当におかしいのは僕なんだと…
いい加減認めてしまいそうで本当に怖いよ。




悪くない
僕は悪くない。
悪いのは君達だ。



何度も何度も胸の奥で呟いた暗示が花子ちゃんの涙で解けかかっている。




嗚呼、もしかして彼女が僕の初めての最愛というモノだったのだろうか…




そうであっても違っていても
全てを断ち切った今ではもうどうせ遅すぎるのだけれど…



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