お花マジック
我々は偉大な始祖。
そして私は威厳溢れる始祖王。
それは今まで誇りに思ってきたのだが…
これ程までにその偉大さと威厳が煩わしいと思った事はない。
「ええと、花子。そろそろそこから出てこない?」
「やだ。出ていったら食べられる。頭から。がぶっと。」
「ああもう!だから!!花子の血は兄さんは吸うけどそこまで怖い生き物じゃないって始祖は!!大丈夫だって!!」
「やだぁぁぁ!!!か、カルラさんって王様なんでしょ!?絶対怖いもん!!私怖いの嫌なの!!!」
シンが懸命にカーテンにくるまってこちらを見ようとすらしない花子をぐいぐいと引っ張るが
大きな声で泣き叫んで離れまいとカーテンに縋り付いてしまっているのでビリビリと悲し気な音を立ててそれが破かれる。
…流石に最愛にここまで怯えられてしまうと始祖王といえど少しばかり傷付いてしまうのだが。
「花子」
「ひぃ!」
「…………。」
…名を呼んだだけじゃないか。
どうしてそれだけで更に涙を浮かべてビリビリになったカーテンを抱き締めるのだ。
そんなに私は怖いのか…?
チラリとシンを見れば只困ったように笑うばかりで私の顔は怖くないと否定をしてはくれない。
………傷付いた。
「花子、私は恐ろしい生き物ではない。ホラ、」
「いやいやいやだって何か吸血鬼君達に下等種とかその他もろもろ怖い事言ってましたよね私知ってますよ!?」
「………。」
「に、兄さん!!頑張って!!」
何を頑張れと言うんだ。
怖いモノが死ぬほど嫌いと言う花子の為に膝を折り、怯えきって床にへたり込んでいる彼女の視線に合わせてやってもこの言われようだ。
誰だ始祖王は威厳に溢れ誰よりも強く吸血鬼達など足元にも及ばない素晴らしい者だと言った馬鹿は私だ。
今更自身の発言と行動に酷く後悔したがもう遅い。
最愛である花子は相変わらず私に怯えて目すら合わせてくれない。
困った。
これではいつまで経っても花子と愛し合う事も出来ない。
……そもそもまだ告白さえさせてはもらえてないが。
「花子」
ぽんっ
「!」
困り果てた私が起こした一つの行動。
可愛らしい音と共に私の手に現れたのは一輪の小さな花。
このようなものを出現させるのは数々の魔法を網羅している私にとってはどうという事ではないのだが
これによってようやく花子が驚きでこちらを見てくれたのでひとつ、安心の溜息をついた。
「カルラさん…これ、」
「嗚呼、もしかして気に入ったのか?では、」
ぽんっ
ぽんっ
ぽぽぽぽっ
「わぁ…!すごい…!!」
彼女の瞳が驚きの色から嬉しそうなものへと変わったのを確認して
花子は花が好きなのだと解釈した私は次々と沢山の女が好きそうであろう花を出現させていく。
すると先程まで怯えきっていた花子の表情はいつの間にかキラキラと輝いたものになっていた。
嗚呼、私はこの表情が何よりも好きなのだ。
「ほら、私は怖くないだろう?」
ばさりと、沢山出した花々を彼女の両腕に放り投げれば
その顔は更に輝いて、ニッコリ柔らかい笑顔になってくれた。
…魔法というモノは威厳や優秀さを表す為だけではなく、こうして誰かを喜ばせるために使う事もあるのだな。
「はい!カルラさんはとっても素敵なひとです!!」
その言葉が意外にも嬉しくて穏やかな気持ちになれば花子の目が見開かれてずいっとこちらに顔を近付ける。
そして「カルラさんの笑顔ってとっても可愛いんですね!」なんて言われてしまったのでそこでようやく自分が笑っている事に気付き、照れ隠しに大きな咳払いをしてしまった。
「うーん…これから二人の間もお花畑になりそうな予感。」
後ろからそんなシンの困った声が聞こえた気がしたが、
今はそんな事よりもようやくスタートラインに立てた事をひとり、心の底から喜ぶとしようか。
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