どこがすき?


「花子は俺のどこが好きなの?」



「え?」




今日も今日とてシュウ君をぎゅうぎゅう抱き締めてその綺麗なお顔に頬擦りしたり
ふわふわな髪に顔を埋めて柔らかな香りを堪能したり
たまにちゅっとこれまた綺麗すぎる唇にキスをしたりと好き放題していれば不意に紡がれたそんな言葉にピタリと動きを止める。



すると私の腕からするりと抜け出した彼がじっとこちらを見つめて先程の言葉の続き。



「花子は毎日俺の事好き好き大好き愛してるって煩いけど…具体的にはどこが好きなんだ?」



「ど、どうしたのシュウ君突然。」



「俺は、」



形勢逆転と言わんばかりに今度は私がシュウ君に抱き締められてしまって
そのまま先程まで好き放題してた唇が頬に優しく押し当てられた。



「シュウく、」



「俺にキスされてそうやって真っ赤になる花子が好き。」



そしてふわりと胸元に触れる大きくて冷たい手に
私の心臓はドキリと大きく跳ね上がる。



「俺に好きって言われると煩くなる花子の心臓も好き。」



そしてコツンと額と額を合わせられて、先程よりももっと近くになってしまった彼の瞳に思わず吸い込まれそうになる。
…さっきより絶対体の熱、上がってる。



「自分からは平気なのに俺から近付くと可愛くなっちゃう花子が好き。」



「う、うぅ…う」



意地悪に微笑んでるのに何処か慈愛に満ちたその笑顔から目を背けることは出来ないけれど
もうこのままじゃ心臓持たないって思って、彼を見つめながら何度も首を横に振る。
けれど彼は私の手を取って指を絡めて離そうとはしてくれないのでもう逃げるに逃げれない。



「ほら、花子…花子は俺のどこが好き?」



「……………えっと、」




……………。




暫くの沈黙。
目が泳ぐ私。
笑顔から次第に真顔になっていくシュウ君。



そして離れていく彼の腕に私は大慌てで叫び散らす。



「ごごごごごめん!ごめんなさいシュウ君!!だってだってあり過ぎてどこから言えばいいか分かんないんだもん!!」



「煩い許さないからな。どーせ顔とか体しか思い浮かばなかったんだろ馬鹿花子」



「う、うわああん!拗ねないで!!拗ねないでよシュウくーん!!血あげるからぁぁぁ!!!!」




もぞもぞとベッドにもぐりこんでひょっこり目だけシーツから出してじとりと睨まれてしまったので
必死に弁解するけれどシュウ君は怒ったままベッドから出てきてくれない。



暫くベッドのシュウ君と私とでこう着状態が続いてしまったけれど
シュウ君のじと目が私のガラスのハートに突き刺さりまくって悲しくて、遂に自身の涙腺が崩壊してしまえば
不意に聞こえた長い溜息とベッドへと引き摺り込まれる私の体。



「シュウくん?」



「…ほら、言って?…俺の好きなとこ、沢山あるんだろ?」



すぽんとシーツから顔を出せば困ったような彼の顔が間近にあって
ちゅっと流れていた涙を唇で掬い上げられた。
そしてじっと私の言葉を待ってくれるシュウ君に私の顔は単純に笑顔に変わる。



「うん!今夜は寝かせないからね!!」


「…自分の好きな所を上げられるだけで寝かせてもらえないのか。」


「えっとねえっとね、シュウ君の可愛い寝顔はデフォルトで大好きでしょ?それから…」



クスクスと笑いながらもシュウ君の好きなとこを指折り紡いでいく私を見まもってくれる彼に応えようと必死に沢山あげていく。
待っててね、シュウ君!
私頑張ってシュウ君のすきな所全部言っちゃうんだから!!!



静かな夜、シュウ君の部屋に私の盛大な愛の言葉だけが響き渡った。






「な、何でシュウ君怒ってるの?私、全部言ったじゃん。」



「………だって花子が好きな俺が100%可愛いとことか…もうなんか男としてのプライドズタズタッていうか。」



「えええええだって仕方ないよシュウ君可愛いんだもんほらほら今日もぎゅってさせてよ」




本当に一晩かけてシュウ君の好きな所を挙げまくった次の日、またじとりとこちらを睨みつけてベッドから出てきてくれなくなったシュウ君に問いかければまたまたそんな可愛い事言っちゃうので
今度は涙を零す前にぎゅっとシーツごと彼を抱き締めてすりすりと頬を寄せてみる。



「…なんだよ。俺は格好良いだろ。」



ようやく顔を出してくれたシュウ君はぶすって不機嫌な顔だったけれど
それでもやっぱり好きな所を沢山挙げられて嫌な気分ではなかったのかその表情はどことなく嬉し気。


そんな可愛い彼を目の当たりにして私は気を利かせて「うんそうだね、シュウ君格好いい」なんて言えるほどできた女ではなかった。




「ほら、やっぱりシュウ君は可愛い!!!」





結果、シュウ君がベッドから出てきてくれるまで二週間かかってしまった。



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