甘い冬


寒い…
本当に寒い!


だから冬って大嫌いなんだ!!!



ガタガタと体を震わせて恨めし気に白い息を吐く。
もう体は寒さでガッチガチだ。
もともと寒さに弱い私は毎年この季節になるとこんもり雪だるまのように何枚も厚着を重ねるけれど…




「それでも寒い!!」



「…………へぇ、花子…寒いのか。」



「ひぎゃぁ!」




どこか楽しそうな声と共に抱きしめられた体に
いつもなら歓喜の声を上げるけれど今出してしまったのは色気のない断末魔。
だって仕方がない。



私の最愛には体温がない。



「さささささ寒いです寒い!離してくださいシュウさんっ!!」



「いやいや俺は愛しい愛しい花子とひとときも離れたくないんだよ…くくっ」



「ときめく!ときめくはずのそのセリフが今は死刑宣告にしか聞こえません!!」




冷たすぎる彼の腕の中でじたばたと大暴れしてみても
その腕は私を締め付けるばかりで声だってますます楽しげなものへと変わっていく。
ぽてっと肩に乗せられた彼の顔はそりゃぁもう面白いおもちゃ見つけましたって顔でニヤニヤとしちゃっている。



こ…このドS吸血鬼め!!
普段なら抱きしめてくれもしないくせに私が寒がってるのが面白いからって!!!




「いやだぁぁぁ!!寒い!!寒いよおおおお!!!」



「嗚呼、花子…こんなにも…こんなにも愛しているのにどうして俺の気持ちを受け入れてくれなぶふっ」



「笑ってる!!笑ってるじゃないですかシュウさん!!トキメキ台詞最後まで言えてない!!」



ぎゅうぎゅうと強く抱きしめられればその分彼と触れる面積は広くなるわけで
必然的に私の体は大げさにガッタガッタと揺れて寒さを紛らわせるためにぎゃんぎゃん喚けば紡がれる甘い台詞。


しかし私の反応が面白すぎたのかそのセリフさえも中途半端にシュウさんは私の肩に顔をうずめて吹き出し体を小刻みに揺らす。




だ、誰のせいで…誰のせいでこうなったと思ってるんですか
ていうか笑いすぎですからね!!!




私の行動にバカウケしてる最愛にぶっすーと不機嫌顔になってれば両足がふわりと宙に浮いた。
え、なに…?いきなりどうしたの?
自身の状況が把握しきれずぽかーんとしてればどうしてだか先ほどまで私の肩にうずめていたシュウさんの顔が少し上の方にあった。



「シュ、」



「んー?」



「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!!」




気が付けば私の体は彼に横抱きにされていて
どういう風の吹き回しだと思い、戸惑い気味に彼の名を呼ぼうとしたらぎゅうとそのまま体を抱きこまれてしまいまたとんでもない断末魔。



死ぬ!!!大好きなシュウさんに抱き締められて死ぬ!!
いや表現だけだとても幸せそうな響きだけれどそんな甘々な感じじゃないしコレ!!




「殺される!!シュウさんにぎゅうってされて殺される!!」



「は?花子は俺に抱きしめられて死んじゃうの?すげぇ幸せ者だなあんた。」



「あああああああさむうううわああああ!!!」





私の悲痛な叫びにやっぱり彼は嬉しそうに笑って
頬や唇にたくさんキスを落としてくれるけれど例にもれずその唇だってすごく冷たい。
いつもなら嬉しくて顔ゆるんじゃうけど今日はその愛情表現さえも拷問だ。




なので彼の足が普段寒がりな故にいつだって暖かい室温に保たれている彼の部屋に向けれられているとか
その足取りが普段よりずっと早いものだという事も気付く余裕なんて全然なかったのだ。




シュウさんは私でよく遊ぶけれど
こうして誰よりも甘く接してくれているのでホント、嫌いになれない



この後寒かった分、部屋でめちゃくちゃ暖められてしまったのは言うまでもない。



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