唇一つの魔法


「弟滅びろ」


「…何だいきなり物騒すぎるぞ花子弟達は俺が守る」


「黙ってお兄ちゃん!!!」



私の地を這うような声にとても冷静に返してくれた大好きで大好きでたまらない愛しのルキ君にバンバンと床を叩いて大抗議。
現在ルキ君はキッチンで絶賛お料理中。
そして彼女である私はそんな部屋の隅でゴロンと寝転がり拗ねまくり中である。



「何が“クリスマスパーティやった事ないから今年はみんなでやろうよ”だコウ君のバカ何で今年に限ってそんなやる気満々なんだルキ君を巻き込むな」



「仕方ないだろう。コウだって悪気があった訳ではないだろうし…俺だって家族とこうして過ごせるのは嬉しい」



「やだルキ君家族想いそんな所も愛してるすき…じゃない!!流されないぞ!!私は!!クリスマス!!!ルキ君と二人きりでいちゃいちゃしてらぶらぶしてあわよくばエロい事がしたかったのに!!!」



「喧しい」



じたばたと隅っこで大暴れしていたらピシャリと咎められてしまい押し黙る。
普通の女の子なら大好きな彼氏に怒られてしまったらしゅんとなるのだろうが今回の私はそうはいかない。
とんでもない不満……そう、不満顔なのである。



今回は私とルキ君が付き合うようになってから初めてのクリスマス。
だからこう…二人きりで甘ーい時間を過ごせるとちょっと…いやいやかなり期待していたのだ。
「プレゼントは花子……お前がいい」といつ言われても構わないように勝負下着だってバッチリだっていうのに…
………下心があるのは男だけだとは思わないでいただきたい。



なのに…なのに…!



さっきコウ君がバカな提案をしたせいで
今ルキ君は家族分のクリスマス料理作成で大忙し。
リビングではその弟たちが張り切って飾り付け真っ最中。
……ユーマ君もアズサ君も私に気を利かせてコウ君の提案を却下すればいいのにノリノリやめてよ仲良し家族めそんなとこも好きだけど今日だけは呪いたい。




「……弟君たちはもっと私がルキ君に抱かれるように配慮すべき。」



「彼氏にセクハラまがいな独り言を聞かせるな。」



ぐずぐずとぐずりながら弟君達への不満を漏らしていれば先程までキッチンへ向かっていた彼の声がすぐ上から聞こえたので見上げるとあきれ返ったような表情のルキ君が私を見下ろしていた。
…その表情はくだらないこと言ってないでとっとと出来上がった料理をリビングまで運べ家畜がって事ですねわかりましたくそう運んじゃう。




お兄ちゃんとしては満点、彼氏としては鬼畜な最愛の無言の圧力に負けて
しょんぼりしながら豪華な料理を手にもってよたよたとリビングに向かう。
うう……付き合って初めてのクリスマスなのに…寂しい。



「嗚呼、花子…忘れものだ」



「え、何ルキく……」



背後から呼び止める声が聞こえたので素直に振り返る。
どうしたのだろう…ソースとか忘れちゃったのかなって思って。
けれど彼の指す「忘れもの」は料理のソレではなくて…




「………る、る、る、ルキ…ルキく…ルキ、ル!!!」



「両手が塞がっているときにしておかないと今日のお前は俺に襲いかかてきそうだからな」




してやったりと意地悪に笑う彼の表情とは対照的に私の顔は今非常に赤くて複雑なものになってしまってる。
奪われた……両手の自由が利かないときに唇奪われちゃった!



「ああああルキ君!ルキ君抱いて!!今すぐに!!」



「俺の渾身の料理を落としたらそれこそ今夜パーティが終わった後もお預けだからな」



「ひぃん!この鬼畜参謀!!そんな所もすき!!めちゃめちゃ慎重に運んじゃう!!」



不意打ちの彼からのキスで舞い上がりまくった私は小刻みに震えながら今すぐ抱いてくれと懇願するが
無慈悲で意地悪な彼は何事もなかったようにしれっと返してきちゃう。
けれどもう私は部屋の隅でまるまってグチグチと文句をいう事はない。




だってその言葉…そういう事でしょう?




「弟たち!!私の最愛、ルキ君が家族愛を込めて作った料理を持ってきたよ!!5秒で食べろ!!」




バーンとリビングの扉を足で蹴破って喜々と大きな声を上げる。
ルキ君の料理を落としたらパーティが終わった後もお預け…
それはつまり、イイコで家族パーティ付き合ったらその後はめちゃめちゃに抱いてやるって意味だもんね!!




先程までめちゃめちゃ不機嫌だった私がとんでもない笑顔で入ってきたから
弟君達は一斉に首を傾げるがもはや私の笑顔は止まらない。




彼らのお兄ちゃんってすごい。



だって唇ひとつで私をこんなにもゴキゲンにしてくれる
魔法使いみたいなひとなんだもの!



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