息抜きの口実


「嗚呼、今年も私頑張った。とても頑張ったよね、うん。」



「…………」




さっきからずっとこれなのだが彼は私にどういった反応を望んでいるのだろうか。
此処はエデン。
先程からいただいている紅茶がとてもおいしい。
同じく置かれているお茶菓子だって絶品だ。
しかし…しかし私はいま困惑しているというかもう困惑しかないどうしたらいいんだ。




「えらいと思わないかい?花子。」



「は………はぁ」



「…………反応が薄いよ。」




先程から自分を褒めたたえる言葉が絶えないお茶の相手。
期待に満ちた瞳で問われ、思わず曖昧な返事を返せばその綺麗な眉はしょぼんと垂れ下がってしまった。
……何を期待してるんですか王様、庶民の私にはさっぱりです王様、ていうかいきなり呼び出して今年一年の貴方の頑張りを先程から聞き続けて2時間です王様。




今日はクリスマス。
しかし別に恋人なんていない私はいつも通りの日常を過ごそうと思っていた。
別にそれが悲しいとは思わないし辛いとも思わない。
だってクリスマスって言っても今年は普通の平日だし私もちょっとは人並みに小さなケーキ位用意して私なりに楽しむ気満々だし…
そう思ってケーキを買いに行こうと家を出た瞬間、彼の使い魔に確保されてしまい今に至るというわけだ。




「何なんですかカールハインツ様。さっきからずっと…アレですか頑張ったで賞みたいな金の折り紙でメダルでも作ってあげましょうか?」



「紙なのにメダルを作れるとか花子は錬金術師なのかい?」



「あ、ごめんなさい失言でした忘れてください今すぐに。」



いい加減疲れてきたので小さな冗談を言えば
やはり庶民感覚がない王様はとても重たく受け止めて食いついてしまったのですぐに訂正さてもらった。
なんだよ只の人間の私は錬金術師って。
どっかのファンタジーの世界か…って目の前の王様も十分ファンタジーな存在だった。




「あーあ、花子がなかなか認めてくれない。」



「……何を認めて欲しいんですか。」



「………反抗期の息子6人を見守りながら4人の息子同然の子達にも接して計画が失敗する度に時間を戻しながら吸血鬼界と人間界の政治もこなしてきた私はえらいだろう?」



「………なんか今日はすっごい自己アピール激しいですねホント。」



ついに机に顔を突っ伏させてしまった彼からでたうざすぎる自己アピールに思わずため息が出てしまった。
いや、うん偉いというよりかはすごいとは思ってる。
先程本人の口から出たようなこと、本当にカールハインツ様だからできることで
正直いつだって尊敬はしているのだ。



けれどいつもならこんな事言わないのに今日は本当にどうしたのだろう。




彼の真意が知りたくて、ひたすらに言葉を待っていれば
突っ伏したままの王様から可愛すぎる理由が紡がれてしまった。



「私は彼と…サンタとは友人ではないから。」



「は?」



「いい子にはプレゼントをくれるんだろ?彼。」



「………………何なんですか2000歳軽く超えておいて今更サンタさんにプレゼント強請る為にさっきまでイイコアピールしてたんですか可愛すぎも大概にしてくださいよ王様。」




チラリと見えた金色の目でそんな事訴えてきたので
思わず飲んでた紅茶を吹き出してしまった。
なんだよ王様可愛すぎかくそう。
……けれど、うん。
ようやくその言葉の真意を見つけ出す事が出来たので私はガタリと椅子から立ち上がりじっと神にも等しい存在を見下ろした。




「ケーキはちょっと奮発して地元の5号位のホールケーキです。」



「奮発しても小さい!」



「シャンパンはコンビニに売ってるキャラもの位がちょうどいい」



「ク、クリスマスなのにコンビニ…!取り寄せとかは一切しないのか…!」



「レンタルショップでクリスマスソングでも借りてきましょう」



「もはや買う気すらない!!どこまでも節約…やはり庶民は素晴らしいね!」



私の一言一言に彼の表情は次第に明るくなる。
ホントにこんな過ごし方でいいんですか王様…貴方ならもっと優雅な過ごし方があるでしょうに。
彼が言いたいことはつまりはこうだ。



「こんなに一年頑張ってきたのだから今日くらい息抜きしたい」



そしてわざわざ出かける直前の私を連れてきてここまでアピールするということは
今日、彼は庶民的なクリスマスをご所望という事で…
こんなくだらない理由付けでもしない限り息抜きができない王様に軽く同情してしまう。



しかし、お貴族様の…というか王様の考えることはよくわからない。
けれど…私もこれでクリスマス、ひとりぼっちはまぬがれそうだが相手がちょっとビッグすぎるのが難点だろうか。




でもまぁ…




「花子、花子、プレゼント交換もしてみたいよ。こう…歌いながらくるくる回す奴。」



「…………二人で歌いながらくるくる回すってなんのプレイですか。」




小さなホールケーキやCDレンタルの為にエデンから足を踏み出し
隣でワクワクしている王様はどちらかというと…うん、




只のお茶目おじさんみたいでちょっとかわいいと思ってるのはナイショの話。



戻る


ALICE+