あの花はどこに咲いていたっけ

リナリア


授業が始まっても戻らない私の想い人は今日もサボりのようだ。また屋上か、それとも保健室か。将又女のところか。よくサボっているが桐皇が彼に猛アプローチをかけてこの学校に入学してもらったらしく、ある程度の我が儘は通るようだ。勉強面に関しても赤点を回避すれば文句を言われないと言っていた。なんたって強豪バスケ部期待のエース様だから。今日は天気が良いから居るなら屋上かなと思い階段を登るとほんの少し扉が開いていた。当たりだ。

「大輝ー?」

少し探すがパッと見つけられる位置にいないとなると貯水タンクの上か?

「大輝みっーけ、ご飯の時間だから降りといで」

「んー?あー、名前?もうそんな時間か?」

「お昼持ってきたよ」

一年の時に同じクラスになりお弁当を分け与えてから彼に懐かれて今に至る。二年になってもこの関係は変わらなかった。

「今日は何?」

「ハンバーグ」

「チーズは?」

「入ってるよ」

「うっし」

小さく手を合わせて黙々と食べる大輝を見ると今日も満足してもらえたようだ。昼食を食べた後は授業が始まるまで近況報告をしあう。

「お前彼氏できたんだって?名前の癖に生意気」

「そういう大輝だって彼女いるじゃん」

「この前別れた」

「はー?今度は何で?」

「名前より飯が旨くなかった」

「それ本人に言ったの?」

「言った」

「信じらなんない」

嘘、そんなこと一ミリも思ってない。嬉しい。好きな人に料理が美味しいと肯定される気分は最高だ。大輝の元彼女には悪いが当て馬になってもらったようだ。私はいつからこんなに性格が歪んでしまったのだろう。最初は純粋に好きで付き合いたかっただけなのに関係を壊したくなくて、踏み出せなくていつの間にか彼女を作った彼にどうしようもない怒りと悲しみを感じた。臆病な私がいけないのに勝手に怒って悲しんで挙げ句の果てには寂しさを埋めるために適当に彼氏を作り続けている。彼氏がいたところで大輝と一緒にいる時間より勝ることはなかった。虚しいだけなのはわかっているが辞められない。

「じゃあ今の大輝フリーなの?」

「彼女はな」

「なにそれ意味深」

「セフレはいる」

「どんな子?」

私たちの関係は友達以上恋人未満。一線は超えていないが異性としてはそれなりに仲が良いと自負している。彼のセフレという女の写真を見せてもらうが余り可愛くない。下を見て安心するなんて本当に性格悪いな私。

「いつもとタイプ違うじゃん、何が良かったの?」

「おっぱい」

「またそれー?」

「こいつ顔はまあまあな癖におっぱいはGあるんだぜ」

「色んなプレイできるじゃん」

大輝も顔はまあまあだと思ってるんだ。顔より胸派の彼はある程度のラインをクリアすれば言い寄って来る女を拒んでいない。だが去るもの追わずで長続きはしていないみたいだ。私にとってそれが唯一の救いだが。

「それよりお前の彼氏見せろよ」

「大輝よりは格好よくないよ」

そう言って最近できたばかりの新しい彼氏を見せれば俺の方がイケメンだなと鼻で笑った。本来なら怒るところだろうが大輝のほうが格好良いのは事実でこんな態度も可愛いと思える。恋は盲目なんてよく言うがまさにその通りだ。

「じゃあ今の彼氏くんとは別れてイケメンの大輝くんと付き合おうかな」

「じゃあ俺もセフレとは切って可愛い名前ちゃんと付き合おうかな」

男女の話になると結局いつもこの冗談を言って冗談で交わされる。本当に彼と付き合えればどれだけ幸せなことか。でも想いを伝える意気地も無ければ、人の想いをもて遊んでいる私には幸せになる権利など無いのだろう。

キーンコーンカーンコーン

「ほらチャイム鳴ったし戻るよ」

「ねみぃ」

「三限サボったんだから次は出なさい」

「ッチ」

「舌打ちすんなガングロ」

「貧乳」

こんなにもくだらなくて幸せな毎日が永遠と続けば良いのにと思いながら私たちは教室へ向かった。


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