ウェンティが空いた酒瓶をマイクに見立てて宣言し、わあ、とフロアが歓声をあげた。しかしここにはミラーボールもスポットライトもなく、あるのは酒と料理と眉間を押える店主とべろんべろんに酔った男たちのみである。暑苦しさとむさ苦しさが絶妙な塩梅で同居する空間において、唯一酒を飲むことができない旅人と赤髪のバーテンダー、そして場を仕切っている少年吟遊詩人の姿は些か浮いている様にも見えた。
要は在庫処分だ。
ワインに賞味期限が無いとはいえ、飲み頃を過ぎた酒をモンド随一のバーが提供するだなんて言語道断だ。少量であればサングリアや料理酒等に活用できるが、とりわけ今回は量が多い。そこでもはや常連になったウェンティたっての希望で、そうした正常価格で出せない酒を格安で振舞う席が用意された。多少飲み頃が過ぎていてもアルコールさえ摂取できればいいモンドの飲んだくれと、とりあえず酒を消費したい酒屋がマッチングした結果だった。そうでなければこんな乱痴気騒ぎ、早々にディルックがつまみ出している。
「ルールは簡単! ここにある酒を飲んで飲んで飲みまくって、最後まで酔いつぶれなかった人が優勝!」
「優勝するとどうなるんだ?」
「モンドの最強酒豪の称号を授与するよ!」
つまりは何もないということだ。賞金・賞品は一切皆無にも関わらず、ただ“酒が飲める”というだけで一階を埋め尽くすほどの人が集まっていたのだから、モンド人の酒好きは伊達ではない。何せモンド最大の湖に
「さて、お酒は全員に行き渡ったかな? それじゃあ……かんぱーい!」
ウェンティの乾杯の音頭と共に、とりわけ騒がしい夜が幕を開ける。
いっそ全員酒風呂にでも入ってしまえばいい、と旅人が死んだ目で眺めている隣で、パイモンが申し訳程度に用意されたごちそうに目を輝かせていた。
モンドでの任務は随分と久しぶりだった。神の心奪取の任を命じられてからは璃月に拘束されっぱなしで、加えてモンドは淑女の担当となっていたため迂闊に手を出すこともできなかった。
今回タルタリヤがモンドへ派遣されたのはその淑女の行いの後始末だ。魔神を呼び起こして璃月港を海に沈めようとした公子とは違い、淑女は西風騎士団に来訪を悟られることもなく颯爽と現れては神の心を奪って姿を消したらしい。国家間の摩擦を生まない方法ではあったが、素早くモンドから撤退しなければならない分下っ端への指示の一切を放棄しているとかで、彼女がかき乱した指揮系統を急遽統制し直す必要があった。
いくら執行官内で最年少でもその程度は子どものおつかいと似たようなものなので、到着したその日の夕方には早々に暇を持て余していた。かと言ってタルタリヤにこれという趣味があるわけではない。あるにはあるのだが、ファデュイの執行官が魚釣りをしようものならシードル湖の生態系を壊そうとしているに違いないと西風騎士団に睨まれることは間違いないし、モンドにいる宝盗団は璃月から歩いてくるまでに殴りつくしてしまったので面白みに欠ける。
なので、丁度事務補佐として連れてきていたマルタに投げてみることにした。何か暇つぶしになるものはないか、と。
「でしたら、旅人さんに会いに行かれてはどうでしょう。最近はモンドに滞在しているらしくて、今の時間なら鹿狩りか、あるいはエンジェルズシェアにいるとおっしゃっていました」
なるほどそれは名案だ。宝盗団百人と旅人一人ならば断然旅人の方に秤は傾く。あの子どもとはここ暫く剣を交えていなかったので、黄金屋からどれほど成長を遂げたのかは気になるところだ。
鹿狩りを訪問し旅人がいないことを確認すると、二人は下町の端に位置するバーに足を運んだ。
何か騒ぎでも起きているのだろうか。天使の分け前を掲げた扉の向こうからは、およそ天使とは思えない野太い声がまばらに発せられている。
どうしますか、とマルタの尋ねるような視線がタルタリヤに向けられたが、彼は迷わずその扉を引いた。そも今回は旅人を探しているのであり、酒を飲みに来たわけではない。たとえ乱闘騒ぎの中にうっかり入ってしまったのだとしても、それはそれでタルタリヤ好みの舞台だった。
チリン、と鈴の音が店内に響く。
同時に、周囲は水を打ったように静まり返り、無数の目がタルタリヤの顔面に突き刺さった。
「えっ何この状況?」
「こ、公子!? なんでお前、モンドにいるんだ!?」
「あっ、相棒〜! 探したよ!」
タルタリヤは男たちの視線など見えていないかのように振る舞うと、端の方でひたすらアップルサイダーを飲んでいた旅人とパイモンの元へ歩み寄った。タルタリヤに続いてマルタがひょっこり顔を出すと、旅人はやっぱり一緒なんだと妙に納得した表情を浮かべる。
「こんばんは、旅人さんにパイモンちゃん。こちらにいるとお聞きしたので、ご挨拶に伺いました」
「相棒。璃月のヴィシャップと稲妻のサムライ、どっちの方が殴り甲斐があった?」
「強いて言えばファデュイかな」
旅人からタルタリヤへの態度は乾き切っていたが、マルタの知る限りではこれが通常運転だった。
タルタリヤが旅人との再会を喜び、ぺらぺらとよく回る口を動かそうとしたその時、ずしんと彼の右肩に腕が乗せられる。
「よう兄ちゃん、酒は好きか?」
「は?」
真っ赤な顔をした男はすでに相当飲んでいるようで、半ばタルタリヤを支えに立っているような姿だった。一切の事情を知らないタルタリヤとマルタがわけも分からず目を見開くが、尋ねられたタルタリヤは反射的に答えてしまう。
「別に嫌いではないけど……」
「おうお前ら! この兄ちゃんも参加するってよ!」
「よっ、待ってましたあ!」
モンド人は酒が絡んだ時だけ頭がいかれてしまう、とオフの日は大抵酒浸りな部下が話していたことを思い出した。
彼らの中で人間は二つに分類される。酒が好きか、そうではないか。嫌いではないのだから好きだろう、と安直な発想により、見事タルタリヤも彼らの仲間としてカウントされてしまっていた。
「お、公子も飲み比べに参加するのか?」
「飲み比べ?」
「おう! ちょうど今、モンド中の酒好きを集めて飲み比べ対決をやってるんだ!」
すい、とパイモンが指をさした先では、おそらくタルタリヤが来るよりも前から飲んでいた人間が酒瓶を抱えて椅子の下に寝転がっていた。誰がどう見ても悪酔いだ。あれでは翌日に響くだろう。
先ほどタルタリヤの肩に腕を乗せた男は仲間たちのもとへ戻ると、寝ている男をごろごろと丸太のように転がして一席分を空けた。転がされた男は夢の中でも酒を飲んでいるのか、何やら幸せそうに寝言を口にしている。
「いや、悪いけど俺は遠慮するよ。これでも一応仕事中なんだ」
ほぼ終わったようなものだけど、とは言わないでおいた。面倒事に巻き込まれたくはないので。
「何だい兄ちゃん真面目だなあ! おらお前らも見習えよ!」
「今日はモンドじゃ休日だろうが! きっと今頃バルバドス様もどこかで酒を飲んでるさ!」
「あははは! それもそうかもね!」
「……………………」
そのバルバドスが現在同じテーブルを囲んでいると知れば、彼の酔いも一瞬で醒めてしまうだろうか。旅人は呆れつつも、やはり酔っ払いに巻き込まれたくはないので遠くから眺めておくだけに留めておいた。
するとそんな旅人の様子を嗅ぎ取ったのか、ウェンティが顔を上げて旅人とマルタに視線を向けると、何か閃いたように席を立ってこちらに歩いてくる。
「君、もしかしてじいさんが言ってた子じゃない?」
「え、えっと、“じいさん”……?」
ウェンティの目的は旅人でもタルタリヤでもなく、最後尾にいたマルタだった。
「あはは、やっぱりそうだね! あ、君もお酒飲む? モンドのお酒なら大体揃ってるし、璃月のもちょっとはあるんじゃないかな!」
へらりへらりと人畜無害な笑顔を浮かべているが、しっかり人の話を聞いていないのでやはりアルコールに浸かり切っていた。まだ誰も手を付けていないジョッキをマルタに渡し、問答無用で酒を注ぐ。押しの弱いマルタはされるがままの状態だった。
スネージナヤの人間は比較的酒に強い体質らしいが、マルタはその点でも不完全な存在だ。神の目による補助を受けられるのはあくまで生命維持のみなので、アルコール分解酵素も平均よりもうんと弱い。ほぼないも同然の体なので、たった一口飲んだだけで床に転がっている男と同じようになってしまう。だから君は絶対に酒を飲むな、とタルタリヤには度々釘を刺されていた。
いくら酔っぱらっているとはいえ、飲めない人間に無理に勧めるのはマナー違反だ。ウェンティ、と旅人が彼を諫めようとした時、旅人の視界をスッと腕が横切った。
タルタリヤがマルタの手から杯を奪い取る。手のひらから消えた冷たい感触を目で追うと、深海のような瞳とかち合った。なみなみと注がれた透明な液体が彼の端正な顔を挑発するように反射させている。
するとタルタリヤは酒に視線を落とし、一瞬だけ苦虫を嚙み潰したように眉を顰めると、一息に杯を煽った。
彼の白い喉が上下する。時間が止まったかのように静かになった店内で、酒が喉を通る音だけがやけに響いていた。ぷは、と口を離した時にはジョッキの中は一滴も残されておらず、タルタリヤは空の杯を当てつけのようにテーブルに叩きつけた。
「……飲み比べ、だっけ? それってスネージナヤの炎水もあったりする?」
誰もが言葉を失って、タルタリヤを凝視していた。
一拍。
「……兄ちゃん、いい飲みっぷりじゃねえか!」
「かっこいいねえ! 彼女の前で下手な姿見せらんねえってか!?」
「おーい、誰か炎水こっちに回してくれ! そろそろ蒲公英酒にも飽きてきちまったしよぉ!」
油を注ぎ込んだかのような熱狂ぶりだった。口元を拭ったタルタリヤはあれよあれよという間に男たちに囲われ、最も酒瓶が置かれたテーブルへと連行される。タルタリヤも完全にスイッチが入った状態で、まだファデュイとしての職務を終えていないことなどちっとも頭に残っていなかった。
「たっ旅人さん! 公子が……!」
「放っておいてもいいと思うよ」
「あいつなら上手くやるだろ」
「冷めてますね……」
公子よりもご飯だご飯。そう言った旅人の目には小麦色の髪なんて少しも視界に入っていなかった。
璃月から稲妻へと旅立って、彼のファデュイ嫌いは相当深まっている様子だった。
結論から言えば、タルタリヤは負けた。
武力勝負ならばいざ知れず、飲み慣れない酒を永遠に流し込められるほど彼の肝臓は鍛えられていなかった。他の男たちも同様だ。結局、モンドの最強酒豪の称号は言い出しっぺのウェンティが手にすることになっていた。
けれどタルタリヤの敗北は、ある意味ではここからが本番だった。
「それでそれで、マルタさんとはどうやって知り合ったの? あ、彼女のことはどう思ってる? 今どこまで進んだ?」
テーブルに突っ伏したタルタリヤの横から、ちょいちょいと悪魔のように質問を飛ばし続ける人物が一人。こちらもまた真っ赤な顔をして、ウェンティが恋バナウザ絡みモードに突入していた。タルタリヤもウェンティも共に脳みそが白旗を上げていて、理性なんてまともに働いていない。
「じいさんから聞いたけど、一緒に秘境に落とされたこともあるんだって? しかもすぐに追い出されたとか! 一体中で何してたんだか!」
「……誤解を与える表現をしないでくれる? 別に何もなかったって」
何もなかったのは事実だ。ただちょっと、普段口から出ないようなことが意図せず出てしまっただけで。それよりも、そのじいさんって一体誰のことだ。その出来事を知っているのは当事者たちと鍾離しかいないはずなので、少し考えれば彼だと分かるのだが何分酔っていて思考が働かなかった。
「いい子じゃない、マルタさん。じいさんが珍しく意気揚々として話してるから、どんな子かと思ってちょっと気になってたんだけど」
酔いつぶれてしまった男たちに酒を配って歩いているマルタを見ながらウェンティが呟く。
「……………………」
「ああ、安心して。確かにじいさんは彼女のこと気に入ってるけど、別に異性としてじゃないから。そういうの何て言うんだっけ……推し?」
確か、祈祷牧師に向かってそう叫んでいた人がいた気がする。風神であるせいかこういった風の噂には詳しいのだ。
タルタリヤは目だけを動かして話題の彼女を追うと、その表情を曇らせた。
「…………かわいいんだと、思うよ」
聞いてもいないのにぽろっとこぼしてしまったのは、完全に酒のせいだった。
「人の気持ちなんて全然わかっちゃいないし、そのくせ善人ぶっててたまにイラつくけどさ……そうじゃない彼女って、ちょっと想像できないし」
タルタリヤは戦いが好きだ。強い人間を愛している。
その昔、倫理を深淵へ落とし、忠誠を女皇に捧げ、親愛を家族の元へ置いて来たタルタリヤの体には、もう戦闘への欲求しか残っていない。その欲求に流されるままテイワットのいたる場所を血に染めて泥を被り、高笑いをしながら屍を踏みつけてきた。戦場で共に盃を交わせない相手なんて興味もない。ましてや愛情なんてものは何重にも包んで実家に保管しているので、これ以上絞っても一滴も出てこないと思い込んでいたのに。
ある日突然、ぽんと手のひらに命が乗せられた。
弱くて、不格好で、情けないくらい生きるのが下手で、それでいてこの世の何よりも美しい生き物だと思った。
その生き物は常にタルタリヤの隣にいながらも、全く真逆の場所に立っていた。血を見れば胸を痛め、萌ゆる新芽を見つけては安堵し、屍の中からでも生きた痕跡を見つけ出そうとする。ファデュイは人殺しの集団なんだと何度教えても、分かってはいますと不器用な笑顔を浮かべるだけで。タルタリヤの落とした倫理観が人の形を取って手元に戻ってきたような感覚だった。
それがどうしてこんなにも愛おしく思えるのか、タルタリヤ自身にも分からなかった。
「……それ、本人には言ってあげないのかい?」
「言わないよ。彼女、そう言われるのが嫌いらしいから」
かわいい、だとかきれい、だとか。世間一般の女性が言われて喜ぶようなことを、マルタは言葉にはせずとも表情で忌避していた。
人から好ましく思われるように設計されているのだと、再確認してしまうから。
だからタルタリヤはマルタの容姿について一切触れないし、褒めることなんてしない。しちゃいけないと理解している。
でも思うだけなら別だ。美しい生き物頂上決戦があれば、間違いなく彼女を推薦していたのに。
「そうかなぁ。それ、相手とか言い方とか、気持ちの有無によっていくらでも変わると思うけど」
「……どういう意味?」
「あっいけないいけない。余計な口出しするなってじいさんに言われてたんだった」
ウェンティは三文役者並みの演技で会話を切ると、ジョッキに残っていた酒を一息に飲み干した。
なんだ、それは。タルタリヤは意味の分からない吟遊詩人の言動に首を傾げる気力もなかった。これだから酔っ払いは面倒なんだ。そう思うと、途端に眠気が襲ってきた。抵抗もむなしく瞼が落ちる。視界が真っ暗になると、遠くから軽い足音が聞こえてきた。
「あ、マルタさんこっちこっち。お兄さんもう寝ちゃったみたい」
「そうですか……お水をと思ったんですけど、間に合わなかったみたいですね」
酔いがひどい者から順番に配っていたら、タルタリヤは最後になってしまった。コト、と彼が突っ伏す隣にグラスを置いてみても起きる様子はない。眠りの浅い彼ならこれくらいの小さな音でも意識を覚醒させるには十分なのに、それでも起きないのなら相当酔いが回っているのだろう。もう少し順番を早めるべきだった、とマルタは反省した。
「そういえばマルタさんって、お兄さんのことどう思ってるの?」
「……えっ?」
まさかそんなことを聞かれるとは思わず、マルタが瞠目する。ウェンティは面白おかしくけらけらと笑い、だって、とテーブルに肘をついた。
「旅人もじいさんも二人はいつも一緒にいるって言ってたからさ。仲良いんだなあと思って」
「……嘘ではないんですが、少々語弊があるような…………」
ただの上司と部下。一緒にいることが多いのは単にアライアという問題を共有しているからだ。それさえなければマルタの立場は有象無象の中の一部に過ぎない。
「でも否定はしないんだ?」
「悪くはないと思っていますから。……彼の方はわかりませんが」
「で、具体的にはどう思ってるの?」
「……やっぱり最終的にそこに行き着くんですね…………」
ウェンティが期待に満ちた目で頷く。神が統治の役目を下りたのならばあとは傍観しか残されていない。気が遠くなるような寿命を蒲公英酒の味の変化と共にするだけというのも寂しい話だ。ならば表向きは天に還った旧友よろしく、一吟遊詩人として若者のすったもんだを眺めて見るのもまた一興。演劇を見るようなものだ。
マルタが言葉を選びながら口を開くと、グラスの中の氷がカランと揺れる。
「……人として、好ましくは思っています。恩人ですから」
お、とウェンティの眉が上がる。
「じゃあ異性としては? 恋人にするならあり? なし?」
「えっと、それはノーコメントで……」
いくら相手が寝ているとはいえ、目の前で勝手に批評するのは躊躇われた。ありでもなしでも、相手に失礼なような気がしてならない。
ウェンティは途端につまらなさそうな顔をすると、な〜んだとまた酒瓶へ手を伸ばした。
「あっでも」
マルタが口元に手を当てて言う。
「叶う事なら、ずっとお傍にいたいとは思っています」
もちろん、部下として。戦闘狂の彼についていくのは大変だが、実に働き甲斐がある。この神の目が彼の役に立てるのならば悪くはない。
そう仮面の下で清々しく述べたマルタとは対照的に、ウェンティの手が止まった。
「それって、プロポ……」
彼が言葉を言い切る前に、風もないのにグラスが倒れた。いや、風があったとしてもよほど強くない限り水の入ったグラスが倒れることはないだろう。濡れたテーブルクロスを見て大変とマルタが立ち上がった。
「し、詩人さん! 大丈夫ですか!?」
「あはは、ボクは別に濡れてないから大丈夫だよ。それより、このグラスを持って行ってもらってもいいかな? ボクはここを拭いておくからさ」
ウェンティが笑顔でそう告げると、マルタは慣れた手つきで布巾を手渡し、グラスを回収してカウンターへと消えていった。
だから口を出すなと言ったんだ。ウェンティの脳内でそう鍾離が腕を組む姿が再生された。
視線を下に移動させると、淡く光る青色の宝石がひっそりと存在を主張していた。丁度話の中心にいた人物の腰のあたりで。一体いつから聞いていたんだか。
「今が夜で良かったね、お兄さん?」
これで朝日に照らされようものなら、耳まで真っ赤なのが一目瞭然だ。
当然、タルタリヤからの返事はなかった。