7.結


『まきちゃん……』

目を開けると、カーテンから薄く光が差し込んでいた。
目の前に彼女がいたような気がしたのは一瞬で、オレの眼に映るのは見慣れた天井だった。

名残惜しく思いながらカーテンを開けると、清々しい晴れた青空が広がっている。

あれから数カ月。あの日のコンペは、オレがいないところで大した障害もなく大成功を収めていた。スタッフの優秀さを喜ぶべきか、自分の存在意義とは何なのかと悲しむべきか。
最低なボンクラヤローは、詳しくは知らないが悪行が父親にバレて大目玉を食らったそうだ。ざまあみろ。


「裕介、起きてるか?」

ノックもそこそこに顔を覗かせた兄貴が、オレを見てほっと表情を緩めた。
日本に支店を置くという前から出ていた話が、あのコンペの結果実現することになり、日本に異動になるオレを含めた数人の送迎会が、昨夜行われたのである。

「大丈夫みたいだな」

「ハ、そんなヤワじゃねェショ」

昨日はそれでなくても陽気な連中が送迎会にかこつけて大いに騒ぎ、それにつき合った弟を兄は心配していたらしい。
そもそも、帰国前日に送迎会とかタフすぎんだろ――。

「裕介、今回の件はお前の実力だからな」

「ん、ああ、それこの前も聞いたぜ」

「オレは仕事で贔屓したりしない」

「わかってる。けど、ありがとな兄貴」

確かに仕事に対して兄は厳しい。ただ贔屓しないとは言いながら、全く気にかけていなかったかと言えば、きっとNoだ。
それ以上に自分の力で掴み取ったとも、自負しているが。

「あ、そうだ」

部屋を出ようとした兄が、くるりとオレへ向き直りにやりと笑った。

「彼女と一緒の写真、ちゃんと送れよ」

「…気が向いたらな」

「泣かせるなよ?」

待っててくれ、と告げたときの、蒼の泣き顔が頭をよぎる。あの日彼女はくしゃりと表情を歪ませ、涙と一緒にこくりと頷いた。

「嬉し泣き以外は」

「お、言ってくれるじゃないか」

がらんとした自室を見回して少しの寂しさを感じつつ、柄にもなくこれから始まる生活に夢を見ている自分に、どうしようもなく笑いが漏れた。
ドリーム、だよなァ――。

門出を祝うような青空の下、オレはスマホの画面に彼女の番号を表示させ、通話ボタンを押した。

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