新大陸説明会


新大陸で活動するハンター募集。
それはクエスト帰りの掲示板で見つけたギルドの広告だった。

「新大陸か…」

「蒼の旦那さん、興味あるニャ?」

「なくはないけど…」

「ニャ?」

「知らないとこで知らない人ばかりはちょっと」

ニャ、とアウルーが首をかしげる。
今まで人1人オトモ1匹でやってきて、お世辞にも知り合いが多いとは言えない自分を振り返り、今更か、と思い直す。

「話だけでも聞きに行こうか」

「ニャ!」

嬉しいのか小さな手を突き上げてぴょんぴょん跳ねるアウルー。かわいい。


募集広告を見た3日後、とある町の講堂に、多くのハンターが集まっていた。
誰も彼もギルドからの説明を聞きに来たのは明白だ。広告が出て本日までたった3日しかなかったのに、よくもまあこんなに集まったものだ。

「皆、よく集まってくれた」

老齢の男が壇上で声をあげた。穏やかな顔つきだが、目元は鋭い。元ハンターだろうか。

「新大陸古龍調査団、という名を聞いている者も多いだろうが、近々第5期調査団が編成されることとなった」

ハンターたちが小さく騒めく。やっぱり、と言う者もいれば、だからなんだ、と言う者もいる。

「今回集まってもらったのは、その5期団の先遣隊を募るためである」

5期団はハンターを中心として構成される大規模なものらしいが、先遣隊とはその名の通り、一足先に拠点のウステラへ赴く部隊とのことだ。
なんとなく毒味役みたいだな、と思う。
そこまで期待もされないだろうし、自分に合っているかもしれない。

「とはいえ、誰でも、というわけにはいかん。そこで、まずアオウシラ2頭の狩猟を今回の試験とする」

期限は2日。
2日もあれば狩猟には充分だが、ここにいる全ハンターが狙うとなれば早い者勝ちになりそうだ。
そう思ったが、やる気のあるハンターはあまり見受けられない。誰もが先遣隊より、主力の本隊を狙っているのだろうか。

「ニャニャ…!? 」

突然アウルーが驚いた声を上げて飛び上がる。何事かと隣を見ると、アウルーの尻尾を男が掴んでいる。

「こいつ、おめェの?」

「はあ、そうですけど、なにかしました?」

「いや…、」

そう言いながら、男が手を離す気配は見えない。彼の手元をよく見ると、掴む、というよりは撫でている。もしかしてこの人、アウルー好きなのでは。

「こいつ、すげェきれいな毛並みな」

「ニャ?」

撫でられているとやっとわかったアウルーが振り向き、首を傾げた。

「ぐ…!! 」

男が顔を赤くしてのけぞる。好きなんだな、アウルー。
ま、うちの子はかわいい。細く艶のあるふわふわした毛並みに、ぺたりとたれた耳。目つきは悪いし声はだみ声だから、もしかすると贔屓目かもしれないけど。

「おい荒北何を…」

と、ひょいと顔を覗かせたカチューシャの男が目を剥いて、口をパクパクさせた。

「お、お前!こんなところで女子を誘うなど、おこがましい!」

「はァ!? なんもしてねェっつーの!! なに見たらそーなンだふざけんな!」

「何をも何も、女子と話していたではないか!」

「違ェっつってンだよ、頭湧いてンのか!」

目の前で喧嘩が始まってしまった。説明を聞き終え帰ろうとするハンターたちが、遠巻きに呆れた様子で眺めていく。
放って帰っていいだろうか。

「悪いね、いつもこうなんだ」

背後から声がかかり振り向くと、また別の男が立っていた。悪いと言う割にはあまり悪いと思ってないような微笑みを浮かべている。

「…いつも」

呆れと驚きが混ざってぽつりと呟くと、その男が「うさきち…」とこちらも呟いた。

「うさきち…?」

「ああ、いや、オレが世話してるうさぎに君が似てたからつい」

「うさぎ、ですか」

「隼人!お前まで…!! 」

目ざとくこちらの様子を察知したカチューシャの彼が割って入る。

「いや、オレはただ、うさぎに似てるなって思っただけで、」

「うさぎのように愛らしいという意味だろう!立派に口説いているではないか!! 」

そんな話ではなかった気がするが、この男の中ではそういうことになってしまっているらしい。

「うさぎィ?どこが」

アウルー好きが顔を覗き込み、「あー」となんとなく納得した声を出した。

「目、ですか?よく言われます」

本来なら気にもならない毛細血管が、白目が狭いせいで赤目に見えるらしい。この容姿で生きてきた自分ではなんとも思わないが、小動物の雰囲気も相まってうさぎのようだと散々言われてきた。
知り合いにはうさぎ、で通るほどだ。

「ちっせェのもあるンじゃね?」

「小さくありません。平均です」

思ったよりでかいアウルー好きを見上げて否定する。平均も平均中の中である。

「そうだぞ荒北!平均は小さくない!普通なのだ!! 」

なんだかやたらと熱の入るカチューシャに、もしかしたらこの人は身長にコンプレックスでもあるのだろうかと思う。そういう目で見てみると、アウルー好きやうさきち男に比べるとほんの少しだけ低い。
とはいえそこまで気にするほどではないのだが、1センチだろうが2センチだろうが、本人が気になるのならコンプレックスになるのだろう。

「へいへい」

「なんだその適当な返事は!」

「まあまあ、尽八も靖友も、その辺にしたらどうだ?」

いつもこんな感じなのか、と冷静に3人を観察する。
ハンターと一口に言っても色々で、自分のようにオトモと2人だけで細々と生きている者もいれば、最近主流となっているサークルを組み家族のように生きる者もいる。この人たちは後者だろう。
中にはオトモも連れない孤高のハンターもいるらしいが、これは滅多にお目にかからない。

「このふわっとした髪質もうさぎっぽく見えンのかもな」

「あーらーきーたー!!! 」

「ははは、困ったな」

アウルー好きが人の髪に指を滑らせ、カチューシャが声を張り上げ、うさきち男が困ってもいない笑いを浮かべるのをなんとも不思議な気分で見つめるのだった。

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