0.転機


『まきちゃん……』

目を開けると、カーテンから薄く光が差し込んでいた。
学生時代に返った気がしたのは一瞬で、オレの眼に映るのは見慣れた天井だった。

なんで今更あの頃の夢なんか…。
それは明日から数日間、日本に帰国するせいなのか、ただ疲れているだけなのか。

沈んだ気分でカーテンを開けると、嫌味なほど晴れた青空が広がっている。

高校生活。留学前の最後に登校したあの日。彼女は泣きそうな顔でオレの名を呼んだ。なんであの時何も言えなかったのかと、後悔するのは自分が少しは大人になったからだろう。
まだガキだったオレは、あいつの将来を奪ってしまうかもしれない重圧にも、いつか訪れるかもしれない別れの恐怖にも、耐えられるはずがなかった。
まあ、後悔しながら連絡の1本もできないオレは、今もあの頃と何も変わっていないんだろうが――。

なんにせよ、いまだに彼女の存在は鮮明で、こんなにも胸を締めつけるのかと、情けない想いにただため息を吐いた。

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