昔から「見た目は現実主義、中身は空想家」とよく言われていた。容姿は真面目そのもので、表情も変わりにくくて、一見すると風紀委員長みたいだと評されるのだが、その割には物想いにふけっていることが多いからだろう。
別にぼんやりとしているからと言って、白馬の王子様やらユニコーンやらを考えているわけではない。だからそう言われるのに納得はいかないが、実際周りからそう思われるような言動は確かにしているので、ハッキリと否定することはできないのが難しいところだ。

「ねぇ、話聞いてる?」
「え……? あ、うん」

 ふと声がかかり顔を上げると、夕食を作っていた母が不機嫌そうな顔で私を見つめていた。40過ぎのはずなのに、今でも未婚者に間違われるほど綺麗な容姿の母は、夜なのにばっちりメイクだ。

「嘘。ちゃんと聞いてなかったでしょ?」
「え、き、聞いてたよ」
「じゃあ、なんの話か言ってみて」

母の言葉にうっと詰まってしまう。必死に記憶をかき集めてみるが、答えらしきものはなさそうだ。押し黙った私に、母が呆れたようにため息をついた。そのしぐさがちょっと女優みたいだ。

「やっぱり。まあ、いつものことだから気にしてないわよ」
「……す、すみません」
「お母さんとお父さんは、明後日の夕方まで帰って来ないから。春輔は明日お昼に帰ってくるみたいだけど、それまで留守番お願いね」
「はーい」

そう返事をして、また机に伏して考えの海に沈みこむ。
大学生の兄が一人いるが、今日はサークルの人達と一緒に外泊しているし、両親は明後日までいないし……これは、もう一人を満喫するしかないじゃないか。こんな幸運に恵まれるなんて、そうそうないことだ。
一人でほくそ笑んでいると、母はそれに気付かず、どんどん話し続けている。

「ちゃんと戸締りをして、宿題をやること。テレビは9時までだからね。お母さんたちがいなくても、いつも通り時間は守ってね。わかった?」
「はーい」

また指摘されないうちに、私は元気よく返事をしておいた。
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