「…っ」
 彼が息を呑む音が聞こえる。動揺していることが手に取るように分かった。
 遡ること数分前、一緒にゲームをプレイしていたところを何の前触れもなく急に押し倒されているのだから、当然の反応だろう。放り出されたゲームからは、自機が撃墜された音が聞こえた。
 普段は友人を揶揄うその口が無防備に呆けている様に、自分が力任せに押し倒したものだから乱れてしまったその衣服に、彼の髪がソファの上に広がり、自分に良いようにされている姿は、愛おしく思うと同時に情欲を掻き立てられる。
 
 「良いんですか? 逃げなくて…」
 彼が力を込めて突き放せば、容易く逃げることは叶うだろうに、その問いに答える余裕すらないらしい。普段の余裕ぶった彼から想像もつかない姿に、加虐心がそそられた。
 首筋に顔を埋め、痕を残すように口付ければ、大きく体を跳ねさせてか細い抵抗の声が聞こえる。
 「っ…や、め」
 気を抜いていたからか、力無く胸を押す片手を掴みあげ、頭上に押さえつければ、これから何をされるのか分からないといった様子で、けれどこの異常な事態に顔を青くしてこちらを見ていた。
 
 「なーんて…冗談ですよ、本当に不意打ちに弱いんですね」
 押さえつけていた手をパッと離し、彼を自由にするべく拘束を解く。
 捕まえた獲物を手放すことを内心で惜しみながらも、揶揄っただけだと述べれば、見るからに安堵したように大きく息を吐いた。
 「そういうのは心臓に悪いからダメだよ、名前ちゃん」
 彼はそう言って上体を起こし、困ったように笑いながら落ちたゲームを拾い上げるのだった。


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