海風が吹き抜けるコスタ・デル・ソルの街は、昼間の賑やかさを終え、穏やかな夜の静けさに包まれていた。みみが借りている小さなアパートの窓から、波音が微かに聞こえる。その静けさを破ったのは、玄関の扉をノックする音だった。
みみは机に置いていた書類を片付け、少し疲れた顔で扉を開けた。そして目に映ったのは、見間違えるはずもない人物。

「……ルー?」

そこに立っていたのは、数年間会えなかったルーファウスだった。いつもと変わらない、いや、少し痩せたようにも見えるが、凛とした佇まいと強い青い瞳が、彼の存在感をより際立たせていた。

「久しぶりだな、みみ。」

低く穏やかな声が夜の空気に溶け込む。
みみは驚きのあまり何も言えず、ただ彼を見つめていた。彼がここにいるという事実が、どうしても現実のように思えなかった。

「入れてくれるか?」

ルーファウスは微笑みながら一歩前に進み、みみの手にそっと触れた。その手の温もりが、本当に彼が目の前にいることを証明する。

「もちろん!」

みみは急いで彼を部屋の中に招き入れる。


***


狭いリビングに二人だけが立ち尽くした。言葉が見つからず、みみが何かを言おうとすると、ルーファウスが先に口を開いた。

「軟禁が解けた。それで真っ先にお前に会いに来た。」

その言葉に、みみの目が潤んだ。

「私のこと、忘れてなかったの?」

自嘲気味に笑いながらそう問いかける彼女に、ルーファウスは一歩近づき、真剣な瞳で彼女を見つめた。

「忘れるはずがない。お前だけが、ずっと俺を支えてくれたんだ。」

その言葉を聞いた瞬間、みみの感情が一気に溢れ出した。数年分の想いが押し寄せる。

「ルー……」

名前を呼ぶ声が震えた。
彼はそんな彼女を抱きしめる。しっかりと、もう二度と離さないと言わんばかりに。


***


部屋の明かりを落とし、リビングから寝室へ移動する頃には、二人の間に必要な言葉はほとんどなくなっていた。
薄明かりの中、みみはベッドサイドに座り、少し恥ずかしそうに視線を逸らしていた。ルーファウスはその隣に腰掛け、彼女の髪を優しく撫でた。

「恥ずかしいのか?」

囁くような声に、みみは頷く。

「だって……こんなの、久しぶりすぎて。」

彼の笑みが、優しくもどこか悪戯めいているように見えた。

「なら、ゆっくり思い出せばいい。」

そう言って、彼は彼女の頬に手を添え、ゆっくりと唇を重ねた。そのキスは深く、甘く、彼女の心を溶かしていくようだった。
次第に彼の手が彼女の肩を撫で、背中を抱き寄せる。触れるたびに、ルーファウスの愛情がまるで波のように押し寄せてきた。

「みみ、俺の目を見ろ。」

彼の指がそっと彼女の顎を持ち上げる。みみは彼の青い瞳を見つめ、言葉にならない感情が溢れた。

「お前は俺のすべてだ。ずっと、そうだった。」

その真剣な声に、みみは胸が詰まった。自然と涙が頬を伝う。

「ルー……私も……。」

声にならない言葉の代わりに、みみは彼の首に腕を回した。そして、彼の唇を再び求めた。
彼は優しく彼女を押し倒し、触れるたびに彼女の名前を呼んだ。彼の手が彼女の肌を撫でるたびに、みみの胸には甘い痛みが広がった。その一夜は、互いを確かめ合うような優しい時間が流れた。


***


夜が明け、みみは目覚めると隣にいるルーファウスの寝顔を見つめた。これが現実だと改めて実感し、彼女は静かに微笑んだ。彼女の手を握る彼の指は、どこまでも温かく、安心感を与えてくれた。

その日、コスタの海辺では、二人だけの時間がゆっくりと流れていった。