夜の静寂がスイートルームを包む中、ルーファウスとみみはソファに並んで座っていた。部屋の明かりは薄暗く、隣で揺れるワイングラスの赤い液体が、二人の間にかすかな温かみを漂わせていた。

みみはそっとグラスを置き、ルーファウスの横顔を見つめる。その整った顔立ちから放たれる声――その低く甘いトーンが、みみにとってたまらなく魅力的だった。

けれど、ルーファウスもその事実を十分に理解している。彼はときおり、みみがどれだけ自分の声に弱いのかを試すかのように、わざと耳元で言葉を囁いてくるのだ。

「……ねえ、ルー。」みみはためらいがちに話しかける。
「なんだ?」彼の低く響く声が、静かな部屋に溶け込むように伝わってくる。

みみの心臓がドキリと跳ねる。あまりにも自然で、けれど確実に甘い響き。彼の声が、自分の耳元に近づくたびに、自分がどれだけ震えてしまうのか、もうルーファウスには隠せない。

「今日の会議で少し疲れたんじゃないか?」

突然、ルーファウスがそう言いながら、みみの頬に手を伸ばした。その指先の冷たさが、みみの熱をさらに感じさせる。
「そ、そんなことないよ。」

みみは慌てて否定するが、その震えた声が彼の興味を引くには十分だった。
ルーファウスの目がふっと楽しげに細まる。そして、彼の顔がすっと近づく。

「……じゃあ、少し話でもしようか。君の大好きな声で。」

その瞬間、ルーファウスの息がみみの耳をかすめた。柔らかい唇が、耳たぶにかすかに触れたかと思うと――

「みみ。」

深く甘い声で名前を囁かれる。

「ひゃっ……!」

みみの体がびくりと跳ねる。肩を震わせながら、小さく「やめてよ」と言うが、ルーファウスの手が背中に回り、優しく支える。

「やめる? 本当に?」

耳元での甘い問いかけが、みみの理性を溶かすように降り注ぐ。

「や、やめて……」

震える声が出るが、ルーファウスは笑みを浮かべている。

「君のこの反応が見たくて仕方ないんだ。」

彼の低い声に、ほんの少し意地悪な響きが混じる。そして、再び耳元に寄せられる唇。

「こうされるのが好みか?」
「んっ……!」

みみは無意識に体を丸める。耳に触れる吐息があまりにも直接的で、逃げ場がない。

「それに……耳元で君の名前を呼ぶと、どうなる?」
「や、やめてってば……!」

声を震わせるみみの肩を、ルーファウスは優しく引き寄せた。

「ふふ……みみ、本当にやめてほしいのか?」

彼の囁きはますます甘く、ますます意地悪になっていく。
みみは、もう言葉を返すことさえできない。ただ肩を震わせ、ルーファウスの腕の中で小さくなるだけだった。
けれどその姿を見て、ルーファウスの表情がふと柔らかくなる。いたずら心はどこかへ消え、彼はそっとみみの髪を撫でた。

「……すまない。少し意地悪が過ぎたか?」

彼の声が、今度は優しく、包み込むような響きに変わる。
みみは顔を赤らめたまま、小さく首を横に振る。

「……ルーが優しくしてくれるから、いいの。」

その言葉にルーファウスは微笑み、みみをそっと抱き寄せた。耳元での意地悪な囁きも、彼なりの愛情表現だとわかっているからこそ、みみの心はすでに彼に溶かされていたのだった。